
犬の鳴き声で苦情が来た!ペット可賃貸で「契約解除」になる前にやるべき3ステップと、慰謝料25万円が認められた裁判例の分かれ目【2026年最新】
管理会社から「お隣から犬の鳴き声について苦情が入っています」と連絡が来たら、誰でも血の気が引くものです。「退去を求められるのでは」「慰謝料を請求されるのでは」と不安になる方も多いでしょう。
結論から言うと、苦情を1回受けただけで、直ちに契約解除になるわけではありません。ただし、苦情を無視したり、改善の姿勢を見せなかったりすると、貸主との信頼関係が崩れ、更新拒絶や解除、さらには損害賠償の話に進むおそれがあります。裁判例でも、分かれ目になっているのは鳴き声そのものより「苦情を受けた後に飼い主がどう動いたか」です。
この記事では、動物愛護管理法・民法718条などの法的な位置づけ、慰謝料25万円が認められた裁判例の内容、苦情を受けたときの3ステップ、そして賃貸でできる具体的な再発防止策までを整理します。
苦情が来たら最初に知っておきたい3つの法的ポイント
①動物愛護管理法:鳴き声だけで罰則はないが、行政指導はありうる
動物愛護管理法では、飼い主は動物が他人に迷惑を及ぼすことのないよう努める「努力義務」を負います。努力義務なので、鳴き声があったというだけで直ちに罰則があるわけではありません。ただし、改善がなければ行政の指導や勧告につながる可能性があります。
弁護士解説サイトの整理では、鳴き声が頻繁で、周辺住民の日常生活に著しい支障があり、複数の住民の共通認識になっているような場合に、都道府県が指導・助言・勧告・措置命令を行うことがあり、措置命令に違反すると50万円以下の罰金の対象になるとされています(自治体や条例によって運用は異なります)。
②民法718条:動物の占有者の責任
民法718条は、動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うと定めています。種類と性質に応じて相当の注意をもって管理していた場合は、責任を免れるとされています。つまり、「きちんと対策をしていた」と言えるかが重要になります。
③受忍限度:どこまでなら我慢すべきか
損害賠償が認められるかどうかは、裁判所が「社会生活上受忍すべき限度を超えて平穏な生活を営む権利(利益)を侵害した」と認めるかで判断されます。東京都の動物愛護相談センターの解説では、受忍限度の判断要素として次のような事情が挙げられています。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 侵害行為の態様・程度 | 鳴き声の大きさ・頻度・継続期間 |
| 被侵害利益の性質 | 早朝深夜の睡眠妨害など、人格権に関わるか |
| 地域環境 | 閑静な住宅地か、住宅密集地か(都心部では受忍限度は高くなる傾向) |
| 被害防止策 | 申し入れに対する改善の有無と、その効果 |
| 対応の誠実さ | 苦情への向き合い方・話し合いへの姿勢 |
契約解除になるのはどんなとき?「信頼関係の破壊」の考え方
賃貸では、貸主(大家さん)は一定の場合に契約を解除できますが、軽微な違反で直ちに解除できるわけではありません。一般に、契約違反が貸主と借主の「信頼関係を破壊する程度」に達しているかどうかで判断されます。
不動産会社の解説では、解除に至るパターンとして、同じ内容の苦情が繰り返し届く、改善の姿勢が見られない、その結果、貸主との信頼関係が破綻していると判断される、という流れが挙げられています。想定される展開は、契約更新の拒絶、解除や退去の要求、内容証明郵便による通知などです。1回の苦情だけで直ちに契約解除となるわけではないとも説明されています。
東京都動物愛護相談センターの解説にも、飼育方法の問題が用法遵守義務違反にあたり、信頼関係を破壊する程度に達すると、契約解除や更新拒絶が認められるおそれがあると整理されています。裁判例としては、昭和55年の東京高裁判決で、ベランダで犬2匹を無断飼育し、再三の中止申し入れにも応じなかった事案について、更新拒絶が認められた例が紹介されています。
裁判例で見る「慰謝料25万円」と「認められなかった例」の分かれ目
鳴き声をめぐって慰謝料が認められた裁判例として、よく紹介されるのが、大阪地裁平成27年12月11日判決(判例時報2301号103頁)です。
| 項目 | 内容(弁護士解説サイトの整理による) |
|---|---|
| 事案 | 約30m離れた住宅の犬の鳴き声による睡眠障害などを争った事案 |
| 音量 | 録音から、平均64.5デシベルと認定 |
| 飼い主の対応 | 苦情や調停の後も、適切な措置をとらなかったため、相当の注意を欠くとされた |
| 認められたもの | 治療費・薬代・交通費・録音機材代、慰謝料25万円、弁護士費用の一部3万円 |
注目したいのは、音量そのものよりも、苦情や調停の後に適切な措置をとらなかったことが不利に働いた点です。この解説では、認められる慰謝料は30万円以下が一般的とされていますが、これはあくまで一般的な傾向で、個別の事案によって変わります。
認められなかった例・影響した事情
同じ解説では、平成23年5月19日の東京地裁判決について、地域性や鳴く時間によっては損害賠償が認められなかった例として紹介されています(詳細までは記載がありません)。また、東京都の解説では、平成22年の東京地裁立川支部判決で、話し合いを拒否し、管理組合に一度も出席しなかったことが不利に考慮された例も紹介されています(猫に関する事案)。
苦情を受けたらやる3ステップ(今日からできる順番)
苦情を受けたときの対応として、不動産会社の解説では次の3ステップが紹介されています。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ①状況確認 | いつ、どのような場面で吠えたかを整理する | 留守中か在宅中か、時間帯、きっかけ(宅配・足音など)をメモする |
| ②謝罪 | 管理会社や大家さんを通じて、できるだけ早く伝える | 苦情を出した相手が分かっても、直接の訪問は避ける |
| ③意思表示 | 改善に取り組む姿勢を伝える | この段階で、対策の詳細をすべて示す必要はない |
この3ステップの肝は「早く」「間に入ってもらって」「改善の意思を見せる」ことです。そのうえで、次の章で紹介する具体策に取り組み、実施した内容を管理会社に報告しておくと、後から「対応した事実」を示せます。
やってはいけない対応:直接訪問・逆ギレ・放置
| NG対応 | なぜ避けるべきか |
|---|---|
| 苦情を無視する・放置する | 裁判例でも、苦情後に適切な措置をとらなかったことが不利に働いている。改善がなければ行政指導や解除の話に進むおそれもある |
| 苦情を出した人を探して直接訪問する | 感情的な対立になりやすい。連絡は管理会社・大家さんを通すのが基本 |
| 「ペット可だから問題ない」と反論する | ペット可でも、他の入居者への配慮は必要。受忍限度を超えるかどうかは別に判断される |
| 話し合いを拒否する | 話し合いを拒否したことが不利に考慮された裁判例がある |
| 対策をしたと口で言うだけ | 何をいつ実施したか、具体的に示せないと伝わらない |
鳴き声が出る原因別の対策と、賃貸でできる工夫
ここからは、鳴き声が出る主な原因別に、賃貸でもできる対策を整理します。犬の個体差が大きいため、あくまで一般的な対処の例です。気になる場合は、動物病院やドッグトレーナーなど専門家への相談もおすすめです。
| 原因の例 | 賃貸でできる対策の例 |
|---|---|
| 留守中の分離不安・退屈 | 出かける前の散歩や遊びで発散させる/知育おもちゃを用意/見守りカメラで吠えるタイミングを確認する |
| 外の物音(宅配・足音・声)への反応 | 窓際に近づけない配置にする/窓や玄関まわりの音対策/カーテンやパーテーションで視界を遮る |
| 要求吠え(ごはん・散歩) | 吠えている間は応じず、静かになってから応える(家族でルールを統一する) |
| 来客・インターホン | チャイム音への慣れの練習/別の部屋にハウスを置いて落ち着ける場所を作る |
| 環境の変化(引越し直後) | 新居に慣れるまで一時的に増えることがある。管理会社や隣人に事前にひと声かけておく |
室内の防音については、壁や窓の対策だけでなく、構造そのものが音の伝わりやすさに影響します。物件選びの段階で、木造・鉄骨造・RC造の違いや、角部屋・最上階といった位置の違いを知っておくと、再発防止にも役立ちます。
「苦情を入れる側」の正しい動き方(隣人がうるさいとき)
反対に、隣室のペットの鳴き声が気になる側の立場でも、動き方を間違えると関係がこじれます。弁護士解説サイトの整理では、直接伝えるとトラブルになりやすいため、第三者を通すのが望ましいとされています。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 管理会社・大家さん | 賃貸の場合はまずここ。程度によっては、貸主が賃貸借契約の解除を検討できると説明されている |
| 自治体(都道府県・市区町村) | 自治体によっては騒音計を貸し出している場合がある |
| 弁護士 | 飼い主との交渉や損害賠償請求を任せられる。ただし費用がかかる(着手金だけで30万円以上かかることがあるとの解説も) |
| 警察 | 注意してもらえる場合もあるが、通常は取締りの対象ではなく、刑事事件にはなりにくいとされている |
いずれの立場でも、いきなり当事者同士で話し合うより、管理会社を通して事実確認・記録を残しながら進めるほうが、結果的に早く穏便に解決しやすくなります。
再発防止のために:契約前に確認しておきたいこと
鳴き声のトラブルを避けるには、住み始めてからの対策だけでなく、契約前の物件選びと確認が大切です。
| 確認する項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 建物の構造 | 木造・鉄骨造・RC造のどれか。ペットの鳴き声は構造によって伝わり方が大きく変わる |
| 部屋の位置 | 角部屋・最上階・1階など、隣接する住戸が少ない位置か |
| 壁・窓 | 界壁の厚み、サッシの仕様、内見時に隣室の生活音がどれくらい聞こえるか |
| 契約書・飼育細則 | 飼える頭数・種類、鳴き声・臭いに関する規定、違反時の対応(解除条項) |
| 管理会社の対応 | 苦情が出たときの連絡体制や、普段の対応の丁寧さ |
よくある質問(Q&A)
まとめ
犬の鳴き声の苦情は、ペット可賃貸で最も起こりやすいトラブルの一つですが、その後の対応しだいで、関係を守ることも、こじらせることもできます。最後に、要点を整理します。
| # | 要点 |
|---|---|
| 1 | 1回の苦情で即・契約解除にはならないが、繰り返し・無視・改善なしは信頼関係の破壊につながりうる |
| 2 | 裁判例(大阪地判平成27年12月11日)では、苦情・調停後に措置をとらなかったことが不利に働き、慰謝料25万円が認められた |
| 3 | 苦情を受けたら「状況確認→管理会社経由で早めに謝罪→改善の意思表示」の3ステップ |
| 4 | 直接訪問・放置・逆ギレは避け、対策の内容と日付を記録する |
| 5 | 物件選びの段階で、構造・位置・飼育細則を確認して、トラブルを未然に防ぐ |
とはいえ、鳴き声の感じ方には個人差があり、一人で抱え込むとつらいものです。管理会社に相談しながら、無理のない範囲で一つずつ対策を進めましょう。
- 東京都動物愛護相談センター「ペットの飼い主にふりかかる法的トラブル」 https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/column/column2024_02-02/
- 弁護士費用保険ミカタ「犬の鳴き声がうるさい時の対処法は?法律や裁判例も紹介!」 https://bengoshi-h.info/pet/petkujou/
- ニチワ「犬の鳴き声に対する苦情が来たら…放置が契約解除に繋がる可能性」 https://www.nichiwa-realestate.co.jp/blog/entry-859667/
