
「上の階の足音がうるさい」賃貸で泣き寝入りしないための手順――慰謝料30万円の判決と「50〜65dB」の目安【完全版】
結論から言うと、上階の足音トラブルで大切なのは「音の大きさ」だけでなく「いつ・どれくらい・何回」を記録した上で、まず管理会社を通して穏便に伝えることです。直接のクレームは関係をこじらせやすく、法的な請求も「受忍限度を超えた」と立証できなければ通りません。
「毎晩のように上から足音がドスドス響く」「夜中に走り回る音で眠れない」。賃貸暮らしで一度は経験する、あるいは経験しそうになるのが上階・隣室の生活音トラブルです。ペットと暮らしている方なら、「自分の犬や猫の足音が下の階に響いていないか」という逆の心配もあるかもしれません。
この記事では、公的な統計と、実際の裁判例、住宅の性能表示制度、自治体のガイドラインなどをもとに、「どこからが我慢の限界なのか」「何をどの順番で行えばいいのか」を、できるだけ具体的な数字つきでお伝えします。
- 騒音苦情は年間1万8千件超──足音トラブルは珍しくない
- 「うるさい」だけでは通らない?法的な基準「受忍限度」
- 数字で見る「うるさい」の目安:55dB・45dB・50〜65dB
- 建物側の性能:LL・LH等級と「聞こえ方」の関係
- 判例に学ぶ:東京地裁で慰謝料30万円が認められた足音トラブル
- やってはいけない対応:いきなり直接クレームは逆効果
- 正しい5ステップ:記録→管理会社→書面→行政→専門家
- 記録の取り方:日時・音の種類・dBをこの形でメモ
- 管理会社に伝えるときの文例とNGな言い方
- 限界なら引越しも選択肢:違約金・引越代を請求できる?
- 自分が「うるさい側」にならないための足音対策
- よくある質問(Q&A)
- まとめ:我慢の前に、記録と相談を
騒音苦情は年間1万8千件超──足音トラブルは珍しくない
まず、「足音がうるさい」という悩みがどれだけ身近なのかを統計で確認しておきましょう。総務省の「令和6年度公害苦情調査結果」によると、令和6年度に全国の自治体が受け付けた騒音の苦情は18,811件で、典型7公害全体に占める割合は39.5%でした。大気汚染や水質汚濁など他の公害を押さえて、苦情の約4割が騒音に関するものです。
同じく総務省の過去の調査では、騒音の苦情は「最近20年間はほぼ横ばい」と整理されており、令和3年度は18,461件、平成28年度は15,782件、平成23年度は15,673件でした。また令和2年度には、在宅勤務の増加で昼間に音に気付く機会が増えたことから、騒音の苦情が前年度比で28.1%増えたとされています。
ここで注意したいのは、この統計は工場や建設作業なども含めた「公害としての騒音」の数字であり、マンション・アパートの足音トラブルだけを数えたものではないという点です。ただ、在宅時間が長くなるほど生活音が気になりやすくなることは、数字からも読み取れます。
「うるさい」だけでは通らない?法的な基準「受忍限度」
生活音が法的に「違法」と評価されるのは、社会生活上がまんすべき限度、つまり受忍限度を超えたと客観的に認められる場合に限られます。
弁護士ドットコムの解説では、マンションの騒音が違法となるのは「受忍限度を超えると客観的に認められる場合に限られ」、しかもその立証責任は被害を訴える側にあるとされています。つまり「自分はうるさいと感じる」だけでは足りず、客観的な根拠が必要になります。
受忍限度の判断で考慮される要素
同じく弁護士ドットコムの解説によると、受忍限度は「加害行為の有用性、妨害予防の簡便性、被害の程度及びその存続期間、その他の双方の主観的及び客観的な諸般の事情」を踏まえて判断されます。かみ砕いて言えば、次のような要素を総合的に見るということです。
| 考慮される要素 | 足音トラブルでの具体例 |
|---|---|
| 音の大きさ・頻度 | 何dBの音が、週に何回、毎日か、たまにか |
| 時間帯・継続時間 | 深夜・早朝か、昼間か。数分で終わるのか、長時間続くのか |
| 被害の程度と期間 | 睡眠が妨げられている、通院している、数か月以上続いている等 |
| 防止のしやすさ | マットを敷く、走らせない等、簡単な対策で防げるのにしていないか |
| 当事者の対応姿勢 | 注意を受けた後に改善の努力をしたか、開き直ったか |
たとえば「引っ越してきた直後の1か月だけ、子どもの足音が時々聞こえた」のと、「ほぼ毎日、夜まで長時間続き、注意しても改善されない」のとでは、評価がまったく変わります。受忍限度は、単一の数値で線引きされるものではなく、こうした事情を総合して決まる、という点が最初のポイントです。
「違法」と「契約違反」は別の話
受忍限度を超えた騒音は、民法上の不法行為(民法709条)として損害賠償の問題になり得ます。一方で、賃貸借契約には多くの場合「他の入居者に迷惑を及ぼす行為の禁止」といった条項があり、管理会社や大家さんはこちらを根拠に注意喚起を行います。つまり、裁判で勝てるほどの騒音でなくても、「契約上の迷惑行為にあたる可能性がある」として管理会社が動いてくれる余地があります。法的な請求のハードルが高いからこそ、まずは管理会社を通した解決が現実的です。
逆に言えば、管理会社に相談した時点で「訴える」「慰謝料を払え」といった強い言葉を使う必要はありません。「睡眠に影響が出ているので、注意喚起をお願いしたい」という穏やかな依頼のほうが、管理会社も動きやすく、結果として早く改善されるケースが多いのが実情です。
数字で見る「うるさい」の目安:55dB・45dB・50〜65dB
法的な線引きに「ここから違法」という固定のdBはありませんが、判断材料になる「目安」の数字はいくつかあります。
環境基準:住居地域で昼55dB・夜45dB
千葉市など自治体が公表している「騒音に係る環境基準」では、住居系の一般地域(A類型・B類型)で、昼間(6時〜22時)は55dB以下、夜間(22時〜翌6時)は45dB以下と定められています。東京都の資料でも、主として住居用地域の基準値は昼間55dB以下、夜間45dB以下で、寝室の夜間騒音は40dB程度に抑えられていることが好ましいとされています。
音の大きさのイメージ
ノムコムの解説では、70dB以上になると「騒音と感じる人が多い」とされています。夜間の寝室の目標である40dB程度と比べると、その差の大きさがわかります。
なお、スマートフォンの騒音計アプリは、機種やマイクの特性によって数dBの誤差が出ることがあります。後述する記録では、「正確な値」よりも「いつ・どの程度の大きさで・どれくらい続いたか」の傾向を残すことが目的です。必要なら、お住まいの区市町村の環境担当窓口で騒音計を貸し出している場合もあるので、確認してみましょう(東京都の資料では、区市町村の環境公害関係の部署が貸し出しを行っているとされています)。
時間帯によって「うるささ」の感じ方は変わる
同じ音量でも、昼間と夜間では感じ方が大きく変わります。環境基準で夜間が昼間より10dB低く設定されているのは、就寝中や静かな夜は小さな音でも気になりやすく、睡眠への影響が大きいためです。足音トラブルの相談が夜間に集中するのも、このためだと考えられます。記録の際は、昼間の音よりも、夜間(22時以降)と早朝の音を特に丁寧に残しておくと、状況の深刻さが伝わりやすくなります。
また、足音のように「ドン」と響く低い音(重量床衝撃音)は、壁や天井を伝わって、実際の音量以上に不快に感じられることがあります。dBの値だけでなく、「どんな種類の音か」も合わせて記録しましょう。
建物側の性能:LL・LH等級と「聞こえ方」の関係
足音の聞こえ方は、上の人の歩き方だけでなく、建物の床の遮音性能で大きく変わります。
国土交通省の住宅性能表示制度では、床の衝撃音を「重量床衝撃音(子どもが飛び跳ねる・走る音など)」と「軽量床衝撃音(物を落とす音・スリッパ歩行など)」に分け、それぞれ等級で評価しています。数値は小さいほど遮音性能が高いことを示します。
重量床衝撃音(Li,r,H)の等級と聞こえ方
| 等級 | 目安の値 | 備考 |
|---|---|---|
| 等級5 | Li,r,H-50相当以上 | 特に優れた性能 |
| 等級4 | Li,r,H-55相当以上 | 優れた性能 |
| 等級3 | Li,r,H-60相当以上 | 基本的な性能 |
| 等級2 | Li,r,H-65相当以上 | 最低限の水準 |
| 等級1 | 上記以外 | ― |
また、室内の暗騒音が30dBA程度と想定した場合の生活実感として、重量床衝撃音のLi,r,H値が50なら「小さく聞こえる」、55なら「聞こえる」、60なら「よく聞こえる」、65なら「かなり気になる」、70なら「うるさい」とされています。軽量床衝撃音(Li,r,L)でも、45で「小さく聞こえる」、50で「聞こえる」、55で「よく聞こえる」、60で「かなり気になる」、65で「うるさい」という整理です。
東京都の資料では、床材の遮音性能を表すL等級について、L-40(特級)なら「ほとんど聞こえない」、L-55(2級)なら「生活行為がある程度わかる」状態とされています。ノムコムの解説では、LH45が「子どもが飛び跳ねる音が聞こえても気にならないレベル」と紹介されています。
判例に学ぶ:東京地裁で慰謝料30万円が認められた足音トラブル
実際の裁判では、足音が「受忍限度を超える」と判断されることはあるのでしょうか。代表的な例として、東京地方裁判所の平成19年10月3日判決(平成17年(ワ)第24743号)があります。
マンション管理組合向けの資料(マンション管理業協会の解説)によると、この事案は階上の住人の子どもの足音が問題になったものです。裁判所は、音の大きさが約50〜65dBで、ほぼ毎日、午後7時以降の夜間にも及び、しかも長時間連続して発生していたことなどを重視しました。
判決が重視した「対応姿勢」
この判決で興味深いのは、音量だけでなく、階上の住人の対応が受忍限度の判断に影響したと整理されている点です。資料によれば、階上の住人は床にマットを敷いたものの「その効果は明らかではなく」、「これ以上静かにすることはできない」と乱暴な口調で突っぱねた、と指摘されています。管理組合が複数回の呼びかけの書面配布や掲示板への掲載などを行っていたことも判断材料になりました。
つまり、「音が大きかったから」だけでなく、「改善の努力をしなかった、あるいは誠実に対応しなかった」ことが、違法と評価される方向に働いたということです。これは、被害を受けている側にとって、「管理会社を通じて何度も改善を求めた記録」そのものが重要な証拠になることも意味します。
この判決から読み取れる3つの教訓
第一に、「毎日・夜間・長時間」という3つの条件が重なると、受忍限度を超えたと評価されやすくなるという点です。日中にときどき聞こえる程度の足音と、夜の就寝時間帯まで続く足音とでは、同じ音量でも重みが違います。
第二に、被害を受けている側は、管理会社や管理組合を通じた働きかけの経緯を残しておくことが有利に働くという点です。判決でも、管理組合による呼びかけが行われたという経緯が事実として整理されています。「何度も改善を求めたのに変わらなかった」という流れを、記録で示せることが大切です。
第三に、請求した金額(慰謝料200万円、弁護士費用40万円)に対し、実際に認められた金額(慰謝料30万円、弁護士費用6万円)はかなり小さかったという点です。足音トラブルで法的手続きに踏み切っても、期待どおりの高額な賠償が得られるとは限りません。だからこそ、裁判まで行く前に、管理会社を通じた話し合いで解決するメリットが大きいのです。
やってはいけない対応:いきなり直接クレームは逆効果
「うるさい!」と上階に怒鳴り込みたくなる気持ちはわかりますが、直接のクレームは最も避けたい行動の一つです。
リブルの解説記事では、感情的になると冷静な話し合いができず、かえって関係が悪化してしまう可能性があるため、直接苦情を言うのは避けるよう勧めています。中立的な第三者である管理会社や大家さんを通して伝えることで、感情的な衝突を避け、穏便な解決を図りやすくなる、という考え方です。
直接クレームで起きがちなこと
| 行動 | 起きがちなリスク |
|---|---|
| 夜中に直接訪問して苦情を言う | 相手が身構えて対立が深まる。逆に「迷惑行為」として通報される可能性もある |
| ドンドンと天井・壁を叩き返す | 自分も騒音の加害者になり、証拠としても不利になる |
| 張り紙・匿名の手紙を相手のポストに入れる | 誰が書いたか推測されやすく、トラブルが拡大する場合がある |
| SNSや口コミで晒す | 名誉毀損などの別の法的問題を招くおそれがある |
また、相手が「自分の足音が原因だと気付いていない」ケースも少なくありません。子どもやペットは大人ほど注意が行き届かず、床材が薄いと、本人は普通に歩いているつもりでも下の階では大きく響きます。まずは第三者を介して、事実を冷静に伝えるのが近道です。
よくある3つのパターン(典型例)
以下は、賃貸の現場でよく聞く典型的なパターンを整理したもので、特定の事例ではありません。
| パターン | 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|---|
| ① 夜間の走り回り | 夜21〜23時ごろに、子どもやペットが走る音が続く | 記録を数週間取り、管理会社に「時間帯」を明記して相談する |
| ② 早朝の足音・ドア音 | 朝5〜6時台に、出勤準備の足音やドアの開閉音が響く | 生活リズムの違いが原因のことが多い。「早朝の配慮」をお願いする書面で十分なことも |
| ③ 引っ越し直後から継続 | 入居して間もなく、毎日のように足音が気になる | 建物の遮音性能が低い可能性。相手の問題というより構造的な問題として管理会社に伝える |
特に③は、上階の人が特別に騒がしいわけではなく、建物の構造自体の遮音性能が低いために起きていることがあります。この場合、相手に改善を求めても限界があり、「構造的な問題」として貸主や管理会社に相談したり、最終的には転居を含めて検討することになる場合があります。
正しい5ステップ:記録→管理会社→書面→行政→専門家
上階の足音への対処は、次の5ステップで進めるのが基本です。いきなり強い手段に出ず、段階を踏むことが、結果的に早く解決する近道になります。
ステップ1:騒音の記録を取る(最低でも2〜4週間)
次の章で詳しく解説しますが、日時・音の種類・継続時間・音の大きさを記録します。リブルの解説でも、スマートフォンの録音や無料の騒音計アプリを活用して、これらをメモしておくことが勧められています。
ステップ2:管理会社・大家さんに相談する
賃貸物件なら、管理会社(または大家さん)が窓口です。電話よりも、メールやアプリなど記録が残る方法で伝えましょう。「上の階の方を責めてほしい」ではなく、「状況を共有して、注意喚起をお願いしたい」というトーンが大切です。
ステップ3:書面での注意喚起を依頼する
口頭で改善されない場合は、管理会社から入居者全体、または該当の部屋に向けて書面で注意喚起してもらいます。前述の東京地裁の事案でも、管理組合による呼びかけの書面配布や掲示が行われ、その経緯が判断材料になりました。書面やメールのやり取りは、後で必ず役に立ちます。
ステップ4:行政の窓口に相談する
お住まいの区市町村の環境担当窓口では、騒音計の貸し出しを行っている場合があります(東京都の資料による)。貸し出しの騒音計で測定した記録があると、客観性が高まります。事業活動による騒音ではない近隣の生活音は、行政が直接の指導を行いにくい場合もありますが、相談窓口や調停制度の紹介を受けられることがあります。
ステップ5:弁護士・調停などの専門家に相談する
管理会社を通じても改善されず、睡眠障害など実害が出ている場合は、弁護士への相談を検討します。弁護士ドットコムの解説によると、被害者は不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができ、賃貸借契約に基づいて賃貸人に支払った早期解約違約金や引越代、慰謝料などを加害者に請求できるとされています。ただし、受忍限度を超えたことの立証が必要です。
記録の取り方:日時・音の種類・dBをこの形でメモ
記録は、ステップ2〜5のすべてで使える最強の武器です。「何となくうるさい」を、「客観的な事実」に変えるための書き方を紹介します。
リブルの解説では、記録すべき項目として「騒音が発生した日時」「音の種類」「騒音が続いた時間」「音の大きさ」が挙げられています。これに「自分への影響」と「対応」を加えた下記のようなフォーマットがおすすめです。
| 日付・時間帯 | 音の種類 | 継続時間 | 音の大きさ(dB目安) | 自分への影響・対応 |
|---|---|---|---|---|
| 10/1(水) 22:40〜23:10 | ドスドスと走る音 | 約30分 | 最大58dB | 入眠できず。録音あり |
| 10/2(木) 6:05〜6:15 | ドアの開閉・足音 | 約10分 | 最大52dB | 起床。メモのみ |
| 10/4(土) 21:00〜22:30 | 連続した足音・ジャンプ音 | 約90分 | 最大63dB | 睡眠不足。管理会社へメール |
記録のコツ
第一に、「同じ条件」で測ることです。同じ位置(寝室のベッド付近など)で、同じアプリを使って測定します。第二に、録音は日時が残る形で保存し、ファイル名に日付を入れます。第三に、感情的な表現は書かず、「30分間断続的に足音が聞こえた」のように、事実だけを淡々と記録します。こうした記録は、管理会社が上階の入居者へ注意する際の説得力を高め、万が一の法的手続きでも重要な資料になります。
録音・動画を残すときの注意点
音を録音する場合は、自分の部屋の中で聞こえる音を記録するにとどめましょう。上階の部屋の前に行って録音するなど、相手のプライバシーに踏み込む行為は、かえってトラブルを大きくします。また、録音した音を相手にいきなり聞かせたり、SNSに投稿したりするのは避けてください。録音は、管理会社や弁護士に状況を説明するための資料と位置づけるのが基本です。
記録はスマートフォンのメモアプリや表計算ソフトにまとめておくと、あとで管理会社にメールで共有しやすくなります。紙のノートに残す場合も、日付の記載漏れがないようにし、書き換えや後付けをしないことが信頼性を保つポイントです。
管理会社に伝えるときの文例とNGな言い方
管理会社への連絡は、「事実」「影響」「お願い」の3点セットで簡潔に伝えると、動いてもらいやすくなります。
メール・問い合わせフォームの文例
ここ数週間、上階から、夜22時〜23時ごろに走るような足音やドスドスという音が続いており、睡眠に支障が出ております(直近2週間で10日ほど、記録を取っております)。
直接お話しするのは角が立つかと思い、まずは管理会社様にご相談させていただきました。
お手数ですが、上階の入居者様へ、夜間の足音に配慮いただくよう、お声がけまたは書面での注意喚起をお願いできないでしょうか。
必要であれば、記録(日時・音の種類・録音)を共有いたします。何卒よろしくお願いいたします。
NGな言い方・OKな言い方
| NGな言い方 | OKな言い方 |
|---|---|
| 「上の人がうるさすぎる。何とかしてください」 | 「夜22時以降に足音が続き、睡眠に影響が出ています」 |
| 「非常識な人だ。追い出してほしい」 | 「配慮をお願いする書面を出していただけますか」 |
| 「いつまでに解決してくれるんですか」 | 「状況が変わらない場合、次にどのような対応が可能でしょうか」 |
管理会社は、上階の入居者に「誰が苦情を言ったか」を明かさずに注意喚起をしてくれるのが一般的です。匿名で伝えてほしい場合は、その旨を最初に書いておきましょう。
限界なら引越しも選択肢:違約金・引越代を請求できる?
対策をしても状況が変わらず、心身に影響が出ているなら、引越しは「逃げ」ではなく正当な選択肢です。
弁護士ドットコムの解説では、被害者が賃貸借契約の規定に基づいて賃貸人に支払った早期解約違約金や、引越代、慰謝料などを、加害者(騒音を出した側)に請求できるとされています。ただし、これは受忍限度を超えた違法な騒音であることを立証できた場合の話です。
引越し前にやっておきたいこと
まず、賃貸借契約書で解約予告期間と違約金の有無を確認します。契約期間内の解約で違約金が発生する契約もあるため、引越しを決める前に、条件を把握しておくことが重要です。次に、これまでの記録・管理会社とのやり取りをすべて保存します。請求を検討するなら、引越代の見積書や領収書も残しておきましょう。
次の物件で同じ失敗をしないために
騒音トラブルを避けるには、構造と階数、周辺環境が重要です。RC造や重量鉄骨造は、木造や軽量鉄骨造より一般に床や壁の遮音に有利とされています。最上階や角部屋を選ぶと、上階や隣室の音のリスクを減らせます。内見では、上階や隣室の気配が聞こえないか、昼と夜で周辺環境が変わらないかを確認しましょう。
また、ペットと暮らす物件では、「ペット可」の物件ほど入居者どうしの生活音への理解がある一方、ペットの鳴き声や足音の問題が起きやすい面もあります。ペッターズ不動産では、構造や間取り、周辺環境の情報を踏まえて、音の面でも後悔しにくい物件をご提案しています。
契約前にできる「静かさ」のチェック
内見の際は、できれば昼と夜の両方、難しければ夕方以降の時間帯を選んで見学すると、周辺の生活音が把握しやすくなります。部屋の中で静かにして、上階や隣室、廊下、外階段の音が聞こえないかを確認しましょう。窓を閉めた状態で、外の道路や共用部の音がどの程度入ってくるかも大切なチェック項目です。管理会社や仲介担当者には、「過去に騒音の相談はあったか」「上階・隣室の入居者の属性(ファミリーか単身か、ペットの有無)」を質問しておくと、入居後のミスマッチを減らせます。
自分が「うるさい側」にならないための足音対策
ここまで被害者側の視点で書いてきましたが、ペットや小さなお子さんがいるご家庭は、「うるさい側」と言われないための予防も大切です。
東京都の資料では、足音などの生活騒音への対処として、クッションマットや厚手カーペットの敷設、ドアクローザーの取付けが挙げられています。また、「不必要に大きな声や音を出さないよう心掛ける」こと、早朝や夜遅い時間の水の使用を控えることも勧められています。
今日からできる足音対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 厚手のラグ・防音マットを敷く | 走り回る場所(リビング・廊下)に重点的に敷く。ただし前述の判決のように「効果が明らかでない」対策だけで済ませないこと |
| ドアクローザー・ドアストッパー | ドアの開閉音を和らげる |
| 夜間の「走る・跳ぶ」を避ける | ペットの運動は昼間や屋外で。夜は静かな遊びに切り替える |
| 苦情が来たら、早めに誠実に対応する | 判例では、対応姿勢が受忍限度の判断に影響した。「できる限りの対策をした」記録を残す |
もし管理会社から「下の階から足音の相談がありました」と連絡が来たら、感情的にならず、まず事実を確認して、できる対策から実行しましょう。前述のとおり、誠実な対応そのものが、トラブルを長期化させない最大のポイントです。
賃貸でペットと暮らす方へ:音の面で気をつけたい3つのポイント
ペット可の賃貸でも、足音・鳴き声・爪の音などは、近隣トラブルの代表的な原因です。第一に、入居前に「飼育細則」で音に関する決まりを確認すること。第二に、愛犬・愛猫が走りやすい場所(フローリングの廊下やリビング)に、あらかじめ防音マットやラグを敷いておくこと。第三に、苦情があった場合に備えて、「実施した対策」を日付つきで記録しておくことです。これは、前述の判決が示すとおり、誠実な対応の記録そのものが、トラブルを大きくしない保険になるからです。
また、在宅勤務などで日中も家にいる時間が長い家庭ほど、日中の足音やペットの動きが近隣に伝わりやすくなります。ご自身の生活時間帯と、階下・隣室の方の生活時間帯がずれていないか、ときどき意識してみてください。管理会社を通して「何かお気づきの点があれば遠慮なくお知らせください」と伝えておくことも、予防策として有効です。
よくある質問(Q&A)
まとめ:我慢の前に、記録と相談を
上階の足音トラブルは、「我慢し続ける」ことも、「怒鳴り込む」ことも、どちらも解決から遠ざかる選択です。この記事の要点を整理します。
音の悩みは、住まい選びの段階で防げる部分も多くあります。次のお部屋探しで「静かな暮らし」を重視したい方、ペットと暮らしながら周囲にも気を配れる物件を探したい方は、ぜひペッターズ不動産にご相談ください。
- 総務省「令和6年度公害苦情調査結果」(https://www.soumu.go.jp/main_content/001057206.pdf)
- 総務省「公害苦情調査結果の概要」(平成23年度〜令和3年度の騒音苦情件数の推移)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000908345.pdf)
- 千葉市「騒音に係る環境基準」(https://www.city.chiba.jp/kankyo/kankyohozen/kankyokisei/sound_kankyokijyun.html)
- 東京都保健医療局「生活騒音(集合住宅)に関する資料」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/web_bunya9)
- 国土交通省「住宅性能表示制度 床衝撃音に関する資料」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/point/2_8.pdf)
- 一般社団法人マンション管理業協会「お役立ち情報 vol.10」(東京地裁平成19年10月3日判決の解説)(https://www.kanrikyo.or.jp/oyakudachi/pdf/vol10_03.pdf)
- 弁護士ドットコムニュース「マンションの騒音と法的対処」(https://www.bengo4.com/c_18/n_17600/)
- 弁護士ドットコム「賃貸マンションの騒音トラブルと責任」(https://www.bengo4.com/c_1012/c_1110/n_132/)
- LIVABLE「上の階がうるさい時の対処法」(https://www.livable.co.jp/l-note/?p=48415)
- ノムコム「マンションの騒音と遮音等級」(https://www.nomu.com/mansion/library/trend/special/kato07.html)
