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関東の管理会社「57.3%」が高齢者の入居を断った経験あり 改正住宅セーフティネット法1年で何が変わったか

賃貸不動産

 柴崎 孝行

筆者 柴崎 孝行

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賃貸不動産コラム

関東の管理会社「57.3%」が高齢者の入居を断った経験あり
改正住宅セーフティネット法1年、"入居拒否"はなくなるのか

孤独死への不安84%、大家の9割が抱く懸念——2025年10月に施行された制度改正の中身と、埼玉県内の居住支援の今を、最新調査データとともに整理します。

2026年9月26日更新/読了目安 13分

「高齢だから」という理由だけで、賃貸物件の入居を断られる——そんな経験をしたことがある、あるいは身近な家族から聞いたことがある方は少なくないはずです。実際、株式会社アットホームが2026年2月に実施した調査では、賃貸住宅管理会社の49.2%が「直近1年で高齢を理由に入居を断ったケースがある」と回答し、関東地方に限ると57.3%にまで跳ね上がります。一方で大家・管理会社側にも言い分があります。最大の懸念は「孤独死」で84.0%にのぼり、国土交通省の検討資料でも死亡事故等への不安を抱える大家は9割に達するとされています。こうした"すれ違い"を制度面から是正しようと、2025年10月に施行されたのが改正住宅セーフティネット法です。この記事では、最新の実態調査、制度改正のポイント、そして埼玉県内の居住支援の現状までを、出典を明示しながら整理します。物件オーナー様にとっても、これから部屋探しをするご家族にとっても、判断材料になれば幸いです。なお本記事の情報は2026年9月26日時点のものです。制度の運用状況は今後も変わる可能性があるため、最新情報は各自治体・国土交通省の公表資料をあわせてご確認ください。

目次

この記事の要点

・関東の管理会社の57.3%が、直近1年で高齢者の入居を断った経験がある(アットホーム調査)

・2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法で、残置物処理・保証・見守りの担い手が制度化された

・埼玉県は空き家率9.3%と全国最低水準。「物件がない」のではなく「貸す側の不安」が課題の本質

  1. 高齢者の入居拒否、最新データで見る実態
  2. なぜ大家・管理会社は高齢者を敬遠するのか
  3. 「候補物件が少ない」高齢者側の本音
  4. 空き家899万戸なのに、なぜ選択肢は狭いのか
  5. 改正住宅セーフティネット法とは何か
  6. ポイント①終身建物賃貸借の認可手続きが簡素化
  7. ポイント②残置物処理を居住支援法人が代行
  8. ポイント③認定家賃債務保証業者制度
  9. ポイント④居住サポート住宅と補助制度
  10. 埼玉県内の居住支援法人、35法人の今
  11. オーナー・入居希望者が今からできること
  12. よくある質問(Q&A)

高齢者の入居拒否、最新データで見る実態

「うちの親は元気だから、まだ関係ない」——そう思う方にこそ知ってほしいデータがあります。賃貸住宅の入居拒否は、体調を崩してから直面する問題ではなく、契約更新のタイミングや、住み替えを考え始めた時点で、健康状態にかかわらず突きつけられる現実だからです。まず押さえておきたいのが、管理会社側の実態です。アットホーム(2026年2月2日〜20日、賃貸住宅管理会社632社を対象に実施)によると、「直近1年で高齢を理由に入居を断ったケースがある」と回答した管理会社は全国で49.2%。地域別に見ると関東地方は57.3%と全国平均を大きく上回り、その他地域(40.8%)との差は16.5ポイントにのぼります。つまり、賃貸物件が集中する首都圏ほど、高齢者の入居はむしろ狭き門になっているのが実情です。

一方、借りる側である高齢者本人の声を追ったのが株式会社R65の調査(2025年7月28日〜30日、65歳超で賃貸住宅を探した経験がある500名が対象)です。「年齢を理由に入居を断られた経験がある」と答えた人は30.4%。これが直近1年に限ると36.7%まで上昇しており、2023年の同種調査(26.8%)と比べても3.6ポイント増加しています。制度改正が進む一方で、現場感覚としての「断られやすさ」はむしろ強まっている可能性がある、という点は見逃せません。

57.3%

関東の管理会社が直近1年で高齢者の入居を断った割合

36.7%

高齢者が直近1年で年齢を理由に断られた経験(R65調査)

10.7%

高齢入居者自身が「断られた経験あり」と答えた割合

+3.6pt

2023年→2025年の入居拒否経験率の増加幅(R65調査)

年齢を理由に入居を断られた経験(R65不動産調査) 26.8% 2023年 30.4% 2025年(通年) 36.7% 2025年(直近1年)

グラフを見ると、2023年の26.8%から2025年直近1年の36.7%まで、断られた経験の割合はほぼ右肩上がりで推移していることが分かります。この間、改正住宅セーフティネット法の議論や制度整備は着実に進んでいたにもかかわらず、現場の体感としての「断られやすさ」は改善していません。制度の設計と、実際の賃貸市場での運用状況との間に、まだ時間差があることがうかがえます。

数字が示すのは「高齢者の部屋探しは年々厳しくなっている」という傾向です。とりわけ気になるのは、制度改正が進んでいる最中にもかかわらず、現場の"断られやすさ"は改善どころかむしろ強まっている点です。これは、制度の存在そのものが大家・管理会社にまだ十分浸透していない可能性を示唆しています。制度を作っただけでは実態は変わらず、周知と実務への落とし込みが伴って初めて数字が動く、ということでもあります。

また、地域差が大きいことにも注目したいところです。関東地方の入居拒否率が全国平均より高い背景には、賃貸需要そのものが旺盛で「わざわざ高齢者向けのリスクを取らなくても、他の入居希望者を確保できる」という大家側の心理が働いている可能性があります。埼玉県を含む首都圏エリアだからこそ、制度を積極的に活用する意義は大きいといえるでしょう。次章では、その背景にある大家・管理会社側の懸念を具体的に見ていきます。

なぜ大家・管理会社は高齢者を敬遠するのか

アットホームの同調査によると、単身高齢者の入居に際して管理会社が最も課題と感じているのは「孤独死」で84.0%。次いで「事故物件化」「残置物処理」の負担が挙げられています。国土交通省の「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討資料」でも、賃貸物件の大家の約7割が高齢者の入居に拒否感を示し、その理由のうち「死亡事故等への不安」は90.9%にのぼるとされています。つまり大家・管理会社にとって最大のネックは、家賃滞納や近隣トラブルよりも「万が一のときの対応」そのものなのです。

この不安には根拠もあります。警察庁刑事局が公表した令和7年のデータ(警察取扱死体のうち、自宅で死亡した一人暮らしの方が対象)によると、自宅で亡くなった単身者のうち75歳以上が占める割合は51.8%(内訳は75〜79歳17.4%、80〜84歳14.8%、85歳以上19.6%)。65〜74歳の24.8%、65歳未満の23.2%と比べても、後期高齢層に集中している実態がうかがえます。大家からすれば「高齢=リスクが高い」という認識は、統計的にはあながち的外れではありません。だからこそ、次章以降で見る"制度による下支え"が重要になってきます。

大家・管理会社が挙げる懸念は「孤独死」だけではありません。家賃の滞納リスク、認知機能の変化に伴う対応の難しさ、近隣住民とのトラブルなども、現場ではしばしば話題にのぼる論点です。ただし、これらは高齢者に限った問題ではなく、年齢を問わず起こり得るリスクでもあります。それにもかかわらず「高齢者だから」という理由だけで一律に入居を断るケースが目立つのは、個別の入居希望者の状況を見極める手間よりも、リスクを避けて別の入居希望者を選ぶ方が管理コストとして合理的、という判断が働きやすいためだと考えられます。

こうした懸念について、「年齢だけを理由に一律に入居を断るのは、実質的な年齢差別ではないか」という指摘も一部にはあります。一方で、賃貸経営はボランティアではなく事業である以上、大家が経営判断としてリスクを避けようとすること自体は自然な行動でもあります。この記事が伝えたいのは「大家が悪い」「制度さえあれば解決する」という単純な話ではなく、大家が安心してリスクを取れるだけの制度的な受け皿が、これまで十分ではなかったという点です。次章以降で見る改正住宅セーフティネット法は、まさにその受け皿を具体化する試みといえます。

残置物の処理、原状回復、相続人の特定——これらは従来、大家個人の負担とされてきました。この構造そのものを変えようとしているのが、2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法です。

「候補物件が少ない」高齢者側の本音

一方で、部屋を探す高齢者側の負担も軽くありません。R65の調査では、部屋探しで「苦労した」と回答した人は42.8%、直近1年に限ると61.2%まで上昇しています。苦労の内容として最も多かったのは「候補物件が少なかった」で52.8%(直近1年では63.3%)。次いで「経済的負担の増加」が31.3%、「条件に合わない物件ばかり紹介された」17.3%、「手続きが複雑だった」15.9%と続きます。

部屋探しで苦労した内容 通年 直近1年
候補物件が少なかった 52.8% 63.3%
経済的負担の増加 31.3% ―
条件に合わない物件ばかり紹介 17.3% ―
手続きが複雑だった 15.9% ―

出典元では直近1年の内訳すべてが公開されているわけではありませんが、「候補物件の少なさ」が一貫してトップの悩みであることは共通しています。「経済的負担の増加」が2位に挙がっている点も見逃せません。高齢者の賃貸契約では連帯保証人を立てにくいケースが多く、家賃保証会社の利用が事実上必須になりがちです。保証会社を利用すれば初期費用に保証料が上乗せされ、更新のたびに更新保証料が発生することも多く、これが「経済的負担」として体感されている可能性があります。認定家賃債務保証業者制度によって保証料が不当に高額にならない仕組みが導入された背景には、こうした声があると考えられます。

次章では、この"物件が少ない"という感覚が、実際の住宅ストックの数字とどう食い違っているのかを見ていきます。

空き家899万戸なのに、なぜ選択肢は狭いのか

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は899万戸で過去最多を更新しました。空き家率は13.8%にのぼります。「物件不足」というより、正確には「高齢者を受け入れる物件の不足」が実態に近いといえます。埼玉県内でも同様の構図があり、単身高齢者が増える一方で、大家・管理会社が抱える不安が解消されない限り、空き家と入居希望者のマッチングは進みません。

国土交通省の資料では、国内の家賃債務保証業者は約250者存在するとされる一方、要配慮者向けのサービスを提供する事業者は限られており、令和7年3月末時点での登録家賃債務保証業者数は115者にとどまります。保証会社の審査に通らなければ物件を借りられないケースが多い中、この"担い手不足"も選択肢を狭める一因になっています。あわせて、セーフティネット登録住宅は同時点で943,143戸、居住支援法人は1,029法人、居住支援協議会は155協議会(47都道府県・117市区町村)が設立されており、制度としての土台は着実に広がっています。

この構図は埼玉県内で見るといっそう際立ちます。埼玉県の発表によると、令和5年住宅・土地統計調査時点の県内空き家数は33万400戸(全国9位)、空き家率は9.3%で、これは全国で最も低い水準です。「物件が足りない」どころか、埼玉県はむしろ全国屈指の"空き家が少ない=賃貸需要が旺盛な"エリアなのです。それにもかかわらず高齢者の入居が難しいということは、供給不足ではなく「大家が高齢者に貸すことをためらう」という選好の問題であることが、この数字からも裏付けられます。

一方で、埼玉県の高齢化は今後も進みます。県の公表資料では、高齢化率は令和2年(2020年)時点の27.0%から、令和7年(2025年)には27.8%、令和22年(2040年)には33.3%まで上昇する見通しです。85歳以上の人口は令和2年比で2倍以上に増えると見込まれており、単身高齢者の住まい探しは今後さらに切実な課題になっていきます。空き家が少なく、かつ高齢化が進む埼玉県のようなエリアでは、限られた賃貸ストックをいかに高齢者にも開いていけるかが、地域全体の住宅政策としても問われることになります。

9.3%

埼玉県の空き家率(全国最低水準)

27.8%

埼玉県の高齢化率(2025年見込み)

33.3%

埼玉県の高齢化率(2040年見通し)

こうした需給のギャップを埋めるために、2025年10月に施行されたのが改正住宅セーフティネット法です。ここから、その中身を4つのポイントに分けて見ていきます。

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改正住宅セーフティネット法とは何か

正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律」。高齢者、低額所得者、ひとり親世帯、障がい者など「住宅確保要配慮者」が賃貸住宅を借りやすくすることを目的に、2025年10月に施行されました(一部制度は同年7月から申請受付が開始)。背景には、国立社会保障・人口問題研究所の推計で高齢単独世帯の増加が続くと見込まれていることに加え、大家側の不安が解消されないまま要配慮者の数だけが増えていく、という構造的なズレがあります。

ここでいう「住宅確保要配慮者」とは、高齢者だけを指す言葉ではありません。低額所得者、被災者、子育て世帯(ひとり親世帯を含む)、障害者、外国人など、市場のなかで住まいを確保しにくい立場にある人たちを幅広く含む概念です。高齢者の入居拒否が特に注目されやすいのは、単身高齢者世帯の増加ペースが速く、かつ「孤独死」という大家にとって心理的な負担が大きいリスクと直結しているためです。ただし制度自体は、高齢者に限らず幅広い要配慮者を支える枠組みとして設計されている点は押さえておきたいポイントです。

そもそも住宅セーフティネット制度自体は2017年に始まった枠組みで、要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を「セーフティネット登録住宅」として都道府県等に登録する仕組みでした。登録はあくまで大家の任意によるもので、令和7年3月末時点の登録戸数は943,143戸まで積み上がっているものの、制度開始から一貫して「登録されているだけで、実際に要配慮者の入居につながっているかは別問題」という課題が指摘され続けてきました。今回の改正は、この"登録しても使われない"という状態を、残置物処理や保証の担い手を具体的に用意することで前進させようとするものです。

改正の柱は大きく4つ。①終身建物賃貸借の認可手続き簡素化、②居住支援法人による残置物処理の代行、③認定家賃債務保証業者制度の創設、④「居住サポート住宅」の創設です。それぞれ具体的に見ていきましょう。

ポイント①終身建物賃貸借の認可手続きが簡素化

「終身建物賃貸借」は、入居者が亡くなった時点で契約が確定的に終了する仕組みで、大家にとっては「相続人を探して契約を解除する」という煩雑な手続きが不要になるのが最大のメリットです。従来は住宅ごとに個別の認可が必要でしたが、改正後は大家が事業者として認可を取得しておけば、実際に入居希望者が現れた段階で住宅を届け出るだけで済むようになりました。あわせて、対象となる住宅の床面積基準も25平方メートル以上から18平方メートル以上に緩和され、単身向けのコンパクトな住戸でも制度を利用しやすくなっています。

「相続人探しが不要」「契約が死亡時に確定的に終了する」という2点は、大家が最も懸念する"死亡後の手続きの重さ"を直接軽減するものです。一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、入居者が亡くなった場合でも契約上の地位は相続人に引き継がれるのが原則です。相続人が誰なのか分からない、複数いて連絡が取れない、といったケースでは、大家が契約を解除するだけでも家庭裁判所の手続きが必要になることがあり、数か月から場合によっては年単位の時間がかかることも珍しくありません。終身建物賃貸借であれば、この"相続人を探す"というプロセスそのものが発生しない点が、普通借家契約との決定的な違いです。

契約形態 契約の終了 更新
普通借家契約 死亡後も相続人に契約が承継される 原則あり
定期借家契約 期間満了で終了(死亡時は相続人に承継) なし(再契約は可)
終身建物賃貸借 入居者の死亡時に確定的に終了 なし(一代限り)

大家にとっては「相続人と交渉せずに契約が終了する」という予見可能性の高さが、終身建物賃貸借を選ぶ最大のメリットになります。

すでに普通借家契約で入居している既存の入居者を、途中から終身建物賃貸借に切り替えることは基本的にできません。この制度を利用できるのは、あくまで新規の契約からです。そのため、既存の高齢入居者を多く抱える大家にとっては即効性のある対策ではなく、これから高齢者の受け入れを増やしていきたいと考えるオーナー向けの選択肢と位置づけるのが実情に近いでしょう。

なお、定期借家契約を選ぶという方法もあります。期間満了で契約が終了するため更新をめぐるトラブルは避けやすい一方、契約期間中に入居者が亡くなった場合は、その時点までの契約上の地位が相続人に引き継がれる点は普通借家契約と同様です。「相続人探しが要らない」という終身建物賃貸借ならではのメリットは、定期借家契約では得られません。どちらを選ぶかは、大家がどのリスクを重視するかによって変わってきます。

ポイント②残置物処理を居住支援法人が代行

孤独死の次に大家を悩ませるのが「残置物処理」です。今回の改正では、居住支援法人の業務に残置物処理が正式に追加されました。国が令和3年に策定したモデル契約条項を活用し、入居者が生前に居住支援法人などの受任者と委任契約を結んでおくことで、万が一のときには受任者が賃貸借契約の解除および残置物処理を代行できる仕組みです。受任者になれるのは推定相続人、または大家と利益相反の関係にない第三者に限られており、恣意的な処分ができないよう一定の歯止めもかけられています。

具体的には、モデル契約条項は「解除関係事務委任契約」と「残置物関係事務委任契約」の2本立てで構成されています。前者は賃貸借契約そのものを解除する権限を受任者に与えるもの、後者は残された家財道具の廃棄・換価・搬出等を受任者に委ねるものです。入居時にこの2つの委任契約をあわせて締結しておくことで、大家は「亡くなった後、誰と連絡を取ればよいか分からない」という最も困る状況を避けられます。居住支援法人がこの受任者を担えるようになったことで、身寄りの少ない単身高齢者でも制度を利用しやすくなりました。

これまで大家や管理会社が手探りで対応していた「亡くなった後の部屋の片付け」を、契約の時点であらかじめ制度化しておける点が大きな変化です。

ポイント③認定家賃債務保証業者制度

前述の通り、国内の家賃債務保証業者は約250者存在するとされますが、要配慮者向けのサービスが手薄という課題がありました。改正法では、一定の基準を満たした業者を「認定家賃債務保証業者」とする制度が新設されています。認定を受けるための主な要件は、居住サポート住宅の入居者について保証の引受けを原則断らないこと、緊急連絡先を親族などの個人に限定せず法人でも可とすること、保証人の設定を入居条件にしないこと、保証料が不当に高額でないことなどです。

区分 住宅金融支援機構の保険填補率
登録家賃債務保証業者(セーフティネット登録住宅対象) 7割
認定家賃債務保証業者(居住サポート住宅対象) 9割

住宅金融支援機構(JHF)による保険の填補率も、登録業者の7割に対して認定業者は9割まで拡充されており、保証会社側が要配慮者向けの保証を引き受けやすい環境が整いつつあります。令和7年3月末時点での登録家賃債務保証業者は115者。今後、認定業者としての登録が進むかどうかが、制度の実効性を左右する部分といえるでしょう。

保証会社にとっては、要配慮者向けの保証は滞納・孤独死リスクを抱えやすい分野とされてきました。填補率が9割まで引き上げられることで、万が一の際の自己負担が1割に圧縮され、要配慮者向け保証への参入ハードルが下がる効果が期待されています。入居者側から見れば、選べる保証会社の選択肢が増えること、保証人を立てられなくても審査対象になりやすくなることが、実務上のメリットとして挙げられます。

認定を受けるのは家賃債務保証業者自身であり、入居者や大家が個別に申請する必要はありません。入居者・大家の側でできることは、物件やサービスを選ぶ際に「その保証会社が認定を受けているかどうか」を確認することです。認定業者数はまだ限られる段階のため、すべての物件・保証会社で使えるわけではない点には注意が必要です。今後、認定を受ける業者が増えていくかどうかが、制度の実効性を測る一つの指標になるでしょう。

ポイント④居住サポート住宅と補助制度

改正法のもう一つの柱が「居住サポート住宅」の創設です。日常生活に見守りなどの援助が必要な単身高齢者、ひとり親世帯、低額所得者などを対象に、次の3つの支援を組み合わせて提供する住宅類型で、要援助者に対しては「1日1回以上の安否確認(通信機器または訪問による)」「1月1回以上の訪問等による見守り」「福祉サービスへのつなぎ」が求められます。

改修費補助

国が1/3を補助、上限50万円/戸

家賃低廉化補助

原則2万円/戸・月

保証料低廉化補助

国が1/2を補助、上限3万円/戸

大家にとっては「見守り」という形で安心材料が増える一方、改修費や保証料の負担を補助制度でカバーできるのが特徴です。国土交通省と厚生労働省が共同で基本方針を策定し、市区町村には居住支援協議会の設置が努力義務化されるなど、福祉分野との連携も強化されています。

見守りサービスの担い手は、居住支援法人が直接行う場合もあれば、地域の福祉事業者や見守りセンサー・通信機器を扱う民間サービスと連携する場合もあります。「安否確認は1日1回以上」という要件は、必ずしも訪問である必要はなく、センサーや通信機器による確認でも満たせる設計になっている点は、大家・運営者側の負担を考慮した現実的な制度設計といえるでしょう。福祉サービスへの「つなぎ」までが要件に含まれているため、体調変化があった際には地域包括支援センターなど専門機関に橋渡しされる流れが想定されています。

補助金の受け皿になるのは、多くの場合、物件を所有する大家や住宅を運営する事業者です。改修費補助はバリアフリー化や見守り機器の設置費用などに充てられ、家賃低廉化補助・保証料低廉化補助は、入居者の家賃・保証料の負担を実質的に引き下げる形で還元されます。制度を利用するかどうかは大家の任意ですが、初期投資の一部を公費でカバーできる点は、高齢者向け住宅への転用を検討するオーナーにとって現実的な後押しになるはずです。

埼玉県内の居住支援法人、35法人の今

埼玉県が指定する住宅確保要配慮者居住支援法人は35法人にのぼります(うち3法人は指定を取消済み)。指定法人は、入居前の情報提供・相談といった「入居支援」、入居後の生活相談などの「入居中支援」、大家向けの「賃貸人支援」に加え、一部の法人では残置物処理や家賃債務保証の引受けも行っています。支援対象地域は県内全域をカバーする法人から特定の市町村に限定した法人までさまざまで、地域によって利用できるサービスに差があるのが実情です。

居住支援法人は、NPO法人や社会福祉法人、宅地建物取引業者など、法人格や業種もさまざまです。共通しているのは、都道府県から「住宅確保要配慮者の居住支援を行う法人」として指定を受けていることで、行政のお墨付きがある相談先として利用できる点にあります。物件探しの段階だけでなく、入居後の生活相談や、将来的な残置物処理の委任契約まで、一つの法人が一貫してサポートできるケースもあれば、複数の法人・機関が役割分担するケースもあります。どのような支援を受けられるかは法人ごとに異なるため、まずは複数の法人に問い合わせて、自分の状況に合った窓口を探すことをおすすめします。

物件を所有するオーナー様にとっては、こうした居住支援法人と連携することで、これまで個人で抱えていた"万が一"のリスクを制度的に分散できる点が実務上のメリットになります。埼玉県のホームページでは、指定法人の名称・対応地域・支援内容の一覧が公開されており、賃貸経営者であれば誰でも確認できます。自身の物件が所在するエリアをカバーする法人がどこにあるかを事前に把握しておくだけでも、いざというときの相談先を持っておく安心感につながります。

相談の際には、「対応地域はどこか」「相談・支援は無料か」「残置物処理や家賃債務保証まで対応しているか」の3点を確認しておくと、自分に合った窓口かどうかを判断しやすくなります。法人によっては相談だけであれば費用がかからないケースも多いため、まずは電話やメールで問い合わせてみることから始めるとよいでしょう。

次章では、オーナー・入居希望者それぞれが今日から取れる具体的なアクションを整理します。

オーナー・入居希望者が今からできること

制度が整っても、実際に活用されなければ入居拒否の実態は変わりません。オーナー様、入居希望者それぞれの立場でできることを整理しました。

オーナー・大家向け

・終身建物賃貸借の事業者認可を検討する:一度取得しておけば、以後は住宅ごとの届出だけで制度を利用できます。

・地域の居住支援法人と関係を作っておく:残置物処理や見守りの相談先を、入居前から確保できます。

・認定家賃債務保証業者の動向を確認する:填補率9割の保証を使える物件かどうかで、審査のハードルが変わります。

入居希望者・ご家族向け

・居住支援法人に早めに相談する:物件探しの前段階から相談することで、紹介される物件の幅が広がります。

・残置物処理の委任契約の要否を確認する:契約時にあらかじめ結んでおくことで、家族の負担を減らせます。

・セーフティネット登録住宅を検索してみる:都道府県のシステムで、対象住宅の条件や空室状況を確認できます。

「制度があること」と「使われていること」の間には、まだギャップがあります。まずは知ることが、そのギャップを埋める第一歩です。不動産会社に相談する際も、「終身建物賃貸借に対応した物件はあるか」「居住支援法人と連携しているか」といった具体的な質問をすることで、事業者側の対応状況も見えてきます。

不動産会社・仲介事業者向け

・自社が管理する物件のうち、終身建物賃貸借や居住支援法人連携に対応できる物件を整理しておく:問い合わせ時に即答できる体制が信頼につながります。

・認定家賃債務保証業者のリストを把握しておく:保証会社の選択肢を提示できることが、高齢の入居希望者にとって大きな安心材料になります。

制度の課題と今後の展望

改正住宅セーフティネット法は、大家・保証会社・居住支援法人という3者それぞれの負担やリスクを分散させる、よく練られた制度設計だといえます。ただし、施行から1年に満たない現時点では、認定家賃債務保証業者の登録数や、終身建物賃貸借を採用する大家の数がどこまで伸びるかは、まだ見通せない部分も残ります。登録・認定はあくまで任意の制度であるため、実際に活用が広がるかどうかは、大家・保証会社・不動産仲介事業者それぞれの理解と行動にかかっています。

また、居住サポート住宅における「見守り」の担い手不足や、地方部での居住支援法人の少なさといった、地域による支援体制の差も今後の課題として指摘されています。埼玉県のように空き家率が低く賃貸需要が旺盛なエリアでは、制度を使わなくても入居者を確保できてしまうという事情もあり、大家側にとって制度活用のインセンティブが働きにくい面もあります。だからこそ、居住支援法人や自治体による働きかけ、そして入居希望者側から「この制度を知っているか」と積極的に尋ねる姿勢の両方が、実効性を高めるカギになりそうです。

よくある質問(Q&A)

Q. 改正住宅セーフティネット法は、すでにすべての賃貸住宅に適用されていますか?

A. いいえ。制度の多くは大家が任意で活用する枠組みです。終身建物賃貸借の認可取得、居住支援法人との連携、居住サポート住宅としての登録などは、いずれもオーナー側の申請・届出が前提となります。すべての物件で自動的に適用されるわけではありません。

Q. 保証会社の審査に通りにくい場合、どこに相談すればよいですか?

A. まずはお住まいの都道府県が指定する居住支援法人や、市区町村の居住支援協議会に相談するのが近道です。埼玉県内には35法人(3法人は取消済み)が指定されており、地域や支援内容によって窓口が異なります。

Q. 残置物処理の委任契約は、誰と結べばよいのですか?

A. 国のモデル契約条項に基づき、推定相続人または大家と利益相反の関係にない第三者(居住支援法人など)と契約を結ぶのが基本です。契約時点で大家・仲介会社・入居者の三者で条件を確認しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

Q. ペット可物件でも、高齢の入居希望者は借りにくいのでしょうか?

A. ペットの有無にかかわらず、高齢を理由とした懸念は共通してあります。ただし、居住支援法人と連携した物件や、認定家賃債務保証業者の保証が使える物件であれば、審査のハードルが下がるケースがあります。個別の物件ごとに条件が異なるため、早めの相談をおすすめします。

Q. 終身建物賃貸借を選ぶと、家族は同居できなくなりますか?

A. 終身建物賃貸借は「契約者本人が亡くなった時点で契約が終了する」仕組みであり、生存中の同居を制限するものではありません。契約時の条件は物件・大家によって異なるため、同居を予定している場合は事前に確認しておくと安心です。

Q. 認定家賃債務保証業者を使うと、保証料は必ず安くなりますか?

A. 認定の要件には「保証料が不当に高額でないこと」が含まれていますが、これは上限額を一律に定めるものではなく、事業者ごとの料金体系は異なります。複数の保証会社の条件を比較したうえで、不動産会社に相談しながら選ぶことをおすすめします。

Q. 居住サポート住宅は、高齢者以外でも利用できますか?

A. 利用できます。居住サポート住宅は単身高齢者に限らず、ひとり親世帯や低額所得者など、日常生活に一定の援助が必要な住宅確保要配慮者を幅広く対象としています。世帯構成や状況によって受けられる支援内容が異なるため、地域の居住支援協議会や居住支援法人に相談するのが確実です。

高齢を理由にした入居拒否は、大家側の"合理的な不安"と、入居希望者側の"住まいを選ぶ権利"がせめぎ合う難しいテーマです。2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法は、その両者の間にあった溝を埋めるための制度的な後ろ盾といえます。関東の管理会社の57.3%が高齢者の入居を断った経験があるという現実、そして高齢の入居希望者の36.7%が直近1年で入居を断られたという現実は、制度が生まれた今も簡単には解消されていません。だからこそ、制度の周知と、居住支援法人・保証会社を巻き込んだ実務レベルでの活用が欠かせないのです。埼玉県内だけでも35の居住支援法人が指定されており、相談先は決して少なくありません。「高齢だから難しい」と最初から諦めるのではなく、制度を知っている不動産会社・支援法人に相談することが、住まい探しを前に進める一番の近道です。ペッターズ不動産では、埼玉エリアを中心に、高齢のご家族の住み替えやペットとの暮らしに関するご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

高齢のご家族の住まい探し、おひとりで悩まないでください

全物件数 約4,000件/HP掲載済み 約1,000件/未公開物件 約3,000件。埼玉エリアの賃貸・売買・相続・ペットとの暮らしまで、ペッターズ不動産が伴走します。「高齢だから」と最初から選択肢を狭めず、まずは今の状況をお聞かせください。担当スタッフが、居住支援法人や認定保証会社の活用も含めてご提案いたします。

出典一覧

  1. 株式会社アットホーム「高齢者の賃貸入居に関する管理会社・入居者調査」(2026年2月実施、マイナビニュース掲載) //news.mynavi.jp/article/20260619-4598585/
  2. 株式会社R65不動産「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査(2025年)」 //prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000068855.html
  3. 警察庁刑事局捜査第一課「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和7年)」(LIMO記事内で引用) //limo.media/articles/-/138508
  4. 国土交通省「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討資料」(同上記事内で引用)
  5. 国土交通省「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律等について(関係事業者向け・令和7年6月)」 //www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/01_sn_kaisei_jyuutakusafetynet_jigyou.pdf
  6. 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果」 //www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf
  7. 一般社団法人 全国空き家対策コンソーシアム「全国の空き家総件数899万戸!令和5年住宅・土地統計調査の結果をうけて」 //www.akiya-akichi.or.jp/press/27343/
  8. 埼玉県「住宅確保要配慮者居住支援法人の指定状況について」 //www.pref.saitama.lg.jp/a1107/safety-net-kyojuusienhoujin.html
  9. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」 //www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/hprj2024_PR.pdf
  10. 埼玉県「令和5年住宅・土地統計調査結果(埼玉県分)について」 //www.pref.saitama.lg.jp/a0206/news/page/news2024121301.html
  11. 埼玉県「埼玉県の高齢化の状況について」 //www.pref.saitama.lg.jp/a0603/keikaku/koreikanozyokyo.html

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