
ペットの臭い・マーキング汚れの退去費用はいくら?「通常損耗」と借主負担の境目3つと、特約が効く場面【2026年最新】
「ペットの臭いは退去のとき全部借主負担になるのでしょうか」。ペット可の賃貸でお住まいの方から、最も多くいただくご相談のひとつです。結論を先にお伝えすると、ペットによる汚損や臭いは「通常の使用を超える損耗」と判断されやすく、借主負担になりやすいのは事実です。ただし、負担する範囲は「傷んだ部分の復旧」に限られ、経過年数による価値の減り方も考慮されます。請求書の金額をそのまま受け入れる必要はありません。
この記事では、東京都や柏市の消費生活相談の資料、国土交通省ガイドラインの考え方、不動産会社の公開している費用相場をもとに、境目と対策を順番に解説します。
- 結論:ペットの臭いは「借主負担になりやすい」が、全額とは限らない
- 原状回復の基本ルール:通常損耗は貸主、ペットの汚損・臭いは借主
- 臭い・マーキング汚れが「通常の使用を超える」と見られる3つの境目
- 壁紙の経過年数ルール:6年で考え、3年住めば負担は50%
- 退去費用の目安:壁紙・床・清掃の単価を知っておく
- 床・クッションフロア・フローリングの臭いと染みの扱い
- ペット可物件の特約:どこまで有効か、どこで交渉できるか
- ペット不可なのに飼っていた場合の費用リスク
- 退去立会いで高額請求を避ける:写真・書類・伝え方
- 入居中にできる臭い・マーキング予防と、物件選びのコツ
- よくある質問(Q&A)
- まとめ:入居中の対策と退去時の確認で、請求額は変わる
結論:ペットの臭いは「借主負担になりやすい」が、全額とは限らない
まず全体像を押さえましょう。東京都の消費生活相談資料(令和8年3月18日付)には、「一般的に、ペットによる汚損・破損、結露の放置により拡大したカビ・シミや煙草等のヤニ・臭いなどは、通常の使用を超える損耗と判断されています」と書かれています。つまり、ペットの汚れや臭いは、貸主・管理会社から「通常の生活で生じる傷みではない」と見られる側に分類されます。
一方で、同じ東京都の資料は「負担部分や経過年数を考慮し交渉する余地はある」とも述べています。「ペットだから全額」ではなく、「どの部分が」「どれだけ傷み」「何年住んだか」で金額が変わるというのが、実務の基本です。
①ペットの臭い・汚損は借主負担になりやすいが、範囲は「傷んだ箇所の復旧」まで
②壁紙は6年を目安に、住んだ年数が長いほど負担割合は下がる
③ペット可物件は特約が付くことが多く、契約書の文言確認が最優先
④入居時・退去時の日付入り写真と立会いでの確認が、交渉の土台になる
原状回復の基本ルール:通常損耗は貸主、ペットの汚損・臭いは借主
原状回復の出発点は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)です。東京都の資料は、原状回復を「通常使用の損耗や経年変化以外の故意・過失等により生じてしまった傷や汚れを復旧させること」と説明し、「元のきれいな状態に完全に戻すわけではありません」と明記しています。民法621条も、通常の使用及び収益によって生じた損耗と経年変化は、借主の原状回復義務から除くと定めています。
| 区分 | 具体例 | 負担 |
|---|---|---|
| 通常損耗・経年劣化 | 家具の設置跡、日焼けによる畳やクロスの変色、フローリングの色落ち | 貸主(柏市の資料でも貸主負担の例) |
| 借主の過失・手入れ不足 | 掃除を怠ったために生じた汚れやカビ | 借主 |
| ペットによる傷・臭い | 柱等の傷、尿や体臭の染みつき(柏市の負担表で借主欄) | 借主負担になりやすい |
柏市の消費生活のページでは、負担表で「ペットによる柱等の傷、臭い」が借主負担の欄に入っていること、そして「契約書に原状回復についての記載があれば、まずその規定に従うことになります」と説明されています。ここが大切です。ガイドラインは裁判や交渉の基準にはなりますが、契約書の特約があれば、その内容がまず問題になります。
では、ペットがいれば何でも借主負担かというと、そうではありません。ガイドラインの考え方で借主が負担するのは、あくまで「通常の使用を超えて生じた損耗の復旧」です。たとえば、ペットが一度も粗相をしていない部屋で、人の生活臭やペットの毛の掃除不足による通常の汚れがある程度であれば、ハウスクリーニングの範囲で収まるケースもあります。次の章で、判断の分かれ目を整理します。
臭い・マーキング汚れが「通常の使用を超える」と見られる3つの境目
「臭い」は目に見えないため、請求する側にも請求される側にも主観が入りやすい項目です。実際の相談では、次の3つの境目で判断が分かれることが多くなります。
境目① 臭いが「清掃」で取れるか、「張替え」が必要か
換気と通常のクリーニングで取れる程度の生活臭は、清掃費用の問題です。一方、尿が壁紙の裏や下地、床材に染み込み、清掃では取れない場合は、壁紙や床材の張替えという「復旧工事」の問題になります。費用が大きく変わるのはこの段階です。請求書に「消臭」と「張替え」のどちらが書かれているかを、まず確認してください。
境目② 汚れが「点」か「面」か
マーキングが特定の壁の下部や柱の根元に集中している場合と、部屋全体に臭いが回っている場合では、復旧範囲が違います。リブナブルの費用解説には、壁紙は汚れた部分だけの張替えができず部屋全体の張替えになるという趣旨の記載がありますが、これは工事の実務上の話です。借主が負担する割合は、後述のとおり経過年数で調整されます。「全面張替えだから全額」にはなりません。
境目③ 損耗が「ペット由来」と特定できるか
タバコの臭い、料理の臭い、結露によるカビ臭は、ペットとは別の原因です。臭いの原因がペットに特定できない場合、全額をペット由来として請求するのは難しくなります。逆に、入居中に別の原因(換気不足や結露)が重なっていれば、その分は貸主・管理会社との協議事項になります。
壁紙の経過年数ルール:6年で考え、3年住めば負担は50%
壁紙(クロス)の負担額を決める最大のポイントが、経過年数です。配信日2026年4月30日付のファイナンシャルフィールドの解説は、「国土交通省のガイドラインでは壁紙の耐用年数を『6年』としています」と述べ、入居時に壁紙が張り替え済みで経過年数が0年なら借主負担割合は100%から始まり、3年後の退去なら借主の負担割合は50%まで低下すると説明しています。
これを6年の直線的な考え方で単純計算すると、下表のようになります。表は理解のための目安の計算で、実際の割合は契約内容や物件の状態によって変わります。
| 居住年数 | 借主の負担割合(目安) | 張替え費用4.5万円の場合 |
|---|---|---|
| 1年 | 約83% | 約3.7万円 |
| 2年 | 約67% | 約3.0万円 |
| 3年 | 50% | 約2.3万円 |
| 4年 | 約33% | 約1.5万円 |
| 5年 | 約17% | 約0.8万円 |
| 6年以上 | ほぼ0%に近づく | ごくわずか |
前提となる費用4.5万円は、壁紙の単価の目安「1㎡あたり約1,000〜2,000円」(リブナブルの費用解説)に、仮に30㎡分を掛けた例(約1,500円×30㎡)です。実際の面積や単価は物件ごとに異なります。
なお、同じ解説の資料には、入居時に新品の壁紙でも退去時の残存価値は約3割程度とされた裁判例の紹介もあります(リブナブル)。ただし、これは個別の裁判での判断です。計算方法は一つではなく、「経過年数を何も考慮しない請求」には疑問を持てる、と理解しておくのが現実的です。
もうひとつ大切なのは、入居時に壁紙が新品だったか、すでに数年使われていたかです。入居時にすでに年数が経っていれば、その分、借主の負担割合は小さくなります。入居時の状態を写真で残しておくことが、ここで効いてきます(第9章で詳しく解説します)。
退去費用の目安:壁紙・床・清掃の単価を知っておく
次に、金額の感覚をつかみましょう。リブナブルの費用解説では、部屋の広さ別の退去費用の相場として、次の数字が紹介されています。ペット由来の臭いや染みの補修は、これに加算される形になります。
| 間取り・広さ | 退去費用の相場(リブナブル) |
|---|---|
| 1R・1K・1DK(20〜30㎡) | 約20,000〜40,000円 |
| 1LDK・2DK(30〜50㎡) | 約40,000〜70,000円 |
| 2LDK・3DK(50〜70㎡) | 約50,000〜80,000円 |
| 3LDK・4LDK(70〜90㎡) | 約70,000〜90,000円 |
また、単価の目安として次の数字が紹介されています。ペットの臭いに関係する部分を中心に整理します。
| 項目 | 費用の目安(リブナブル) |
|---|---|
| 壁紙(クロス) | 1㎡あたり 約1,000〜2,000円 |
| フローリング(複合材) | 1㎡あたり 約5,000〜12,000円 |
| フローリング(無垢材) | 1㎡あたり 約6,000〜13,000円 |
| クッションフロア | 1㎡あたり 約2,000〜3,000円 |
| キッチン周辺の清掃 | 約15,000〜25,000円 |
| エアコン清掃 | 約10,000〜15,000円 |
こうして並べると、壁紙よりも床材の方が1㎡あたりの単価が高いことがわかります。ペットが同じ場所で繰り返し粗相をしていた場合、床材の張替えに話が進むと請求額が大きく膨らみやすくなります。逆にいえば、床の被害を小さくしておくことが、退去費用を抑える近道です。
なお、東京都の資料に紹介された相談事例では、小型犬1頭を飼って5年住んだ方に、原状回復費用24万円が請求されています。契約書には「ペットによる汚損・破損は全額借主負担」との特約があり、納得できないという相談でした。これも、金額が広さや被害範囲、特約の有無で大きく動く一例です。
床・クッションフロア・フローリングの臭いと染みの扱い
壁紙は経過年数で割合が下がりますが、床はどうでしょうか。フローリングは建物と同程度の寿命と考えられるため、壁紙のように短期間で価値がゼロに近づくことはありません。そのため、尿の染みが床板に深く浸透した場合、部分補修や張替えの費用が借主負担として残りやすい傾向があります。
- クッションフロア:単価は比較的安く(約2,000〜3,000円/㎡)、消耗品に近い位置づけです。粗相が多い部屋で使われていることも多く、この場合は張替えの金額自体が小さくなります。
- フローリング:単価が高く(複合材で約5,000〜12,000円/㎡)、被害の範囲が広がるほど請求が大きくなります。粗相の跡を放置すると、黒ずみや臭いが残りやすくなります。
- 日焼けや色落ち:柏市の資料にあるように、フローリングの色落ちは貸主負担です。ペットとは関係のない変色まで借主に請求されていないか、確認しましょう。
「どこまでが通常損耗で、どこからがペットによる損傷か」の判断は、実際の写真と状況に依存します。曖昧な場合は、入居時の写真と退去時の写真を並べて、どこがどう変わったのかを確認することが近道です。
ペット可物件の特約:どこまで有効か、どこで交渉できるか
ペット可物件では、契約書に特約が付くことが一般的です。東京都の資料も、「ペット飼育可能物件の場合も、ペットによる汚損等について特約を定めているケースが多いので、契約書をよく確認しましょう」と注意を促しています。リブナブルの解説でも、近年の賃貸借契約の多くでクリーニング代を借主負担とする特約が設けられていることや、敷金を全額償却する特約があり得ることが紹介されています。
特約の例
- 「ペットによる汚損・破損は全額借主負担とする」
- 「退去時のクリーニング費用、ペット消毒費は借主負担とする」
- 「敷金のうち◯カ月分は償却する(返還しない)」
裁判例の紹介:ペット消毒は借主負担が合理的とされた例
リブナブルの解説では、「解約時のリフォーム、汚損・破損箇所の修理・クリーニング、ペット消毒は賃借人負担で行う」という特約の事例が紹介されています。裁判所は「ペット飼育にともなう消毒は賃借人負担が合理的」と判断しつつ、敷金357,360円の返還を認めたと記載されています。つまり、特約があっても、請求のすべてが無条件に認められるわけではないことがうかがえます。
①対象が具体的か(「ペットによる汚損」だけか、「通常の清掃費用」まで含むか)
②金額や範囲が明確か(定額か、実費精算か)
③契約時に説明を受け、納得して署名したか。契約書に書いてあるだけで説明がなかった場合は、管理会社・貸主に確認を
特約の有効性は個別の事情で判断が分かれます。判断に迷うときは、消費生活センターや弁護士など専門家への相談が確実です。弊社は法律の専門家ではありませんので、この記事は一般的な情報としてお読みください。
ペット不可なのに飼っていた場合の費用リスク
「ペット不可」の物件で飼っていた場合は、事情が変わります。東京都の資料は、ペット飼育禁止物件では「契約違反となるのでペットに係る原状回復費用は借主の負担となります」と明記しています。ペット可物件と違い、「通常損耗かどうか」という議論に入る前に、契約違反を問われる立場になるわけです。
こうした場合、原状回復費用に加えて、契約解除や損害賠償の話に発展するリスクもあります。「バレなければ大丈夫」ではなく、飼育したいなら最初からペット可の物件を選ぶ、すでに飼っている場合は早めに管理会社へ相談する、というのが現実的な選択です。
逆に、ペット可の物件で、契約時に申告した頭数・種類の範囲内で飼っていた場合は、特約の範囲内で正当に交渉できます。頭数を増やす場合や犬種を変える場合の申告も、忘れずに行ってください。
退去立会いで高額請求を避ける:写真・書類・伝え方
退去時の請求額を左右するのは、立会いの場での確認と、手元にある証拠です。東京都の資料も、退去時の立会いと日付入りの写真が有用であると触れています。
入居時に準備しておくもの
- 入居時の部屋全体の写真(壁・床・ドア・設備を日付入りで)
- すでにある傷・汚れ・臭いの記録(チェックリストへの記入、管理会社への連絡の控え)
- 契約書・重要事項説明書の特約欄のコピー
退去立会いでの確認ポイント
- その場でサインしない:請求内容を確認する時間をもらい、書面で後日提示を求めてもかまいません。
- 項目ごとの明細を確認する:「臭い一式」のような曖昧な書き方でなく、場所・数量・単価を明らかにしてもらいます。
- 経過年数の考慮があるか聞く:壁紙なら入居何年目かが計算に反映されているかを確認します。
- 入居時の状態と比較する:入居前からあった汚れや傷が、借主負担に含まれていないかを写真で確かめます。
交渉の際は、感情的にならず、「ガイドラインの考え方と経過年数を踏まえて、内訳を教えてください」と丁寧に尋ねることが近道です。納得できないときは、各自治体の消費生活センターが相談窓口になります。
「請求内容を確認しました。壁紙の張替えについて、入居から◯年経過していますが、経過年数は考慮されていますか。計算の内訳と対象面積を書面でいただけますか。」
入居中にできる臭い・マーキング予防と、物件選びのコツ
退去費用を小さくする最も効果的な方法は、そもそもの被害を小さくすることです。入居中の対策と、物件選びの視点を整理しました。
- 粗相の跡は早めに処理する:時間が経つと壁紙の裏や床下に染み込みやすくなります。ペット用の消臭剤などで早めに対処しましょう。
- マーキングしやすい場所を保護する:壁の下部や柱の根元に、保護シートを貼る方法があります(貼る際は原状回復できる素材を選び、事前に管理会社へ確認してください)。
- トイレの位置とシーツを見直す:失敗しやすい場所には、トイレの位置を変えるなど環境から見直します。
- 換気を習慣にする:臭いの染みつきは、換気不足で進みやすくなります。
- ペット保険・個人賠償の確認:加入している保険で補償される範囲があるかを確認しておくと安心です。
物件選びでは、床材がクッションフロアやペット対応フローリングか、壁紙がペット対応仕様か、特約の内容が明確かを内見時に確認してください。ペット可物件は、設備が整っている分、特約も整備されていることが多いのです。ペッターズ不動産では、全物件約4,000件のうち、HP掲載済み約1,000件、未公開物件約3,000件を取り扱っています。ご希望の条件をお伝えいただければ、未公開物件も含めてご提案します。
よくある質問(Q&A)
まとめ:入居中の対策と退去時の確認で、請求額は変わる
ペットの臭い・マーキング汚れの退去費用について、ポイントをまとめます。
- ペットによる汚損・臭いは通常の使用を超える損耗と判断されやすく、借主負担になりやすい(東京都資料)。
- 負担するのは「傷んだ部分の復旧」で、壁紙は6年を目安に経過年数が考慮され、3年で50%となる考え方がある。
- 費用の目安は、壁紙が1㎡あたり約1,000〜2,000円、フローリング(複合材)が約5,000〜12,000円。床の被害が大きくなるほど請求額も大きくなる。
- ペット可物件では特約が多く、契約書の文言確認が最優先。特約があっても、請求すべてが無条件に通るとは限らない。
- 入居時・退去時の日付入り写真と、立会いでの明細確認が交渉の土台になる。
退去の費用は、「何が起きたか」だけでなく「入居中にどう備えたか」「退去時にどう確認したか」で変わります。これから物件を探す方も、すでに住んでいる方も、ぜひ早めにご相談ください。
- 柏市「賃貸住宅退去時の原状回復トラブル」(令和7年9月2日更新)
https://www.city.kashiwa.lg.jp/shohiseikatsu-c/living_environment/shohisekatsu/apartment.html - 東京都消費生活総合センター「原状回復費用」資料(令和8年3月18日付)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/sodan/kinkyu/documents/genjoukaihukuhiyou.pdf - ファイナンシャルフィールド「賃貸を退去したら『壁紙張り替え3万円』を請求された!」(2026年4月30日配信)
https://financial-field.com/living/entry-500019 - リブナブル(東急リバブル)L-note「退去費用の相場」
https://www.livable.co.jp/l-note/?p=14718 - 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(各資料内で言及)
- 民法621条(賃借人の原状回復義務、各資料内で言及)
