
「嫌なら出て行け」は通らない 家賃値上げ通知が届いたときの断り方――借地借家法32条と"従来どおり払う"の正しい手順
「来月の更新から、家賃を2万円上げます」――管理会社からそんな通知が届いたら、多くの方は「大家さんが言うのだから仕方ない」と考えてしまいます。しかし結論から言うと、賃貸の家賃は、借主の同意なしに大家さんが一方的に上げることはできません。値上げに納得できないときは、直ちに応じる必要はなく、これまでどおりの家賃を払っていれば引き続き住み続けられます(東京都消費生活総合センターも同じ趣旨の案内を出しています)。
この記事では、2026年9月30日時点で確認できる公的機関・報道の情報にもとづいて、①なぜいま値上げ相談が急増しているのか、②借地借家法32条が定める「増額請求」の仕組み、③通知が届いたときの具体的な手順、④「従来どおり払う」ときの落とし穴、⑤「嫌なら出て行け」と言われたときの考え方、⑥話し合いで決まらないときの調停・訴訟の流れ、を順番に解説します。ペットと暮らす方は「引っ越しにくい」事情から我慢しがちなので、その視点も最後に加えました。
・納得できないときは従来どおりの家賃を、遅れずに払い続けるのが基本
・「嫌なら出て行け」と言われても、普通借家では更新拒絶に「正当の事由」が必要
・話し合いで決まらなければ、簡易裁判所の調停という手続きがある
・ただし、増額が認められる場合もある。感情ではなく「根拠」で判断することが大切
結論:値上げ通知が届いても、その場でサインする必要はありません
まず、いちばん大切なことを整理します。賃貸借契約は、貸主と借主が「この家賃で貸します・借ります」と合意して成立した契約です。契約は一度成立すると当事者の双方を拘束しますので、貸主の側からだけ内容を変えることは原則としてできません。家賃も同じで、大家さんが「来月から上げます」と通知しただけで新しい家賃が確定するわけではないのです。
実際、東京都消費生活総合センターの案内には、2か月後の更新から家賃を月2万円上げると管理会社から通知された30代男性の相談事例が載っています。近隣の相場と比べても高く、給与が上がらない中で対応が難しいという内容でした。これに対するアドバイスは「値上げに納得できないときは、直ちに応じる必要はなく、従来どおりの家賃を払っていれば、引き続き住み続けることができます」というものです。板橋区の案内でも、家賃値上げは借主の合意がなければ認められない、と明記されています。
ただし、ここで誤解してほしくないのは「大家さんは絶対に家賃を上げられない」という意味ではない点です。借地借家法32条は、一定の場合に貸主が家賃の増額を請求できると定めています。つまり、値上げは「合意」か「裁判所の判断」で決まるものであって、通知1枚で決まるものではない、というのが正確な理解です。この「決まり方」を知っているだけで、通知が届いたときの慌て方がまったく変わります。
数字で見る「家賃値上げ相談」の急増と家賃高騰の背景
では、なぜ今こんなに「値上げ通知」の話題が増えているのでしょうか。背景には、家賃相場そのものの上昇があります。
東京都の「家賃引き上げ相談」は2年で約2倍に
弁護士ドットコムニュース(2026年2月28日付)によると、東京都での家賃引き上げに関する相談件数は、2023年度が677件、2024年度が1,366件と約2倍に増えました。同記事では、東京都消費生活総合センターでも2025年度は4月〜12月の速報値で700件超と、前年同期比で約2倍のペースだと紹介されています。
| 年度 | 東京都での家賃引き上げ相談件数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 677件 | ― |
| 2024年度 | 1,366件 | 前年度の約2倍 |
| 2025年度(4〜12月速報) | 700件超 | 東京都消費生活総合センター。前年同期比で約2倍のペース |
(出典:弁護士ドットコムニュース/2026年2月28日付。相談件数は同記事に記載の数値です)
東京23区の単身向けマンション家賃は「過去最高」圏
家賃相場の側も動いています。ダイヤモンド不動産研究所の記事(2026年5月28日付)は、アットホームの2026年2月の調査をもとに、東京23区の単身向けマンション(30㎡以下)の家賃が前年比12%増で、初めて月11万円台に入ったと伝えています。その後もアットホームの調査を報じたテレビ報道(2026年7月28日放送分)では、東京23区の30㎡以下の平均家賃が11万4,242円で、前年より約1万2,000円高く、25か月連続で最高値を更新したとされています。
一方で、NHK(2026年8月27日付)は、7月の東京23区の単身者向け平均家賃が約11万4,100円と前月からわずかに下がり、上昇が2年2か月ぶりに止まったと報じました。さらに9月28日付では、8月の平均家賃が過去最高になったという見出しも出ています。つまり相場は「高止まり」から「さらに上昇」まで、月ごとに揺れながら高い水準にある、というのが現状です。
アットホームの2026年3月調査(4月22日発表)では、調査対象の13エリアすべて・すべての面積区分で、マンションもアパートも前年を上回りました。これは調査開始の2015年1月以降で初めて、とされています。地域を問わず「家賃が上がりやすい」局面にあることは、数字からも読み取れます。
大家さんは家賃を一方的に上げられない――契約の大原則
賃貸借契約は、貸主と借主がそれぞれ「約束」を守ることで成り立っています。家賃は契約書に書かれた「約束の額」ですから、原則として、この額を変えるには両者の合意が必要です。これは民法の考え方でもあり、板橋区のページでも「家賃値上げには、借主の合意がなければ認められません」と明記されています。
通知は「請求」であって、「決定」ではない
管理会社から届く「家賃改定のお知らせ」は、法律的には貸主から借主への「増額請求の意思表示」にあたるのが通常です。ここで押さえたいのは、意思表示が届いただけでは、借主がそれに従う義務が直ちに生まれるわけではない、という点です。合意が成立するか、裁判所の判断が確定するまでは、増額が正当かどうかは「未確定」です。
通知書のチェックポイント
| 確認すること | なぜ大事か |
|---|---|
| いつから、いくらに上がるのか | 金額と時期が特定されていない通知は、話し合いの土台になりません |
| 値上げの理由が書かれているか | 理由の説明を求めるのが最初の一歩(東京都のアドバイスでも第1段階) |
| 誰からの通知か(大家・管理会社) | 管理会社が代理で通知するのが一般的。誰の意向かを確認します |
| 契約書に家賃改定の特約があるか | 「不増額特約」があれば、その期間は原則増額できません |
| 更新時期と重なっているか | 更新手続きの書類に紛れて、新家賃への同意欄がある場合があります |
とくに最後の「更新書類に紛れている」ケースは、あとの章で詳しく扱います。
値上げが認められる3つの根拠と「不増額特約」
借地借家法32条1項は、貸主が家賃の増額を請求できる場合を定めています。弁護士向けの解説(ben54)によれば、次のいずれかに当てはまる場合です。
| 根拠 | 内容 | 借主として見るべき点 |
|---|---|---|
| ① 租税その他の負担の増加 | 固定資産税・都市計画税などの負担が増えた | 実際に増えたのか、増えた額に見合う値上げ幅か |
| ② 土地・建物の価格上昇、経済事情の変動 | 地価・建築費・物価などの変動 | 一般論だけでなく、自分の物件の家賃が適正かどうか |
| ③ 近隣の類似物件と比べて不相当に低い | 近傍同種の家賃と比べて、現家賃が低すぎる | 周辺の「同じ条件」の募集家賃と比べる(築年・広さ・設備・立地) |
つまり、「相場が上がったから」というだけでなく、「現在の家賃が周辺の同じ条件の物件と比べて不相当に低い」など、根拠を示せることが必要です。大家さん側からすると、この立証が意外と手間になります。適正な家賃の算出には、差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法という4つの手法があり、複雑な計算が必要になるため、弁護士への相談が勧められています(ben54)。
「不増額特約」があれば、その期間は原則上げられない
32条1項には、一定の期間は家賃を増額しないという特約がある場合には、その定めに従う、という但書があります。契約書に「契約期間中は賃料を増額しない」などの記載があるときは、その期間の増額請求は原則として認められません。契約書の「賃料」「改定」の条項をまず確認しましょう。
通知が届いたら最初にやること(5ステップ)
東京都消費生活総合センターの案内(令和8年3月3日発行)でも、値上げ通知を受けても「慌てず、慎重に対応」することが基本とされています。以下は、その案内と弁護士向け解説をもとに、実際の動き方を5つのステップに整理したものです。
この間も、家賃は従来どおり、期日までに払い続けてください。次の章で詳しく説明します。
「従来どおり払う」の正しいやり方と落とし穴
「従来どおりの家賃を払い続ける」というアドバイスの根拠は、借地借家法32条2項にあります。増額について当事者間で協議が調わない場合、増額を請求された借主は、増額を正当とする裁判が確定するまでの間、自分が相当と認める額の家賃を支払えば足りる、と定められているのです。ben54のニュース解説でも、借主は「裁判所により増額が命じられるまでは、増額には応じない」旨を伝えて従来どおり支払う方法が有効、とされています。
必ず守りたい3つのルール
① 払うのをやめない。話し合い中に家賃を払わない・遅らせると、それ自体が債務不履行(家賃滞納)となり、契約解除や退去請求の理由になり得ます。ben54の解説も、話し合い期間中も必ず従来額を支払うことが必要で、支払わなければ退去請求される可能性が高まる、と注意を促しています。
② 「相当と認める額」は、通常は従来の額。増額に納得していないのなら、払うのは今の家賃です。値上げ後の金額を「とりあえず」払ってしまうと、あとで返してもらうのが面倒になります。
③ 増額が認められたら、不足分に年1割の利息が付く。ここが最大の落とし穴です。裁判の結果として「増額が正当」と確定した場合、すでに払った額との差額(不足額)を、年10%の利息を付けて支払う必要があります(32条2項但書。ben54の解説にも「不足分には年10%の利息が加算」とあります)。
| ケース | 結果のイメージ |
|---|---|
| 増額が認められなかった場合 | 従来どおりの家賃を払っていたので、追加負担なし |
| 一部の増額が認められた場合 | 認められた額との差額を、年1割の利息付きで支払う |
| 全額の増額が認められた場合 | 値上げ額の差額を、年1割の利息付きで支払う |
つまり「従来額で払い続ける」ことは、無料で先延ばしにできる魔法の手段ではありません。大家さん側の主張に一定の根拠がありそうな場合は、その可能性も踏まえて、まとまったお金を用意しておく、あるいは早めに現実的な額で合意する、といった判断も必要になります。
大家さんが従来額の受け取りを拒否したら
「値上げ後の額でなければ受け取らない」と家賃の受け取りを拒まれることがあります。このとき、そのまま放置すると、期日に払っていない状態になりかねません。一般的には、法務局への「供託」(民法上の弁済供託)によって、支払ったのと同じ効果を得る方法があります。手続きは書類の書き方などが細かいため、受け取りを拒否された段階で、賃貸ホットラインや弁護士、法テラス等に早めに相談することをおすすめします。
ケーススタディ:月2万円の値上げ通知が届いたら
東京都消費生活総合センターの相談事例に近い設定で、流れをイメージしてみましょう。現在の家賃が月9万円のマンションに住むAさんに、管理会社から「更新の2か月後から月11万円にします」という通知が届いたとします。値上げ幅は月2万円、年間では24万円、2年間の更新期間では48万円の負担増です(計算例です)。
Aさんがまずやるべきは、書面で理由を尋ねることです。「固定資産税の増額分か、周辺相場との比較か」を確認し、あわせて同じ駅・同じ広さ・同じ築年数の募集家賃を3〜5件集めます。周辺の募集家賃が月9万5,000円前後であれば、11万円という金額は相場から大きく離れていると主張できます。逆に周辺が10万円台後半であれば、現在の9万円が「不相当に低い」と評価される可能性があり、一定の増額は避けられないかもしれません。
こうして、「全面的に断る」「半額程度で折り合う」「引っ越しを検討する」のどれが現実的かが見えてきます。大切なのは、通知が届いた時点では結論を出さず、材料をそろえてから判断することです。
「嫌なら出て行け」は通るのか――更新拒絶と正当事由
値上げを断ると「それなら更新しない」「出て行ってください」と言われる場合があります。実は、弁護士ドットコムニュースの記事でも「家賃の値上げが嫌なら出て行け」と大家に言われたら、という切り口で取り上げられており、相談が多いパターンです。
普通借家では、更新拒絶に「正当の事由」が必要
通常の賃貸借(普通借家契約)では、貸主が契約の更新を拒絶したり解約を申し入れたりするには、借地借家法28条にいう「正当の事由」が必要です。これは、建物を貸主自身が使う必要があるか、借主が使う必要があるか、これまでの経過、建物の利用状況や現況、立退料の申出などを総合して判断されます。「家賃を上げたいのに借主が同意しない」という事情だけでは、基本的に正当の事由とは認められにくいと考えられます。
更新拒絶の通知には期限もある
借地借家法26条により、貸主が更新しない旨の通知を期間満了の1年前から6か月前までの間にしなかった場合、従前と同じ条件で契約が更新されたものとみなされます(これを法定更新といいます)。この場合、契約期間は「定めがない」ものとして扱われます。つまり、更新の時期が目前に迫ってから急に「更新しません」と言われても、それだけでは契約が終了しないことが多いのです。
| 契約の種類 | 値上げに応じないと? |
|---|---|
| 普通借家契約(一般的な賃貸) | 更新拒絶には正当の事由が必要。従来額を払い続ければ、原則として住み続けられる |
| 定期借家契約 | 期間満了で契約が終わる。再契約の条件(家賃)は貸主と交渉になり、借主に更新の権利はない |
なお、「正当の事由」があるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれます。「出て行け」と言われた場合は、その場で反論するよりも、書面で理由を尋ね、早めに専門家に相談するのが安全です。
更新のタイミングで起きやすい「サインしてしまった」問題
値上げ通知が「更新のご案内」と一緒に届くことは少なくありません。このとき、最も注意したいのが「更新契約書(覚書)にサインしてしまう」ケースです。
合意更新と法定更新の違い
| 合意更新 | 法定更新 | |
|---|---|---|
| 方法 | 新しい契約書(覚書)に双方が署名・押印 | 特に手続きをしなくても、従前の条件で更新されたとみなされる |
| 家賃 | 新しい家賃に「合意した」ことになる | 従前の家賃・条件のまま |
| 更新料・手数料 | 契約書に定めがあれば発生する | 契約書に定めがあるかで扱いが分かれる。個別に確認が必要 |
| 期間 | 新しい期間を定める | 期間の定めがない契約となる |
「新しい家賃に同意します」と書かれた書類に署名すると、その時点で新家賃が合意されたことになります。あとから「本当は納得していなかった」と主張するのは困難です。署名を求められたときは、金額の欄をよく読み、納得できなければその場で署名せず、持ち帰って検討する旨を伝えましょう。
また、更新料や更新事務手数料、保証会社の更新料、火災保険の更新など、家賃以外の費用が同時に変わるケースもあります。家賃だけでなく「総額」でいくら上がるのかを確認することも大切です。
管理会社の変更・売却があった場合
建物が売却されて大家さんが変わった直後に、新しい大家さんから値上げの通知が届くケースもあります。この場合も、賃貸借契約の内容(家賃・期間・特約)は原則としてそのまま引き継がれ、新しい大家さんが自由に家賃を変えられるわけではありません。板橋区のページでも、所有者変更に伴うトラブルについて東京都の賃貸ホットラインが案内されています。名義や振込先が変わったときは、本当に新しい所有者からの通知かどうかを、管理会社や登記の情報で確認してから対応しましょう。
話し合いで決まらないとき:調停・訴訟の流れ
話し合っても折り合いがつかない場合、家賃の増額・減額をめぐる紛争は、おおむね次の順で進みます(ben54の解説を参考に整理)。
賃料の増減をめぐる訴訟は、原則としてまず調停を経ることが求められる「調停前置」の扱いになっています(民事調停法24条の2)。いきなり訴訟になるのではなく、調停が入口になるのが一般的です。
費用と時間の見通し
調停の申立ては、訴訟に比べると手続きが簡易で、費用も抑えられる傾向があります。ただし、争う金額が数千円〜数万円の場合、時間と手間に見合うかどうかは慎重に考える必要があります。専門家の意見を聞き、「適正額」に近い着地点を探ることも、現実的な選択肢です。訴訟や調停の具体的な費用・期間は事案により大きく異なるため、ここでは目安の数字は挙げません。
話し合いの場で使いやすい伝え方
管理会社の担当者は、多くの場合、大家さんの意向を伝える立場です。担当者と感情的に対立すると、かえって話がこじれます。「値上げそのものを一切認めない」と言い切るよりも、次のような言い方のほうが、建設的に進みやすくなります。
・「近隣の同条件の物件を調べたところ、○○円前後で募集されていました。この点はどう考えられていますか」
・「家計への影響が大きく、この金額では継続が難しいです。段階的な改定や据え置きの余地はありませんか」
・「増額に同意はしていません。決着するまでは、従来どおりの家賃をお支払いします」
最後の一言は特に重要です。「同意していない」ことと「払い続ける」ことを、はっきり書面(メールでも可)に残しておくと、後から「払った=承諾した」と言われるリスクを減らせます。
証拠として残しておきたいもの
| 残すもの | 理由 |
|---|---|
| 通知書・封筒・メール | いつ、誰から、どんな内容で届いたかの証拠になる |
| 家賃の振込記録 | 従来額を期日どおり払っていたことの証明になる |
| 周辺の募集家賃のスクリーンショット(日付入り) | 「近傍同種の家賃」との比較の材料になる |
| やり取りの記録(日時・相手・内容) | 電話で話した内容もメモに残しておく |
| 契約書・重要事項説明書 | 不増額特約や更新条項の確認に必要 |
現実的な落としどころ:交渉のコツと引っ越し比較
法律の建前としては借主を守る仕組みがありますが、実際には「大家さんとの関係を悪くしたくない」「争うのは面倒」という気持ちも当然あります。ここでは、対立を深めずに着地点を探る具体策と、引っ越した場合との比較を紹介します。
交渉のコツ:金額だけでなく「条件」で調整する
たとえば「2万円の値上げ」に対して、①値上げ幅を段階的にする(半額にする、1年後に改定するなど)、②更新料を減額・免除してもらう、③長期入居を約束する代わりに据え置きにしてもらう、といった条件の調整があり得ます。大家さん側にとっても、空室になって新しい入居者を探す費用(広告料・空室期間の家賃など)を負担するよりは、「今の入居者に住み続けてもらう」ほうが得な場合があります。
その際に有効なのが、周辺の類似物件の募集家賃という客観的なデータです。「隣の同じ間取りの物件が○○円で募集されている」と具体的に示せれば、感情論にならずに話し合えます。
引っ越した場合の家賃と比較する
ダイヤモンド不動産研究所の記事(アットホームの2026年2月調査を引用)は、東京23区の単身向けマンションが平均で月11万円台に達した一方、東京の多摩地域は約6万円台、神奈川・埼玉・千葉は6万7,000円〜7万9,000円程度だと紹介しています。また、中央線の吉祥寺が11万3,100円、三鷹が9万8,300円、さらに先の駅では7万〜8万円台になる例も示しています。
| エリア(アットホーム2026年2月・単身向けマンション) | 平均家賃の目安 |
|---|---|
| 東京23区 | 11万円台(前年比12%増) |
| 東京の多摩地域など | 約6万円 |
| 神奈川・埼玉・千葉 | 6万7,000円〜7万9,000円 |
(出典:ダイヤモンド不動産研究所/2026年5月28日付。対象は30㎡以下の単身向けマンション)
また、同記事は、繁忙期の3〜4月を外して引っ越しすれば、貸主の立場も弱くなり、家賃や引っ越し費用を抑えやすい可能性があると指摘しています。ただし、引っ越しには敷金・礼金・仲介手数料・引っ越し費用などの初期費用がかかります。「値上げ額×居住予定年数」と「引っ越し総費用」を比べ、どちらが得かを冷静に計算するのがおすすめです。
ペットと暮らす人が特に気をつけたいこと
ペッターズ不動産では、犬や猫と暮らすお客様のお部屋探しを多くお手伝いしています。その経験から言えるのは、ペットと暮らす方ほど、家賃の値上げを「断りにくい」立場に置かれやすい、ということです。
理由は単純で、ペット可の賃貸物件は数が限られ、引っ越し先を探すハードルが高いからです。「今の部屋なら大家さんもペットを理解してくれている」「ここを出て新しい部屋が見つかるか不安」という気持ちが、値上げへの同意を後押ししてしまいます。しかし、だからこそ、まず落ち着いて次の点を整理してみてください。
ペット可物件の探し方や、ペット可物件の家賃が高くなる仕組みについては、当ブログの「ペット可は家賃が3.4万円高い」は本当?の記事もあわせてご覧ください。
Q&A:値上げ通知でよくある疑問
まとめ
家賃の値上げ通知が届いたとき、いちばんやってはいけないのは「その場でサインすること」と「黙って従来額の支払いをやめること」です。この2つを避けたうえで、次の流れで動いてみてください。
② 値上げ理由の説明を書面で求める
③ 周辺相場を調べ、根拠を持って話し合いを求める
④ 納得できない間も、従来どおりの家賃を期日までに払う(受け取り拒否なら供託を相談)
⑤ 決まらなければ調停へ。増額が認められる場合は年1割の利息付きで差額を払う点にも注意
⑥ 定期借家契約の場合は、上記が当てはまらないので契約書を確認
法律は、借主が一方的に不利にならないよう、話し合いと裁判所の手続きという段階を用意しています。相場が上がっている今だからこそ、「通知が来た=従うしかない」と思い込まず、根拠と手順で判断することが、お財布と暮らしを守る近道です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法律相談に代わるものではありません。実際のトラブルでは、契約内容や事情によって結論が変わりますので、東京都の賃貸ホットラインや弁護士等にご相談ください。
ペッターズ不動産へ
- 弁護士ドットコムニュース「『家賃の値上げが嫌なら出て行け』と大家に言われたら?…」(2026年2月28日)
- 弁護士ドットコム「家賃を上げたい!賃料増額請求の流れと請求額の計算方法を解説」
- 東京都消費生活総合センター「賃貸住宅の家賃値上げトラブル」(令和8年3月3日)
- 板橋区「民間賃貸住宅の家賃値上げについて」
- ダイヤモンド不動産研究所「東京23区・単身マンションの家賃が前年比12%増の11万円台に突入!」(2026年5月28日)
- KSB瀬戸内海放送(ANN)「東京23区の単身者用賃貸が25カ月連続最高値更新」(2026年7月28日放送分)
- NHK「東京23区 7月の平均家賃 単身者向けは上昇止まる 2年2か月ぶり」(2026年8月27日)
- NHK 首都圏ニュース「東京23区 単身者向け賃貸マンション平均家賃 8月は過去最高に」(見出し・2026年9月28日)
- アットホーム「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向(2026年3月)」(2026年4月22日発表)
- 借地借家法(第26条・第28条・第32条)/民事調停法(第24条の2):e-Gov法令検索
