
退去立会いで損する人・得する人——入居時からできる証拠づくり
「敷金なんて戻ってこないもの」——そう思い込んでいませんか?実は、退去時の原状回復トラブルは今も賃貸トラブルの中で最も相談件数が多い分野であり、国民生活センターには毎年約1万4千件もの相談が寄せられています。しかし、こうしたトラブルで損をするかどうかは、実は「退去する日」ではなく「入居した日」からの準備で大きく変わります。この記事では、退去立会いで損しないために知っておきたい知識と、今日からできる備えを解説します。
この記事でわかること
なぜ退去トラブルは今も減らないのか
国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表してから20年以上が経ちますが、原状回復・敷金にまつわる相談は今も高い水準で推移しています。賃貸借トラブルに関する相談内容の内訳を見ると、原状回復と敷金返還に関する相談が全体の58.9%と突出して多く、次いで修繕・改善(28.8%)、管理(18.8%)と続きます。
ガイドラインという明確な基準がありながらトラブルが減らない背景には、借主側がその内容を知らないまま契約・退去を迎えてしまうケースが多いことがあります。逆に言えば、正しい知識と入居時からの備えがあれば、多くのトラブルは未然に防ぐことができるのです。
「通常損耗・経年劣化は貸主負担」という原則
原状回復の考え方でまず押さえておきたいのが、「通常の使用による損耗・経年劣化は、原則として貸主(オーナー)の負担」というルールです。日焼けによる壁紙の変色や、家具を置いたことでできた床のへこみなどは、通常の生活で自然に生じるものとされ、借主が費用を負担する対象にはなりません。
| 状態 | 具体例 | 費用負担 |
|---|---|---|
| 通常損耗・経年劣化 | 家具の設置跡、日照による壁紙の変色 | 貸主負担が原則 |
| 借主の過失・善管注意義務違反 | 飲食物のシミ、掃除不足による汚れ、破損 | 借主負担 |
| 設備の自然故障 | エアコン・給湯器の経年不具合 | 貸主負担が原則 |
この原則を知らないまま「請求されたから払うしかない」と諦めてしまう借主が多いことも、トラブルが減らない一因です。まずはこの基本ルールを頭に入れておくだけでも、不当な請求に気づきやすくなります。
「損する人」に共通する3つのパターン
実際のトラブル事例を見ていくと、退去時に損をしてしまう人にはいくつかの共通点があります。
①入居時に部屋の状態を記録していない — もともとあった傷や汚れを証明できず、退去時に「借主が付けた傷」とされてしまう
②立会い当日、その場の雰囲気で同意書にサインしてしまう — 内訳や金額に納得していなくても、その場の空気に流されて署名してしまう
③高額請求を受けても「仕方ない」と諦めてしまう — ガイドラインの存在を知らず、交渉の余地があることに気づかない
逆に言えば、この3点さえ押さえておけば、多くのトラブルは事前に回避できます。次の章から、それぞれの対策を具体的に見ていきましょう。
入居時にやるべき証拠づくり
退去時のトラブルを防ぐ最も効果的な方法は、入居した日に部屋の状態を記録しておくことです。国土交通省のガイドラインにも入居時チェックリストの様式が用意されていますが、実際にはほとんどの管理会社がここまで丁寧に案内してくれないのが実情です。だからこそ、自分自身で記録を残しておく意識が重要になります。
入居時に撮っておきたい写真
- 部屋全体を各部屋・各方向から(引きの写真)
- 床・壁・天井の傷や汚れがある箇所(寄りの写真)
- 水回り(キッチン・浴室・トイレ)の設備の状態
- エアコンなど備え付け設備の動作確認
- 日付が分かるように撮影日時を記録しておく
「引き・寄り・位置」が揃った写真は、後から見ても状況が伝わりやすく、交渉の際の説得力が大きく変わります。撮った写真は、退去時までクラウドなどに保管しておき、いつでも取り出せるようにしておきましょう。
これから入居する物件の契約内容や特約について確認したい方は、お気軽にご相談ください。
入居中に気をつけること
入居時の記録だけでなく、住んでいる間の対応もトラブル予防には欠かせません。設備の不具合や、うっかり付けてしまった傷などは、気づいた時点で速やかに管理会社へ連絡し、記録を残しておくことが重要です。
- エアコンや給湯器の不具合・故障は貸主に修繕義務があるため、すぐに連絡する
- 無断で自分で修繕すると、かえって退去時のトラブルの原因になる
- 日頃からできるだけきれいに使うことを意識する(水回りの水垢・カビ対策など)
- 管理会社とのやり取りは、口頭だけでなくメール等の記録が残る形で行う
退去立会い当日にすべきこと
退去立会いは、修繕が必要な箇所の費用負担を決める重要な場です。指摘された箇所は必ずその場で写真を撮り、内訳・施工範囲・金額の根拠をきちんと聞くようにしましょう。
立会い当日のチェックポイント
- 指摘された箇所はすべて写真に残す
- 「通常損耗ではないか」を自分の言葉で確認する
- 入居時の写真があれば、その場で比較して見せる
- 納得できない場合は、その場で即サインせず「持ち帰って検討する」旨を伝える
- 精算書が届いたら、明細(単価・施工範囲)を必ず確認する
仕事や体調不良などで当日の立会いが難しい場合、電話だけで済ませず、メールで「立会いを省略すること」「鍵の返却方法」「精算書の送付方法」を明確に残しておくことも大切です。立会いを省略する場合こそ、退去前の写真・動画記録がより重要になります。
入居時の記録がなかった場合のリカバリー
「入居時に写真を撮り忘れていた」という方も少なくないでしょう。その場合でも、諦める必要はありません。管理会社に残っている入居時の資料や、過去のメールのやり取り、クラウド上に残っている当時の写真などを探すことで、状況を裏付けられる場合があります。
また、交渉の際は「損耗が借主の過失によるものか」「通常損耗の範囲を超えているか」という2点が争点になることがほとんどです。感情的にならず、写真とガイドラインの考え方を根拠に、冷静に事実を伝えることが交渉を有利に進めるポイントです。
ペッターズ不動産のサポート
ペッターズ不動産では、入居時から退去時まで、契約内容や特約について分かりやすくご説明することを心がけています。「この特約はどういう意味があるのか」「入居時に何を確認しておけばよいか」など、契約前の段階から丁寧にサポートいたします。
また、当社の母体は売買仲介を専門としてきた柴崎建設株式会社のため、賃貸管理の実務にも精通したスタッフが、入居中・退去時のご相談にも対応可能です。トラブルを未然に防ぐための知識を、契約時からしっかりお伝えします。
まとめ——差がつくのは「入居した日」からの準備
退去立会いで損をするか得をするかは、退去当日だけの問題ではありません。入居した日に部屋の状態を記録しておくこと、入居中に不具合をきちんと報告しておくこと、そして立会い当日に落ち着いて対応することの積み重ねが、大きな差を生みます。「通常損耗・経年劣化は貸主負担」という原則を知っているだけでも、不当な請求に気づく力になります。これから入居する方は今日から、すでに住んでいる方は今からでも、できる準備を始めてみてください。
- 国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル(各種相談の件数や傾向)」
- 国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」(2026年2月17日公表)
- 国土交通省住宅局参事官「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料
- 賃貸借トラブルに係る相談対応研究会「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」
- 日住検総研「【判例】原状回復にかかる判例」
- 賃貸リフォーム研究所「退去立会いとは|当日の流れ・所要時間・確認すべきポイントを徹底解説【2026年版】」
- いい生活のクラウドSaaS「賃貸物件の退去時に必要な立会いの流れとトラブル回避のポイントを徹底解説」
- みやへい不動産「賃貸物件の入居時チェックリスト!入居前写真撮影が有効」
