「インターネット無料の物件に入居したのに、夜になると動画すら見られないほど遅い」「テレワーク中にビデオ会議が途切れて仕事にならない」——国土交通省の民間賃貸住宅の相談対応事例集改訂版(令和4年3月)でも、インターネット環境に関するトラブルが近年の賃貸トラブルとして重要性を増していると明記されるほど、ネット環境の問題は増加しています。
この記事では「インターネット対応」と「完備」の違い・速度が遅い本当の原因・費用負担の考え方・今すぐできる改善策まで、専門家の視点で解説します。
① まず知っておきたい「インターネット対応」と「完備」の違い
賃貸物件を探すとき「インターネット対応」と「インターネット完備」という表記を目にします。この2つはまったく異なる意味で、混同すると入居後に後悔するポイントです。
- 建物に光回線の配線工事は済んでいる
- ルーター・プロバイダ契約は自分で行う必要がある
- 毎月のプロバイダ料金(月3,000〜5,000円程度)が発生
- 自分で選んだ回線・プランを使える
- 開通工事に数週間〜1ヶ月かかることがある
- 建物全体で一括契約済みの回線が使える
- 入居後すぐに使えるケースが多い
- インターネット料金が家賃に含まれている
- プロバイダを自分で選べない
- 入居者で回線をシェアするため混雑時に遅くなりやすい
賃貸物件のインターネット設備には「インターネット対応」と「インターネット完備(無料)」の2種類があります。対応は回線が引けるように配管工事済みの状態で、実際に使うには別途プロバイダ契約が必要です。完備は入居者が追加費用なしでそのまま使える状態ですが、複数の入居者で回線を共有するため速度が安定しないことがあります。テレワークなど安定した速度が必要な場合は、完備物件でも個別に光回線を追加契約できるか確認することが重要です。
出典:賃貸のマサキ「インターネットが遅い?賃貸住宅でのWi-Fi環境改善方法」(2026年5月更新)内見時の確認ポイント:「インターネット無料」という表記を見たら、①回線事業者名とプラン②建物の配線方式(光配線方式か否か)③Wi-Fiルーターの有無と機種④夜間の速度の実績——この4点を管理会社に確認することをお勧めします。
② 「インターネット無料・完備」物件でも遅い理由5つ
「インターネット完備」なのに遅い——そのほとんどは以下のいずれかが原因です。
入居者全員で回線をシェアしている(混雑)
インターネット完備物件は建物全体で1本の回線を入居者全員でシェアしています。20〜24時のゴールデンタイムに使用が集中すると回線がパンクし、極端に速度が低下します。朝方・日中に比べて夜間だけ遅い場合はこれが原因のケースがほとんどです。(出典:オウチーノニュース)
Wi-Fiルーターが古い規格のもの
インターネット完備物件では、コストを抑えるために古い規格のWi-Fiルーター(Wi-Fi 4・Wi-Fi 5の初期モデルなど)が設置されていることがあります。回線自体は速くても、ルーターがボトルネックになって速度が出ないケースが多くあります。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応かどうかが一つの目安です。(出典:stlink.jp 2025年11月)
ルーターの設置場所が悪い(電波が届きにくい)
ルーターが収納の奥・靴箱の中・家具の後ろなど電波が届きにくい場所に設置されていることがあります。また鉄筋コンクリート造のマンションでは、コンクリートの壁が電波を遮断して部屋の隅まで電波が届かないことがあります。(出典:アイネット・賃貸のマサキ 2026年5月)
建物の配線方式が古い(VDSL方式)
光回線でも建物への引き込み方式によって速度が大きく変わります。光ファイバーが各部屋まで直接届く「光配線方式」は高速ですが、既存の電話線を流用する「VDSL方式」は最大100Mbpsに制限されます。古いマンションではVDSL方式が多く、これが速度低下の原因になっていることがあります。
機器の再起動不足・ファームウェア未更新
Wi-FiルーターやONU(光回線終端装置)は長時間稼働し続けると動作が不安定になることがあります。また最新バージョンにアップデートされていないファームウェアが速度低下を招くケースもあります。まず試すべき最も簡単な方法が「再起動」です。(出典:賃貸のマサキ 2026年5月)
③ インターネット関連の費用負担の考え方
インターネット設備に問題が生じたとき、費用を誰が負担するかは状況によって異なります。
| 状況 | 費用負担 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| インターネット完備物件の共用設備(ルーター・ONU)が故障 | 貸主(大家)負担 | 民法第606条の修繕義務。管理会社に修繕依頼を |
| インターネット完備物件の回線速度が著しく遅い(契約帯域と乖離) | 貸主への改善要求が可能 | 賃料減額または改善交渉の根拠になり得る |
| 借主が自分で契約した回線の機器故障 | 借主負担 | 借主が契約した設備は借主責任 |
| インターネット対応物件で自分が契約した光回線の工事費 | 借主負担 | 開通工事費・プロバイダ料金は借主負担 |
| セキュリティ目的でのルーター交換(インターネット完備物件) | 事前に管理会社へ確認要 | 無断交換は問題になる場合がある |
2020年の民法改正(第611条)では「賃借物の一部が使用できなくなった場合、当然に賃料は減額される」と規定されています。インターネット完備物件で回線が完全に使用不能になった場合は、設備故障と同様に賃料減額の対象になり得ます。ただし「遅い」という状況での減額交渉は、完全使用不能より難しく、個別の協議が必要です。まずは管理会社への改善要求から始めることが現実的です。
出典:民法第606条・第611条(修繕義務・賃料減額)注意:インターネット完備物件で、入居者がオーナー側の許可なく独自に別の光回線を引きたい場合、オーナーから許可をもらえないケースが多いです。希望する場合は必ず管理会社に相談してから進めてください。(出典:オウチーノニュース)
④ 今すぐできる速度改善策6つ
まずルーター・ONUを再起動する
速度低下・接続不安定の多くは再起動で改善します。ルーターとONU(光回線終端装置)の電源を切り、30秒待ってから再起動。これだけで解決するケースが非常に多いです。月に1〜2回の定期再起動を習慣にすることをお勧めします。(出典:賃貸のマサキ 2026年5月)
ルーターの設置場所を見直す
ルーターは部屋の中央・高い位置・障害物がない場所に置くことで電波が届きやすくなります。収納の中・テレビ台の裏・床置きは避けましょう。RC造マンションでは壁を1枚挟むだけで電波が半減することがあります。(出典:賃貸のマサキ 2026年5月)
Wi-Fi中継器を設置する
部屋が広い・ルーターが遠い・壁が多いなどの場合、Wi-Fi中継器(リピーター)を追加設置することで電波を増幅できます。3,000〜8,000円程度で購入可能で、賃貸でも工事なしで設置できます。ルーターと中継器の中間の場所に置くのが効果的です。
有線LANで接続する
テレワーク・ビデオ会議など安定した接続が必要な場合は、Wi-Fiではなく有線LANケーブルで直接接続するのが最も安定しています。LANポートがある場所であれば工事不要。ケーブルは1,000〜2,000円程度で購入できます。
利用時間帯をずらす(ピーク時を避ける)
インターネット完備物件で夜間だけ遅い場合、根本的な解決は管理会社への相談が必要ですが、短期的には20〜24時のピーク時を避けて使用することで体感速度が改善します。動画のダウンロードや大容量ファイルの転送は夜中や早朝に行うと快適です。(出典:Daigasコラム)
管理会社に回線改善・ルーター交換を要求する
インターネット完備物件で慢性的に速度が遅い場合、管理会社に改善要求をする権利があります。「テレワークに支障が出ている」「ルーターが古すぎて速度が出ない」などの具体的な状況を書面(メール)で伝えましょう。改善されない場合は賃料交渉・解約の検討も選択肢です。
⑤ 「インターネット無料」物件の意外な注意点
インターネット無料物件にはメリットだけでなく、見落としやすい注意点もあります。
インターネット無料賃貸物件のWi-Fiを使うタイプの物件では、あらかじめWi-Fi機器にSSIDとパスワードが記載されています。この情報は内見に訪れた人も確認できるため、パスワードを変更せずそのまま利用することは危険です。回線の乗っ取り・通信傍受・個人情報の流出などのリスクがあるため、入居後すぐにパスワードを変更することが推奨されています。
出典:Daigasコラム「インターネット無料賃貸物件は速度が遅い?トラブル回避方法を紹介」(2025年10月)- Wi-Fiルーターが備え付けられていない物件もある(別途購入:5,000〜15,000円程度が必要)
- パスワードは入居後すぐに変更する(セキュリティリスク防止)
- 個別の光回線を契約したくても、オーナーに許可をもらえないケースが多い
- 退去時にルーターのパスワードを元に戻す必要がある場合がある
- 回線が遅くても「無料」であることを理由に改善されないケースがある
⑥ 物件選びの際のインターネット環境確認チェックリスト
入居前にこれだけ確認しておけば、ネット環境での後悔を大幅に減らせます。
- 「インターネット対応」か「完備(無料)」かを確認する
- 完備の場合:回線事業者名とプラン(フレッツ光・NURO光など)を確認
- 完備の場合:建物の配線方式(光配線方式か・VDSL方式かを管理会社に質問)
- Wi-Fiルーターの有無と機種(Wi-Fi 6対応かを確認)を確認
- ルーターの設置場所が電波の届きやすい場所か内見時に確認
- 夜間の速度実績を管理会社に確認する(または入居者レビューを調べる)
- 個別に光回線を追加契約できるか確認する(テレワーカー必須)
- 対応の場合:光回線の開通工事の許可が下りるか・工事可能な業者を確認
ネット上に掲載されている情報から漏れていることもあるため、実際に内見時に確認することが重要です。不動産会社の担当者を通じて管理会社や大家さんに「光配線方式ですか?」「Wi-Fiルーターの規格は?」と具体的に質問することが最も確実です。入居後のネットトラブルを防ぐためにも、聞きにくいと感じても必ず確認しましょう。
出典:stlink.jp「インターネット無料賃貸の速度は本当に遅い?後悔しない物件の選び方」(2025年11月)
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⑦ よくある質問(Q&A)
⑧ まとめ
この記事のポイント
- 「インターネット対応」は自分でプロバイダ契約が必要。「完備・無料」は入居者で回線をシェア(混雑しやすい)
- 速度が遅い主な原因:①入居者の混雑②古いWi-Fiルーター③ルーターの設置場所④VDSL配線方式⑤機器の再起動不足(出典:stlink.jp・賃貸のマサキ・オウチーノニュース)
- インターネット完備物件の共用設備(ルーター・ONU)故障は貸主負担が原則(民法第606条)
- 完全使用不能の場合は民法第611条に基づく賃料減額交渉の根拠になり得る
- 今すぐできる改善策:①再起動②ルーター設置場所の見直し③Wi-Fi中継器設置④有線LAN接続⑤利用時間帯をずらす⑥管理会社への改善要求
- 入居前の確認チェック:配線方式・ルーター規格・夜間速度実績・個別回線の追加可否
- テレワーカーは「インターネット対応」物件で個別に光回線を契約する方が安定する場合もある
「インターネット無料」という言葉に安心して入居したのに、実際は遅すぎて使い物にならない——このトラブルは事前の確認で大部分を防ぐことができます。内見時にネット環境についても必ず確認する習慣をつけることが、快適な賃貸生活への近道です。
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