エアコン・給湯器が壊れたのに修理されない…家賃はいくら減額できる?民法611条と日管協ガイドライン(エアコン10%・免責3日)の計算例【2026年最新】の画像

エアコン・給湯器が壊れたのに修理されない…家賃はいくら減額できる?民法611条と日管協ガイドライン(エアコン10%・免責3日)の計算例【2026年最新】

賃貸不動産

 柴崎 孝行

筆者 柴崎 孝行

不動産キャリア22年

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賃貸の設備トラブル完全ガイド

エアコン・給湯器が壊れたのに修理されない…家賃はいくら減額できる?民法611条と日管協ガイドライン(エアコン10%・免責3日)の計算例【2026年最新】

家賃は満額のまま、設備だけが壊れたまま。実は法律上、使えない部分に応じて家賃は減額されます。目安の割合・免責日数・計算式・手順をまとめました。
2026年10月25日公開 / 読了目安:約25分 / ペッターズ不動産

「真夏にエアコンが止まったのに、管理会社が何日も動いてくれない」「給湯器が壊れて水しか出ないのに、家賃は満額…」。賃貸暮らしで設備が故障したとき、多くの方は修理を待つしかないと思い込んでいます。

結論から言うと、借主に責任のない理由で部屋の一部が使えなくなった場合、家賃は使えない部分の割合に応じて減額されるのが民法611条1項の定めです。2020年4月1日以降に結ばれた契約では、借主が請求しなくても当然に減額されると説明されています(全日本不動産協会の解説による)。

実務の目安として、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)が公表している賃料減額ガイドラインでは、エアコンが作動しない場合は減額割合10%・免責日数3日、電気が使えない場合は40%・2日などと示されています。たとえば家賃8万円でエアコンが14日間使えなかった場合、目安の計算では2,933円の減額です。

この記事では、条文・目安表・計算例・今すぐやるべき手順・減額が認められにくいケース・相談先までを、ペット可賃貸を専門に扱う立場から整理します。なお、本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の事案は弁護士や消費生活センター等にご相談ください。

この記事の要点(30秒まとめ)
  • 民法611条1項:借主に責任のない一部使用不能 → 家賃は使えない部分の割合で減額
  • 2020年4月1日以降の契約:借主の請求なしに当然に減額
  • 日管協ガイドライン:エアコン10%(免責3日)、風呂10%(3日)、トイレ20%(1日)、ガス10%(3日)、水30%(2日)、電気40%(2日)
  • 計算式:月額賃料 × 減額割合 ×(停止日数 − 免責日数)÷ 30日
  • ガイドラインに法的拘束力はなく、あくまで目安
目次
  1. 結論:修理されない間の家賃は「当然に」減額される
  2. 民法611条とは?2020年改正で何が変わったか
  3. 日管協ガイドラインの減額割合と免責日数【一覧表】
  4. 計算例:月額賃料別にいくら減額される?
  5. エアコン・給湯器が壊れたときの「貸主の修繕義務」
  6. 減額が認められにくいケース(借主負担になるとき)
  7. 今すぐやるべき6ステップ:記録・連絡・減額通知
  8. 自分で修理した場合の費用は請求できる?
  9. ペット飼育世帯が特に注意したい設備トラブル
  10. それでも動かないときの相談先と少額訴訟
  11. 入居前にできる予防策:内見チェックと契約書
  12. 解除・引っ越しという選択肢と、貸主側の事情
  13. よくある質問(Q&A)

結論:修理されない間の家賃は「当然に」減額される

まず全体像です。賃貸借契約は、貸主が「住める状態の部屋」を貸し、借主がその対価として家賃を払う契約です。ところが設備が壊れて部屋の一部が使えなくなったのに、家賃だけが満額のままでは、対価のバランスが崩れてしまいます。

民法はこのバランスを取り戻すために、使えなくなった部分の割合に応じて家賃を減額するというルールを置いています(民法611条1項)。エアコン、給湯器、トイレ、風呂、ガスコンロなど、日常生活に欠かせない設備が故障したときにも、この考え方が実務上の出発点になります。

611条
民法の減額規定
10%
エアコン不作動の目安割合
3日
エアコン・風呂・ガスの免責日数
40%
電気が使えない場合の目安割合

ただし、「全部の設備で必ず満額減額される」わけではありません。減額の対象になるのは借主の責めに帰することができない事由で使えなくなった場合です。借主の使い方が原因の故障は対象外になりえます。また、ガイドラインの割合は目安であり、季節や地域、部屋の間取り、設備の設置台数などで調整されます。

この記事では、最初に仕組みを押さえ、次に具体的な割合と計算例、そして実際に動くための手順へと進みます。「結局いくら戻るのか」「どう言えば角が立たないか」まで落とし込みますので、設備トラブルの最中の方も、入居前の予防として読まれる方も、ぜひ最後までご覧ください。

民法611条とは?2020年改正で何が変わったか

民法611条1項は、次のような内容です。賃借物の一部が滅失その他の事由により使用・収益ができなくなった場合に、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、使用・収益ができなくなった部分の割合に応じて減額される、というものです(全日本不動産協会の条文紹介による)。

改正前と改正後の違い

項目改正前改正後(2020年4月1日以降の契約)
対象となる事由一部「滅失」が中心(解釈で拡張)一部が使用・収益できなくなった場合全般
減額の発生借主の減額請求の意思表示が必要一部使用不能の時点から当然に減額
解除(2項)借主に帰責事由があると解除できない帰責事由があっても解除できる(弁護士事務所の解説による)

全日本不動産協会の解説では、改正前は「借主の請求があって初めて減額が生じる」と整理されていたのに対し、改正後は請求がなくても当然に減額される点が大きな変更点だと説明されています。また2020年4月1日より前に結ばれた契約には、原則として改正前の民法が適用される点にも注意が必要です。

「一部使用不能」とは何か

条文にある「一部」の使用・収益ができない、とは、建物全体が住めなくなったわけではないが、部屋の一部機能が使えなくなった状態を指します。雨漏りで一室が使えない、トイレが使えない、風呂が使えない、エアコンが動かない、電気・ガス・水道が止まっている、といった状況が典型です。

全壊などで建物そのものが使えなくなった場合は、賃貸借契約が当然に終了するため、611条1項による減額ではなく別の整理になります(ミニテックの解説による)。

ここがポイント
実務上は、「減額されるはず」と考えるだけでは何も変わりません。管理会社や貸主は、請求がないと減額に気づかないことが多いため、書面やメールで「いつから・何が・どの程度使えないか」を伝えて協議を始めるのが現実的です。具体的な手順は第7章で解説します。

日管協ガイドラインの減額割合と免責日数【一覧表】

では、実際にどのくらい減額されるのでしょうか。民法の条文は「使えない部分の割合に応じて」としか書かれていないため、具体的な割合は事案ごとに判断されます。そこで実務では、日管協が公表している「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」が目安として使われています。

ガイドラインでは、設備をA群とB群に分けています。まずA群(電気・ガス・水)に該当するかを確認し、該当すればA群の割合と免責日数を使います。該当しなければB群を確認する、という順番です(ミニテックの解説による)。

A群:ライフラインが使えない場合

状況賃料減額割合(日割り)免責日数
電気が使えない40%2日
ガスが使えない10%3日
水が使えない30%2日

B群:A群に該当しない場合

状況(設備例)賃料減額割合(日割り)免責日数
トイレが使えない20%1日
風呂が使えない10%3日
エアコンが作動しない10%(※)3日
テレビ等の通信設備が使えない10%3日
雨漏りによる利用制限5%〜50%7日

※エアコンについては、発生した季節・地域、間取りや設置台数などを考慮して、必要に応じて減額割合を調整する、と注記されています。免責日数も、代替物や部品の調達にかかる日数を考慮して調整できるとされています(日管協ガイドラインによる)。

「免責日数」とは?

免責日数とは、減額の計算から除く日数のことです。設備が壊れてすぐ減額を始めるのではなく、貸主側が代替品や部品を調達し、修理や交換を手配するのにかかる最低限の日数を、猶予として差し引くという考え方です(全日本不動産協会の解説では「代替物の準備などにかかる日数」と説明)。

つまり、エアコンが3日以内に直れば減額はゼロ、4日目から減額が発生する計算になります。免責日数が短い設備ほど、早めに対応すべき生活必需性の高い設備と位置づけられていると読めます。トイレ(1日)、電気・水(2日)の免責日数が短いのは、その表れです。

注意
日管協のガイドラインは法的拘束力のない目安です。割合や免責日数を必ずその通りに適用しなければならないわけではなく、状況に応じて調整される点に注意してください。逆に言えば、貸主との協議の「共通言語」として使える点が最大のメリットです。

計算例:月額賃料別にいくら減額される?

計算式は次のとおりです(ミニテックの解説による)。

減額額の計算式
減額額 = 月額賃料 × 減額割合 ×(停止日数 − 免責日数)÷ 30日

ここからは、この式を使った試算例です。いずれも目安の試算であり、実際の減額額は貸主・管理会社との協議や個別の事情で変わります。円未満は切り捨てています。

ケース月額賃料割合停止日数免責減額額の目安
エアコンが作動しない80,000円10%14日3日2,933円
風呂が使えない(給湯器故障の当てはめ例)120,000円10%10日3日2,800円
トイレが使えない90,000円20%5日1日2,400円
電気が使えない70,000円40%4日2日1,866円
水が使えない80,000円30%3日2日800円
ガスが使えない100,000円10%20日3日5,666円

たとえば、家賃8万円でエアコンが14日間作動しなかった場合は、80,000円 × 10% ×(14日 − 3日)÷ 30日 = 約2,933円です。「思ったより少ない」と感じる方が多いと思います。実際、ビジネスジャーナルの記事でも「実際にいくら減額されるかは今後の実務の積み重ねが必要」と紹介されており、金額の大きさだけを期待すると肩透かしになりがちです。

一方で、金額以上に大きな意味があるのは「減額の根拠を示して修理を急がせられる」ことです。ビジネスジャーナルの記事では、弁護士が「賃貸物件を使用できないものとして賃料を下げて払います」と伝える方法を挙げており、管理会社側が顧問弁護士への相談や消費生活センターへの通報を示されると迅速に対応する場合がある、とも紹介されています。

給湯器が壊れた場合の考え方

ガイドラインの表に「給湯器」という行はありません。そのため、給湯器の故障は、お湯が使えず入浴ができない状況なら「風呂が使えない」(10%・免責3日)に、ガスの供給自体が止まっているなら「ガスが使えない」(10%・免責3日)に当てはめて検討する、というのが一つの考え方です。これは一般的な当てはめの一例であり、最終的には貸主・管理会社との協議や専門家の判断によります。

なお、ミニテックの解説では、給湯器やエアコンについて「補修用部品の保有期間は製造打ち切り後10年とされ、それを過ぎると修理より取り替えが必要になる場合がある」と説明されています。古い設備ほど、部品待ちで停止期間が長引きやすい点は覚えておきましょう。

2,933円
家賃8万円・エアコン14日の目安
1,866円
家賃7万円・電気4日停止の目安
30日
日割り計算の基準
5%〜50%
雨漏りの減額割合レンジ
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エアコン・給湯器が壊れたときの「貸主の修繕義務」

減額の話とセットで知っておきたいのが、貸主の修繕義務です。賃貸借では、貸主は借主が部屋を使える状態に保つ義務(民法606条1項)を負います。ただし、借主の責めに帰すべき事由で修繕が必要になった場合は除かれます。

エアコンや給湯器などの設備は、契約上「貸主が設置した設備」であれば原則として貸主が修繕を行う対象です。一方で、契約書に「設備の故障は借主負担」といった特約が入っていることもあるため、まずは契約書の設備欄と特約を確認してください。

軽微な修繕は借主負担になることも

チンタイネットの解説では、軽微な修繕の例として、電球・蛍光灯・ヒューズの交換、畳の取替えや裏返し、障子紙やふすまの張替え、給水栓や排水栓の取替えなどが挙げられています。契約や特約によっては、こうした小規模な修繕は借主が負担する取り決めになっている場合があります。

設備一般的な考え方確認すべき点
エアコン(貸主設置)経年劣化・通常使用による故障は貸主負担が基本契約書の設備欄・特約、リモコン電池など軽微な部分の扱い
給湯器・ガス設備貸主負担が基本(建物の主要設備)製造年、部品の保有期間、点検履歴
電球・ヒューズ軽微な修繕として借主負担の例特約の有無
借主が持ち込んだ設備借主の所有物なので借主が負担貸主の承諾の有無

上の表はあくまで一般的な整理です。契約内容によって異なるため、迷ったら管理会社へ契約書のどの条項に当たるかを確認するのが確実です。

減額が認められにくいケース(借主負担になるとき)

減額が「当然に」認められるのは、借主に責任がない場合です。次のようなケースでは、減額が認められにくい、または借主負担の修繕になる可能性があります。

  • 借主の過失や善管注意義務違反による故障(物をぶつけて壊した、掃除を怠って詰まらせたなど):ガイドラインでも借主の過失による不具合は対象外とされています(ミニテックの解説による)
  • 免責日数以内にすぐ修理が完了した場合:計算上の減額がゼロになる
  • 借主が故障を貸主に連絡せず、長期間放置していた場合:貸主が知らなかった期間の扱いが争点になりやすい
  • 契約書の特約で、特定の設備の故障が借主負担と明記されている場合:特約の有効性は個別に判断される
  • 天災による場合:減額が認められることがある一方、供給元の故意・過失などがあるケースは例外とされる(ミニテックの解説による)
よくある落とし穴
「連絡せず放置」が最もリスクの高いパターンです。故障に気づいた日、貸主・管理会社へ連絡した日、修理が完了した日が、のちの計算の根拠になります。気づいた日に連絡し、記録を残すことが何より大切です。

ペットが原因の故障の場合

ペットが原因で設備が壊れた場合(猫が配線をかじった、犬がエアコンの配管カバーを噛んだなど)は、借主の責めに帰すべき事由と判断される可能性が高く、減額どころか修繕費用の負担を求められることがあります。ペット可物件にお住まいの方は、設備まわりの保護や配線の管理も意識しておきましょう。

今すぐやるべき6ステップ:記録・連絡・減額通知

ここからが実践編です。設備が故障したら、次の6ステップで進めるのが現実的です。

  1. 状況を記録する(当日):故障に気づいた日時、症状、写真・動画を残します。エアコンなら表示されたエラーコード、給湯器ならリモコンの画面を撮影しておくと、原因の切り分けに役立ちます。
  2. 管理会社・貸主へ連絡する(当日〜翌日):電話だけでなく、メールやLINEなど文字で残る形でも連絡します。「いつ・何が・どう使えないか」「修理の希望」を簡潔に書きます。
  3. 修理の見通しを確認する:業者の手配日、部品待ちの有無、完了予定日を聞いて記録します。免責日数(エアコン3日など)を超えそうな場合は、その時点で減額の話題に触れておくと進めやすくなります。
  4. 代替手段の費用を記録する:ビジネスジャーナルの記事でも、猛暑・極寒でエアコンが使えずホテルに泊まるケースや、給湯器の故障で外部の入浴施設を使うケースが紹介されています。領収書は必ず保管しましょう。
  5. 減額を書面で伝える:「民法611条に基づき、使用できない期間の賃料の減額を求めます。目安として日管協ガイドラインの○○%・免責△日を参考にしています」といった形で、冷静に根拠を示します。
  6. 減額後の家賃の支払い方法を貸主と合意する:自己判断で家賃を差し引くと、貸主側から「滞納」と主張されるリスクがあります。翌月の家賃から相殺する、返金を受けるなど、書面で合意してから進めるのが安全です。
連絡の文例
文例(メール・LINE)
「○月○日からエアコンが作動せず、現在も使用できない状態です。修理の手配状況をご教示ください。使用できない期間については、民法611条および日管協の賃料減額ガイドラインを参考に、賃料の減額についてご相談させてください。」

ポイントは、感情的にならず、事実と根拠を淡々と伝えることです。管理会社の担当者も、貸主とのあいだに立っているだけで、すぐに決裁できない立場であることが少なくありません。

自分で修理した場合の費用は請求できる?

「いつまでも直らないので、自分で業者を呼んで直した」という場合、その費用を貸主に請求できるのでしょうか。

チンタイネットの解説によると、賃借人が自分で修繕できるのは、賃借人が賃貸人に修繕の必要を通知したのに、賃貸人が相当の期間内に修繕しない場合、または急迫の事情がある場合とされています(民法607条の2)。つまり、通知もせずに先に業者を呼ぶと、費用の請求が認められにくくなります。

状況自分で修繕してよいかポイント
通知後、相当期間が経っても貸主が動かない可能(民法607条の2)通知の記録(メール・書面)を必ず残す
通知せずにいきなり業者を手配原則として避ける費用請求が認められない可能性
急迫の事情(水漏れが止まらない等)可能被害拡大防止を優先し、事後すぐ連絡

安全のためには、自分で業者を手配する前に貸主・管理会社へ「この日までに修理の見通しが立たない場合、自費で修理を手配し費用を請求します」と書面で予告しておくことをおすすめします。いきなり進めるより、トラブルになりにくくなります。

ペット飼育世帯が特に注意したい設備トラブル

ペットと暮らす家庭は、設備トラブルの影響が人間だけの問題で済みません。特にエアコンと給湯器は、ペットの健康にも直結します。

  • エアコンの停止:真夏の留守中に故障すると、室温が急上昇して犬猫の熱中症リスクが高まります。見守りカメラや温度計で異常を早期に把握できる状態にしておくと安心です。
  • 給湯器の故障:ペットのシャンプーや足拭き、食器洗いにお湯が使えず、衛生管理が難しくなります。
  • 水漏れ・雨漏り:フローリングや壁紙の傷みが進み、退去時の原状回復の議論に発展しやすくなります。早期発見・早期連絡が重要です。
  • 修理業者の立ち入り:業者の入室時、犬が吠える・猫が脱走するなどのリスクがあります。事前にケージへ入れる、リードをつけるなどの準備をしておきましょう。

修理の立ち会いが必要な日は、ペットを別室やケージに移動させておくと、業者・ペット双方の安全につながります。日程調整の際に「ペットがいるので作業中は別室に入れます」と伝えておくとスムーズです。

それでも動かないときの相談先と少額訴訟

「話し合いをしても貸主・管理会社が動かない」「減額について合意できない」という場合は、第三者を頼ることになります。主な窓口は次のとおりです。

  • 消費生活センター:ビジネスジャーナルの記事でも、管理会社が消費生活センターへの通報を示されると迅速に対応することがあると紹介されています。
  • 弁護士への相談:法テラスや各地の弁護士会の相談窓口などを活用できます。
  • 簡易裁判所の少額訴訟:金額が小さい場合の有力な選択肢です。

少額訴訟とは

裁判所の公式ページによると、少額訴訟は60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。最初の期日までに、言い分と証拠をすべて提出する必要があります。また、利用回数は1人につき同じ裁判所で年間10回までに制限されています。

設備故障による減額分は数千円〜数万円程度になることが多く、少額訴訟の手続の手間と釣り合うかは慎重な検討が必要です。それでも、「根拠のある請求をしている」という姿勢を示すこと自体が、交渉を前に進める力になる場合があります。

進め方の順番
まずは書面での協議、次に消費生活センターなどへの相談、最後の手段として少額訴訟、という順番が一般的です。いきなり法的手続に進むよりも、記録を整え、書面で請求することが解決への近道です。

入居前にできる予防策:内見チェックと契約書

最も賢い対策は、そもそも設備トラブルが少なく、対応の早い物件・管理会社を選ぶことです。入居前に次の点を確認しておくと、後悔が減ります。

チェック項目確認方法見るポイント
エアコン・給湯器の製造年本体の銘板、管理会社への確認製造から年数が経つと部品の確保が難しくなる(保有期間は製造打ち切り後10年と説明されることが多い)
設備の故障時の負担区分賃貸借契約書・重要事項説明書の特約欄「借主負担」の範囲が広すぎないか
修繕の連絡窓口管理会社の営業時間・緊急連絡先24時間対応の有無
過去の修理履歴管理会社へ質問同じ設備が頻繁に故障していないか
入居時の動作確認内見・入居時に全設備を実際に動かすエアコンの冷暖房、給湯、換気扇の動作

特に、入居日に全設備を動かして動作確認し、写真や動画を残しておくことをおすすめします。入居前からの故障であれば借主の責任ではないことを示せますし、退去時のトラブル予防にもなります。

ペッターズ不動産では、ペット可物件のご案内の際に、設備の年式や管理会社の対応体制も合わせてご説明しています。「ペットがいるから設備の故障が不安」という方は、お気軽にご相談ください。

解除・引っ越しという選択肢と、貸主側の事情

設備の故障が長引いたとき、「もう我慢できない、引っ越したい」と考える方もいるでしょう。ここでは、減額の先にある選択肢と、貸主・管理会社側の事情を整理します。

民法611条2項:一部使用不能で目的を達成できないとき

MC法律事務所の解説によると、民法611条2項は、賃借物の一部が使用・収益できなくなった場合に、残りの部分だけでは賃借人が賃借をした目的を達成できないときは、賃借人は契約の解除ができると定めています。改正後は、借主に帰責事由があっても解除できる、と整理されています。

たとえば、居住目的で借りた部屋で、トイレも風呂も長期間使えず、修理の見通しも立たない状況が続けば、「残りの部分だけでは住むという目的を達成できない」と評価される可能性があります。ただし、どの程度の状態で解除が認められるかは個別判断です。安易に「解除します」と通告して出て行く前に、弁護士など専門家へ相談することを強くおすすめします。

選択肢メリット注意点
減額を求めて住み続ける引っ越し費用がかからない・生活を継続できる修理が長引くと生活の質が下がる
修理を強く催促する(書面)根本解決につながる期限を決めて記録を残す必要がある
契約解除・退去を検討する不便な状態から抜け出せる原状回復・違約金の扱いなど個別の確認が必要
第三者(消費生活センター等)に相談中立的な助言が得られる解決まで時間がかかることがある

貸主・管理会社の側にも事情がある

借主としては「すぐ直してほしい」のが当然ですが、貸主・管理会社側にも事情があります。給湯器やエアコンは、猛暑・厳冬の時期に修理業者の手配が集中し、部品の取り寄せに日数がかかることがあります。ミニテックの解説が、免責日数を「代替物や部品等の調達日数を考慮して調整する」ものと説明しているのは、こうした実情を踏まえたものと読めます。

だからこそ、借主側が「いつ壊れたか」「いつ連絡したか」を正確に伝え、貸主側が「手配の状況」を共有する、双方向の連絡が重要です。連絡が途絶えると、不信感だけが残り、減額や解除の話に発展しやすくなります。

  • 借主側にできること:故障の記録、早めの連絡、立ち会い日程の調整、代替費用の領収書の保管
  • 貸主・管理会社側にできること:修理の見通しの共有、仮の代替手段の提案(ポータブルエアコンの貸出など)、減額の協議への誠実な対応
  • 双方にとってよいこと:連絡は文字で残す/期限を区切って進捗を確認する
季節要因の扱い
エアコンなど季節性の高い設備については、ガイドラインにも、発生した季節・地域、間取りや設置台数を考慮して割合を調整する旨が注記されています。真夏・真冬の停止は、減額割合や免責日数の考え方に影響しうるため、季節も記録に書き添えるとよいでしょう。

ケースで考える:エアコンが真夏に壊れたら

家賃8万円のペット可マンションで、7月中旬にエアコンが動かなくなったとします(以下は説明のための想定例です)。連絡をしたのは翌日。管理会社から「部品が取り寄せ中で、交換まで2週間かかる」と告げられました。

  1. 連絡日・症状・エラーコードを写真と一緒に記録する
  2. 「室温が高く、犬の体調が心配なので、早めの対応をお願いしたい」とメールで依頼する
  3. 代替としてポータブルクーラーの貸出が可能か、管理会社に確認する
  4. 停止期間が免責3日を超える見込みであることを踏まえ、減額の目安(10%・日割り)を示して協議を申し入れる
  5. 修理完了日を記録し、減額額を貸主と書面で確認する

停止が14日間なら、目安の計算では約2,933円の減額です。この金額そのものよりも、「記録と根拠をそろえた冷静なやり取り」が、貸主側の動きを早める効果を持つことが多い、というのがこの手順のポイントです。

また、同じ設備が繰り返し故障する物件では、設備の老朽化が背景にあることが少なくありません。更新のタイミングで貸主に設備の交換を相談する、あるいは次の住まい選びの際に設備年式を重視するなど、中長期の視点で考えることも大切です。

特にペットと暮らすご家庭では、夏冬の空調の安定供給が命に関わります。築年数の経った物件を選ぶ場合は、エアコンの設置年と交換履歴を契約前に確認しておくと、将来のトラブルを大きく減らせます。

よくある質問(Q&A)

Q. エアコンが壊れたら、貸主は必ず家賃を減額しなければいけませんか?
A. 借主に責任のない故障の場合、民法611条1項により、使えない部分の割合に応じて家賃は減額されると説明されています。ただし割合や免責日数は事案ごとに判断され、日管協ガイドライン(エアコン10%・免責3日)はあくまで目安です。
Q. 2020年4月より前に契約した場合は?
A. 全日本不動産協会の解説によると、2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約に改正民法が適用されるとされています。それ以前の契約は原則として改正前の扱い(減額請求の意思表示が必要)になるため、契約日を確認してください。
Q. 免責日数の間は、何もしてもらえないのですか?
A. 免責日数は、代替物や部品の調達にかかる日数を考慮した、減額計算上の日数です。修理を待つ必要はなく、故障したらすぐ連絡するべきです。連絡が遅れると、停止期間の起点が不明確になります。
Q. 勝手に家賃を減らして振り込んでもよいですか?
A. 自己判断で差し引くと、貸主から滞納と主張されるおそれがあります。減額する金額や方法は、書面やメールで貸主・管理会社と合意してから進めるのが安全です。
Q. 雨漏りの場合の減額割合は?
A. 日管協のガイドラインでは、雨漏りによる利用制限は5%〜50%、免責日数は7日とされています。被害の範囲により幅があるため、写真で被害範囲を記録してください。
Q. ペットが原因で壊れた場合も減額されますか?
A. 借主の責めに帰すべき事由による故障は、減額の対象外になる可能性が高く、修繕費用を請求されることもあります。
Q. 自分で修理業者を呼んでもいいですか?
A. 賃借人が修繕できるのは、貸主に修繕の必要を通知したのに相当期間内に修繕されない場合や、急迫の事情がある場合とされています。通知の記録を残してから進めましょう。

設備の故障は、誰にでも起こりうるトラブルです。大切なのは、慌てず、記録を残し、根拠を示して、冷静に伝えること。この3点を押さえるだけで、貸主・管理会社との話し合いは格段に進みやすくなります。

「壊れたまま放置」の部屋は選ばない。
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