「話し合っていたのに、方針未定のまま」実家の相続で8割が知らない

「話し合っていたのに、方針未定のまま」実家の相続で8割が知らない"ダブル義務化"と固定資産税6倍のワナ

相続不動産

 柴崎 孝行

筆者 柴崎 孝行

不動産キャリア22年

代表の柴崎です、ご覧いただきありがとうございます。

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相続不動産

「話し合っていたのに、方針未定のまま」
実家の相続で8割が知らない、ダブル義務化と固定資産税6倍のワナ

相続前に家族で十分に話し合っていたはずなのに、42.8%が実家を空き家のまま放置——GMOの最新調査が示したのは「話し合いだけでは決まらない」という現実だった。2026年4月に始まった住所変更登記の義務化で、相続登記と合わせ過料は最大15万円に。固定資産税が最大6倍になるリスクを知らない人は約8割にのぼる。

2026年9月25日時点の情報|読了目安 約13分

「話し合っていたはずなのに」42.8%が方針未定のまま

相続前の対策は、実は半分にすぎない

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月時点の全国の空き家総数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新した。さらに国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(2025年8月公表)では、空き家の取得経緯のうち57.9%が「相続」によるものだったと報告されている。新築・建て替え(17.1%)や既存住宅購入(14.2%)を大きく上回り、空き家問題の主因が相続にあることを裏付けるデータだ。

不動産・住宅情報を扱うGMO TECH株式会社が2026年7月17日〜22日に実施した調査(相続した戸建て住宅=実家を現在空き家として所有する全国の男女1,019人が対象)によると、実家が空き家のままになっている理由として最も多かったのは「今後の方針が決まっていない」で38.6%だった。

さらに調査を掘り下げると、意外な事実が見えてくる。相続前に家族で「十分に話し合っていた」と回答した人は14.2%にとどまるが、この事前に話し合っていたグループのうち、実に42.8%が今なお方針未定のまま実家を放置していると答えているのだ。「話し合えば決まる」というのは思い込みで、話し合いの中身が伴わなければ、結局は保留状態に陥ってしまう。

この結果が示唆するのは、「相続対策」という言葉が指す範囲の狭さだ。多くの家庭で行われる相続前の話し合いは、遺言の有無や大まかな取り分の確認にとどまりがちで、「その不動産を実際にどう扱うか」という運用面まで踏み込めていないケースが少なくない。誰かが住むのか、賃貸に出すのか、売却するのか——この一点が決まらないだけで、名義変更や管理の手続きはすべて足踏み状態になる。

加えて見逃せないのが、相続そのものが「突然」訪れるケースの多さだ。事前の話し合いができていた世帯が14.2%にとどまるということは、残り85.8%は十分な準備がないまま相続を迎えている計算になる。話し合いの機会自体を持てなかった世帯では、方針未定の比率がさらに高くなることは想像に難くない。

自治体から「何らかの連絡や通知を受けた」と答えた人が60.5%にのぼる点も見逃せない。これは固定資産税の納税通知だけでなく、空き家の管理不全に関する注意喚起や、周辺住民からの苦情を受けた確認連絡なども含まれると見られる。つまり、多くの世帯にとって「放置している」という自覚がすでにあり、それでも動けていないというのが実態に近い。方針未定の根本原因は「気づいていない」ことよりも、「決められない・動けない」ことにあると言えそうだ。

全国の空き家総数

900万戸

空き家率13.8%で過去最高(総務省)

空き家の取得経緯

57.9%

「相続」によるものが最多(国交省)

事前に話し合っていても

42.8%

話し合い済みの世帯でも方針が未定のまま

自治体からの連絡経験

60.5%

何らかの連絡・通知を受けたことがある(GMO調査)

まとめ:実家の相続では「家族で話し合った」こと自体がゴールではない。誰が管理し、いつまでに何を決めるかという実行計画まで落とし込まなければ、空き家は動かないまま時間だけが過ぎていく。

なぜ「話し合い」だけでは終わらないのか

合意と実行のあいだにある3つの壁

なぜ「話し合った」のに「決まらない」のか。専門家が指摘するのは、家族間の合意と法的・実務的な手続きのあいだにある3つのギャップだ。第一に、話し合いの多くは「誰かが管理しよう」という漠然とした合意にとどまり、法的な名義(遺産分割協議書に基づく相続登記)まで落とし込まれていないケース。第二に、管理費・固定資産税・修繕費といった継続コストを誰が負担するかが曖昧なまま放置されるケース。第三に、相続人が複数の都道府県に分散して住んでいる場合、全員が顔を合わせる機会自体が乏しく、次回集まったときに決めようが繰り返されるケースである。

これに加えて、感情的な要因も見過ごせない。実家は思い出の詰まった場所であることが多く、「売る」「手放す」という結論を出すこと自体に心理的な抵抗を感じる相続人も少なくない。特に、親が亡くなってから日が浅い時期に方針を決めようとすると、気持ちの整理がつかないまま話し合いが平行線をたどることもある。こうした場合は、いったん法的な期限(登記の期限など)だけを先に押さえ、活用方針の結論は時間をかけて出す、という段階的な進め方も現実的な選択肢になる。

壁起きていること対処の方向性
①名義が未確定話し合いはしたが遺産分割協議書を作っていない相続人全員の実印・印鑑証明を集め協議書を作成
②費用負担が曖昧固定資産税・管理費の負担者が決まらない誰がいつまでにいくら負担するか書面化
③集まる機会が乏しい相続人が遠方に分散し話し合いが進まないオンライン会議や専門家を交えた進行

特に重要なのが、相続登記の前提となる「法定相続情報一覧図」の取得だ。法務局に戸籍一式を提出して作成してもらえば、以降の手続きで戸籍の束を何度も提出する必要がなくなり、相続人全員の負担が大きく減る。銀行口座の解約や不動産の登記申請など、複数の手続きで同じ戸籍謄本の束を使い回せるため、相続人が多い場合や手続きが複数にまたがる場合ほど効果が大きい。

さらに2024年4月からは「相続人申告登記」という簡易な制度も新設された。遺産分割協議がまとまらず正式な相続登記に時間がかかりそうな場合でも、自分が相続人であることを法務局に申し出るだけで、ひとまず相続登記の義務を履行したものとみなされる。協議自体が長引きそうなときの時間稼ぎとしても活用できる制度で、費用も比較的抑えられる点がメリットだ。

また、話し合いの入り口を作る工夫も有効だ。いきなり「実家をどうするか」を議題にすると意見がまとまりにくいため、まずは「固定資産税の納税通知書を誰が受け取っているか」「今の管理は誰が担っているか」といった現状確認から始め、負担の偏りを可視化するところから議論を進める進め方が実務では推奨されている。現状の負担が見える化されると、方針についての合意形成も進みやすくなる。

2026年4月スタート、住所変更登記義務化の基本

相続登記だけでは終わらない、もうひとつの義務

2024年4月1日に相続登記の申請義務化がスタートしたことは広く知られるようになってきたが、2026年4月1日――つまり本稿執筆時点からわずか半年ほど前――には、もうひとつの義務化が始まっている。「住所等変更登記」の義務化だ。

これは相続に限らず、不動産の所有者が引っ越しや氏名変更をした場合に、登記簿上の住所・氏名を変更する登記を申請する義務を課すものである。変更があった日から2年以内に登記をしないと、正当な理由がない限り5万円以下の過料の対象となる。相続した実家をそのまま保有し続けた状態で、相続人自身が転居した場合に特に該当しやすい規定だ。

この制度が導入された背景には、所有者不明土地問題がある。登記簿上の住所が古いままだと、自治体や隣接地の所有者が連絡を取ろうとしても本人にたどり着けず、空き家対策や公共事業の用地取得が進まない原因になっていた。相続で取得した不動産は特に、相続人が実家から離れた場所に住んでいることが多く、登記簿上の住所と現住所がずれやすい典型例とされている。

進学や就職、結婚などライフイベントのたびに住所は変わるものだが、その都度すべての不動産の登記簿を更新している人はごく少数だろう。特に、相続した実家のように「自分が今住んでいない不動産」の登記情報は、優先順位が下がりやすく、変更を忘れたまま何年も経過してしまうことが多い。今回の義務化は、こうした忘れられがちな登記に法的な期限を設けた点に大きな意味がある。

なお、法人の場合は商業登記と連動して住所変更が自動的に反映される仕組みが検討されているが、個人所有の不動産についてはこうした自動連携がなく、所有者自身が変更登記を申請しない限り登記簿の情報は更新されない。「そのうち登記所から連絡が来るだろう」という受け身の姿勢では、期限を過ぎてしまう可能性がある点に注意したい。

住所等変更登記の施行日

2026年4月1日

相続登記の義務化から2年後にスタート

申請期限

変更から2年以内

正当な理由なく怠ると過料の対象

過料

5万円以下

相続登記の過料(10万円以下)とは別枠

相続登記と合わせダブル義務化で過料最大15万円

2つの期限、2つの過料

相続登記の義務化と住所等変更登記の義務化は、それぞれ独立した制度であり、両方に該当すれば過料は合算されうる。相続した不動産を相続登記しないまま自分自身が転居していた、というのは決して珍しいケースではなく、気づけば両方の期限を超えていたという事態が起こり得る。

項目施行日申請期限過料経過措置の期限
相続登記の義務化2024年4月1日相続を知った日から3年以内10万円以下2027年3月31日
住所等変更登記の義務化2026年4月1日変更から2年以内5万円以下2028年3月31日

両方に該当した場合、過料の上限を単純に合算すると最大15万円に達する計算になる。特に注意したいのは、相続登記の経過措置期限が2027年3月31日、つまり本稿執筆時点からおよそ1年半後に迫っている点だ。「義務化前に相続した実家」も対象に含まれるため、うちは前から相続していたから関係ないとは言えない。

まとめ:相続した不動産を持ったまま引っ越した経験がある人は、相続登記と住所変更登記の両方の期限を確認しておく必要がある。

実務上は、相続登記を申請する際に登記簿上の住所と現住所が異なることが判明し、そこで初めて住所変更登記の必要性に気づくケースも多いという。逆に言えば、相続登記の手続きを進める過程で住所変更もあわせて確認しておけば、二度手間や見落としを防ぎやすい。司法書士に依頼する場合は、相続登記とあわせて住所変更登記の要否も確認してもらうとよいだろう。

なお、過料はあくまで「正当な理由なく」申請を怠った場合に科されるものであり、遺産分割協議が難航している、相続人の一人が行方不明で調査に時間がかかっているといった事情がある場合には、法務局への申し出により配慮される余地がある。とはいえ、こうした事情がある場合ほど、早めに法務局や司法書士に相談し、状況を説明しておくことが重要だ。何もせず期限だけが過ぎてしまうと、正当な理由の有無にかかわらず不利に働きかねない。

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空き家は見つかる、固定資産税6倍のワナ

放置すると税金が跳ね上がる仕組み

空き家を放置してはいけないもうひとつの理由が、固定資産税の急増リスクだ。200㎡以下の小規模住宅用地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が通常の6分の1に軽減されている(都市計画税も最大3分の1)。ところが、自治体から「特定空き家」または「管理不全空き家」に認定され、改善の「勧告」を受けると、翌年度からこの特例の対象外となり、実質的に税負担が跳ね上がる。

たとえば評価額が土地2,000万円・家屋500万円の物件を例にシミュレーションすると、特例が適用されている状態では固定資産税は年間で合計およそ11万円台にとどまるが、特例が外れると年間35万円程度まで増加する。ここに都市計画税の増加分も加わるため、実際の負担増はさらに大きくなるケースがある。

区分土地分(年額)家屋分(年額)合計(目安)
住宅用地の特例 適用時約4.7万円約7万円約11.4万円
特例除外後(勧告後)約28万円約7万円約35万円

国土交通省の集計によれば、2020年度に全国の自治体が空き家所有者に対して行った助言・指導は19,029件にのぼる。放置された空き家はいつか見つかるものであり、自治体からの連絡を受けた経験があると答えた人が60.5%にのぼる(セクション1の調査より)という結果とも符合する。

特定空き家・管理不全空き家に認定されるプロセスは、いきなり勧告に至るわけではない。まず自治体職員による現地調査が行われ、必要に応じて所有者への助言・指導が行われる。それでも改善が見られない場合に勧告、さらに従わない場合は命令、最終的には行政代執行(自治体による強制的な解体・撤去、費用は所有者に請求)に至ることもある。固定資産税の特例除外は、この「勧告」の段階で発生する点を押さえておきたい。

特例を詳しく知っている人はわずか2割

知っていれば防げるリスクを、知らないまま放置している

では、この固定資産税の特例制度について、実家を相続した当事者はどれだけ理解しているのか。先述のGMO調査では、住宅用地の特例について「詳しく知っていた」と答えたのはわずか20.1%。「聞いたことはあるが詳しくは知らなかった」が54.1%、「まったく知らなかった」が25.8%で、合計すると約8割が制度の詳細を理解していないことになる。

詳しく知っていた

20.1%

制度の内容まで理解していた層

聞いたことはある

54.1%

存在は知っているが詳細は未理解

まったく知らなかった

25.8%

制度自体を認識していなかった

特例が外れるまでには、自治体からの助言・指導・勧告という段階を踏むのが一般的で、初期段階で適切に対応すれば除外を回避できるケースは多い。逆に言えば、制度を知らないまま通知を放置してしまうと、対応の機会を逃してしまう。

自治体からの通知を受け取った際の初動としては、まず「何を指摘されているのか」を正確に把握することが重要だ。老朽化した建物の危険性を指摘されているのか、庭木や雑草の管理不全を指摘されているのか、あるいは単なる利用状況の確認なのかによって、必要な対応は大きく異なる。通知を放置せず、内容が分からなければ自治体の空き家対策担当窓口に問い合わせることが、特例除外を避ける第一歩になる。

遠方に住んでいて自分では管理が難しい場合は、空き家管理サービスを利用する方法もある。月々数千円から1万円程度の料金で、定期的な巡回・通風・郵便物の確認などを代行してもらえるサービスが各地で広がっており、「通知が来てから慌てて対応する」のではなく、あらかじめ管理体制を整えておくことで特例除外のリスク自体を下げることができる。

なお、老朽化が進み修繕コストが土地の価値を上回るような物件では、特例維持にこだわるよりも、早期の解体・更地化や売却に踏み切ったほうが結果的に負担が軽くなるケースもある。固定資産税額だけでなく、将来の管理コストや倒壊リスクまで含めて総合的に判断したい。

自治体によっては、空き家の解体費用を補助する制度や、空き家バンクへの登録支援を行っているところもある。制度の詳細や利用条件は自治体ごとに異なるため、固定資産税の特例に関する問い合わせと合わせて、解体補助やリフォーム補助の有無も確認しておくと、後々の選択肢が広がりやすい。

都道府県で異なる相続売却のリアル

地方は「売る」、都市部は「持ち続ける」

LIFULL HOME'Sが2025年の売却査定依頼データを分析した結果によると、「相続」を理由とした売却査定の依頼割合は2019年の15.9%から2025年には25.0%まで上昇し、過去最高を更新した。売却理由の実に4件に1件が「相続」によるものという計算になる。

15.9%25.0%2019年2025年

地域別に見ると差はさらに鮮明になる。相続を理由とした売却割合が高いのは島根県35.6%、愛媛県35.1%、佐賀県34.9%、高知県34.6%など西日本・地方圏が中心。一方、東京都13.9%、神奈川県17.8%、大阪府18.8%と、三大都市圏では相対的に低い水準にとどまる。物件種別では一戸建てが67.4%、土地が24.5%で、合計すると9割超(91.9%)を占めた。

この地域差が生まれる背景には、地方圏における人口減少と実需の弱さがある。相続した実家に「自分や子どもが将来住む」という選択肢が現実的でない地域ほど、早期売却の判断がされやすい。一方、東京・神奈川・大阪などの都市圏では、賃貸需要が見込めることや将来的な地価上昇への期待から、売却せずに賃貸活用や保有継続を選ぶ世帯が相対的に多いと考えられる。首都圏で実家を相続した場合は、「売る」だけでなく「貸す」という選択肢も現実的な検討対象になりやすい。

なお、相続を理由とした売却割合が全国的に過去最高を更新したという事実は、裏を返せば「これまで動かなかった相続不動産が、ようやく市場に出始めている」ことも意味する。相続登記の義務化によって名義変更のハードルが可視化されたことや、空き家対策の強化が進んだことが、潜在的だった売却ニーズを表面化させた可能性も指摘されている。

売却査定を依頼するタイミングについても一つの目安がある。相続税の申告・納付期限は相続開始から10ヶ月以内と定められているが、実際に不動産を現金化して納税資金に充てたい場合は、査定から売却完了までに数ヶ月単位の時間がかかることを見込んで、早めに動き出す必要がある。「とりあえず査定だけ依頼してみる」というスタンスでも、相場観を把握しておくこと自体が、その後の方針決定を早める材料になる。

一戸建てとその敷地である土地を合わせると9割を超えるという物件種別の内訳は、相続不動産の多くが「戸建て+土地」という形で発生していることを裏付けている。区分所有マンションと違い、戸建ては建物の老朽化対応や敷地の管理まで所有者自身が担う必要があるため、相続後の意思決定がより重くのしかかりやすい物件タイプだといえる。

都道府県相続理由の売却割合
島根県35.6%
愛媛県35.1%
佐賀県34.9%
高知県34.6%
大阪府18.8%
神奈川県17.8%
東京都13.9%

東京・埼玉で相続不動産オーナーが向き合う独自の事情

東京・埼玉で相続不動産オーナーが向き合う独自の事情

ペッターズ不動産が拠点を置く東京都・さいたま市周辺は、全国的に見れば相続を理由とした売却割合が低いエリアにあたる(東京都13.9%、神奈川県17.8%)。裏を返せば、都市部では実家を売却せずに保有し続ける、あるいは賃貸として活用する選択をする世帯が地方より多いということだ。地価が上昇局面にあるエリアでは、空き家のまま数年寝かせておくことが「今動けば得られたはずの利益」を取り逃す機会損失につながりかねない一方、価格が伸び悩むエリアや老朽化が進む物件では、判断を先延ばしにするほど資産価値が目減りするリスクもある。

同じ首都圏でも、エリアによって公示地価・基準地価の動きには差があり、「保有を続けるべきか」「早めに動くべきか」の最適解は物件の立地によって異なる。特にペット可賃貸として貸し出せば継続的な収益化が見込めるエリアもあれば、更地化して駐車場や売却用地として活用したほうが合理的なエリアもある。相続した実家がどちらに向いているかは、実際に現地を見てもらい、周辺の賃貸需要や売買相場と照らし合わせて判断するのが確実だ。

特にペット可物件は、賃貸市場全体で見ても需要に対して供給が追いついていない傾向が続いている。駅からの距離や築年数だけで判断すると「貸すのは難しい」と思える実家でも、ペット可の設備(フローリングの傷防止加工、ペット用の足洗い場など)を整えるリフォームを行うことで、周辺相場より高い賃料設定や早期成約が見込めるケースもある。売却一択で考える前に、賃貸化の可能性も含めて比較検討する価値は十分にある。

ケース向いている対応の例
賃貸需要があるエリアで建物の状態も良いリフォームのうえペット可賃貸などとして貸し出す
地価上昇エリアで住む予定がない早期売却で含み益を確定させる
老朽化が進み修繕コストが重い解体・更地化のうえ売却や駐車場活用を検討
相続人の誰も管理できる状態にない相続放棄・国庫帰属も含めて専門家に相談

ペッターズ不動産は東京都・さいたま市周辺で賃貸・売買双方の物件を数多く取り扱っており、相続した実家がペット可賃貸として貸し出せる状態かどうか、あるいは売却相場がどの程度かといった現況確認から相談を受け付けている。「まだ何も決めていない」段階でも、選択肢を整理するための相談は可能だ。

相続登記、知っているようで知らない期限

「聞いたことがある」72.9%、でも期限を正確に知る人は半分以下

相続登記義務化そのものの認知度は着実に上がっている。「聞いたことがある」と答えた人は72.9%にのぼり、前年の53%から大きく増加した(不動産関連ニュースが伝えた法務省データをもとにした調査結果より)。一方で、申請期限が「相続を知った日から3年以内」であることを正確に認識している人は42.8%にとどまり、義務化前に発生していた相続分も対象になることを知っている人は40.4%にとどまる。

実際の申請件数も増加傾向にある。法務省の集計では、近年の年間相続登記申請件数は150万件を超える水準まで増え、前年から1割以上増加したことが報告されている。制度の存在は広く知られつつあるが、自分がいつまでに何をすべきかという具体的な期限の理解はまだ追いついていないのが実情だ。

「聞いたことがある」と「正確な期限まで理解している」のあいだにあるギャップは、そのまま放置期間の長期化につながりやすい。特に、相続がすでに2024年4月1日より前に発生していた世帯にとっては、「自分は義務化前に相続したから対象外」という誤解が生じやすい。しかし実際には、施行日より前の相続分についても経過措置(2027年3月31日まで)を通じて義務化の対象に含まれており、この誤解こそが後述する経過措置期限に間に合わない事態を招きかねない。

認知度が前年の53%から72.9%へと急上昇した背景には、義務化の施行そのものに加え、不動産会社や金融機関、自治体の広報活動が強化されたことが影響していると見られる。もっとも、認知度が上がっても実際の申請行動に移す人がどれだけ増えたかは別問題だ。「知っている」と「やった」のあいだにあるギャップこそが、経過措置期限が迫る中で最も注意すべきポイントといえる。

義務化を知っている

72.9%

前年の53%から大幅増

3年以内の期限を認識

42.8%

制度は知っていても期限は曖昧な人が多数

年間申請件数

150万件超

前年から1割以上増加(法務省集計)

今日からできる3つの実務ステップ

「方針未定」から抜け出すための優先順位

ここまで見てきたデータが示すのは、知らないことと決めきれないことが空き家放置の二大要因だという点だ。今日からできる実務的なステップを3段階で整理する。

ステップやること関係する期限の目安
①相続人の確定戸籍を集め法定相続情報一覧図を取得、遺産分割協議書を作成相続を知ってからできるだけ早く
②登記の最新化相続登記、必要に応じて住所等変更登記を申請相続登記は3年以内/住所変更登記は2年以内
③活用方針の決定自分で住む・貸す・売る・相続放棄などを家族で決定し担当者を明確化経過措置期限(2027年3月31日)前を目安に

特に③では、「誰が・いつまでに・何をするか」を紙に書き出すところまでやることが重要だ。話し合いの結論を担当者と期限つきで明文化しない限り、セクション1で見た話し合ったのに42.8%が未定という状態を繰り返してしまう。

専門家に相談するタイミングも重要な判断材料になる。相続人の関係が良好で不動産の価値も明確な場合は自分たちだけで手続きを進められることもあるが、相続人の一人と連絡が取りづらい、評価額の大きい不動産が含まれる、遺言の内容に疑義があるといったケースでは、早い段階で司法書士・弁護士・不動産会社など専門家を交えたほうが、結果的に解決までの時間もコストも抑えられることが多い。

相談先を選ぶ際は、役割の違いを理解しておくと動きやすい。登記手続き自体は司法書士、相続人間で意見がまとまらない場合の代理交渉や調停は弁護士、相続税の申告や節税対策は税理士、そして実家をどう活用・売却するかという不動産としての価値判断や出口戦略は不動産会社がそれぞれの専門領域になる。複数の専門家が連携できる窓口に相談すると、たらい回しにならずに済みやすい。

ステップを一つずつ進めるだけでも、「方針未定」という宙ぶらりんの状態から抜け出す道筋は見えてくる。重要なのは完璧な計画を最初から立てることではなく、次に何をするかを一つ決めて動き出すことだ。小さな一歩が、結果的に過料や固定資産税増額といった大きな負担を避けることにつながる。

相続放棄、国庫帰属という選択肢

要らない実家を手放す2つの法的ルート

活用も売却も難しいと判断した場合に検討したいのが、相続放棄と相続土地国庫帰属制度だ。相続放棄は家庭裁判所への申述によって相続人の地位そのものを手放す手続きで、原則として自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に申述する必要がある。プラスの財産も含めて一切を相続しない選択になるため、他に価値のある資産がある場合は慎重な判断が求められる。

一方、2023年4月27日に施行された相続土地国庫帰属制度は、すでに相続した土地を対象に、一定の要件(建物がない、担保が設定されていない等)を満たし、審査手数料と一定の負担金を納めることで、土地の所有権を国庫に帰属させられる制度だ。建物付きの実家は対象外で、更地化などの準備が必要になる点には注意したい。

相続放棄には大きな注意点もある。特定の不動産だけを放棄することはできず、預貯金や有価証券などプラスの財産もすべて含めて相続人としての地位を失う。また、自分が放棄すると次の順位の相続人(兄弟姉妹や甥・姪など)に相続権が移るため、放棄を検討する際は他の親族への事前の説明も欠かせない。「実家だけ手放したい」という希望がある場合は、放棄ではなく売却や国庫帰属など別の手段を優先的に検討することになる。

まとめ:相続放棄も国庫帰属も期限・要件が細かく定められているため、検討する場合は早めに司法書士や弁護士、不動産会社に相談するのが望ましい。

相続放棄・国庫帰属のいずれも、「手放す」ことを前提とした選択肢である一方、実家に多少なりとも収益性や資産価値が見込めるなら、賃貸に出す、あるいは売却して現金化するという道も比較検討する価値がある。特にペット可賃貸として貸し出す、駐車場や更地として活用するなど、地域の需要に応じた運用方法は物件によって幅があるため、不動産会社に現況を見てもらったうえで複数の選択肢を比較するのが現実的だ。

よくある質問

実家の相続でよくある疑問に答える

Q.相続登記をしないとどうなりますか?

A.正当な理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料の対象になり得ます。2024年4月1日以前に発生していた相続分にも義務化は適用されますが、経過措置により2027年3月31日までに申請すれば過料の対象を回避できます。

Q.実家にまだ誰も住んでいません。固定資産税は今のままですか?

A.住宅用地の特例が適用されている間は大きく変わりません。ただし自治体から特定空き家・管理不全空き家に認定され改善の勧告を受けると、翌年度から特例が外れ、土地分の固定資産税が実質的に数倍規模まで増加する可能性があります。

Q.相続人が遠方に住んでいて集まれません。どう進めればよいですか?

A.法定相続情報一覧図の取得や遺産分割協議書の作成は、郵送やオンラインでのやり取りでも進められます。話し合いが停滞しやすい場合は、司法書士や不動産会社など第三者に間に入ってもらう方法も有効です。

Q.相続した実家を売るタイミングに決まりはありますか?

A.税制上、相続開始から一定期間内の売却で税負担が軽くなる特例が設けられている場合があります。適用要件や有利不利は個別事情によって異なるため、具体的な税務判断は税理士に確認することをおすすめします。

Q.住所変更登記は自分で行う必要がありますか?

A.法務局への申請は自分で行うことも、司法書士に依頼することも可能です。相続登記とあわせて住所変更登記が必要になるケースでは、まとめて司法書士に依頼すると手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。

Q.空き家のまま様子を見るという選択肢はありますか?

A.制度上、すぐに何らかの処分を強制されるわけではありません。ただし放置期間が長引くほど老朽化が進み、固定資産税の特例除外リスクや近隣トラブルの可能性も高まります。「いつまで様子を見るか」の期限を家族で決めておくことが、結果的に選択肢を狭めない対応につながります。

Q.相続登記や住所変更登記にかかる費用の目安はありますか?

A.登録免許税として不動産の固定資産税評価額の0.4%程度がかかるほか、司法書士に依頼する場合は物件数や戸籍収集の手間に応じて報酬が加算されます。事前に複数の司法書士事務所やワンストップで相談できる窓口で見積もりを比較すると、費用感をつかみやすくなります。

まとめ

家族で話し合ったことは大切な一歩だが、それだけでは実家の空き家問題は動かない。42.8%という数字が示すのは、話し合いの先――誰が名義を持ち、誰が費用を負担し、いつまでに何を決めるかという実行計画の不在だ。2026年4月に始まった住所等変更登記の義務化により、相続登記とあわせて過料は最大15万円に達し得る。固定資産税の特例を知らないまま放置すれば、税負担が跳ね上がるリスクもある。まずは相続人の確定と登記の最新化、そして活用方針の期限つき決定から始めたい。

相続登記の経過措置期限(2027年3月31日)まで、本稿執筆時点で1年半ほどの猶予がある。しかし戸籍の収集や遺産分割協議には想像以上に時間がかかることも多く、「まだ余裕がある」と感じるうちから動き出すことが、結果的に過料や固定資産税の増額といったリスクを避ける一番の近道になる。実家をどうするか迷ったときは、法的な手続きの専門家だけでなく、その不動産自体の価値や活用方法を知る不動産会社にも早めに相談してみてほしい。

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出典

  1. GMO TECH株式会社「相続した実家の空き家、38.6%が『今後の方針未定』」調査|//group.gmo/news/article/10191/
  2. 株式会社LIFULL「『相続』を理由とした売却査定の依頼割合が過去最高」|//lifull.com/news/47454/
  3. 政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化!」|//www.gov-online.go.jp/article/202512/entry-10431.html
  4. 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」|//www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
  5. いい相続「相続登記の義務化で違反の場合は罰則!」|//www.i-sozoku.com/navi/souzokutoki_-gimuka/
  6. えびこ法律事務所「相続登記+住所変更登記『ダブル義務化』で過料最大15万円に」|//ebiko-legal.com/blog-souzoku-jusho-double-gimuuka
  7. 東急リバブル 不動産ニュース「法務省、相続登記の件数増加傾向が続く」|//www.livable.co.jp/shiritai/column/news/2025/031701.html
  8. ダイヤモンド不動産研究所「空き家の放置で固定資産税が6倍になる!」|//diamond-fudosan.jp/articles/-/1113044
  9. A&T司法書士事務所「住所変更登記が義務化!2026年4月から開始」|//tsuji-shihoushoshi.jp/post/387
  10. 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」/国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(地域経済リサーチ-JC-NET掲載)|//n-seikei.jp/2026/09/akiya-mondai2026-09.html

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