
ペット可物件の退去費用トラブル完全ガイド「聞いていた話と違う」を防ぐ相場・対策・交渉術
「ペット可だから、多少の傷は仕方ないと思っていたのに、退去時に高額な請求がきた」——ペット可物件にお住まいの方から、こうしたご相談を受けることは少なくありません。
ペットとの暮らしを楽しむためにお部屋を選んだはずが、最後にトラブルで嫌な気持ちになってしまうのは、とても残念なことです。
退去費用のトラブルは、当社に限らず全国的に増加傾向にあり、国土交通省もこの問題を長年にわたって重要課題として扱っています。
実際、国土交通省は賃貸住宅の退去時における原状回復トラブルを防ぐため、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を平成10年に策定して以来、複数回にわたり改訂を重ねてきました(出典:国土交通省)。
それだけ社会的に根深い問題だということです。
今日は、国土交通省のガイドラインや大手不動産ポータルの情報も踏まえながら、ペット可物件の退去費用でトラブルになりやすいポイントと、入居前・入居中・退去時それぞれの段階でできる対策について、できるだけ具体的に、そして読み応えのある形でお伝えします。
これからペット可物件を探す方はもちろん、すでにお住まいの方、退去を控えている方にもぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
この記事でお伝えすること
❓ ① なぜペット可物件は退去費用でもめやすいのか
ペット可物件の退去費用トラブルが多い最大の理由は、「ペット可=原状回復の基準があいまいになりがち」という構造にあります。
通常の賃貸物件であれば、経年劣化や通常の使用による傷みは貸主負担、入居者の故意・過失による損傷は入居者負担、というルールが国のガイドラインで示されています。
しかしペット可物件の場合、「ペットによる傷」がどちらに該当するのか、判断が分かれやすいのです。
「ペット可=何をしても大丈夫」ではない
誤解されがちですが、「ペット可物件」は「ペットを飼うこと自体を許可している」だけであり、「ペットによるあらゆる損傷を貸主が負担する」という意味ではありません。
大手不動産ポータルのLIFULL HOME'Sの解説記事でも、ペット可物件はペットが物件を破損・汚損してもよいという意味の物件ではなく、ペットによる傷や汚れ、臭いについても入居者に原状回復義務が課せられると説明されています(出典:LIFULL HOME'S)。
爪とぎによる柱の深い傷、粗常によるフローリングの染み込み、臭いの浸透などは、入居者負担となるケースが一般的です。
契約書の「ペット特約」に書かれていることが多い
ペット可物件の多くは、契約書に「ペット飼育に関する特約」が付いています。
国土交通省が公表している参考資料では、ペット飼育可の物件において、ペットによるひどい傷や汚れについては経過年数を考慮せず入居者負担とする特約や、消毒・消臭費用を定額で徴収する特約が設けられている場合があると説明されています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインに関する参考資料」令和5年3月)。
この特約の内容を入居時にきちんと確認していなかったために、退去時に「聞いていない」というトラブルになることが多いのです。
敷金が多めに設定されている理由
LIFULL HOME'Sの記事によると、ペット可・相談可の物件では、退去時の原状回復費用に充てるため、敷金を家賃の2ヶ月分程度預かるケースが多いとされています(出典:LIFULL HOME'S)。
これは裏を返せば、それだけ原状回復費用が高額になりやすいことを、貸主側もあらかじめ想定しているということでもあります。
「うちの契約書、特約はどうなっているんだろう」という方はお気軽にご相談ください
② 国土交通省「原状回復ガイドライン」の基本ルール
退去費用の話をするうえで欠かせないのが、国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。
このガイドラインは、賃貸住宅リフォームの促進方策の検討の一環として平成10年3月に取りまとめられ、その後も裁判事例やQ&Aの追加を重ねながら改訂が続けられています(出典:国土交通省)。
原状回復の定義
国土交通省はガイドラインの中で、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
そして、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は、賃料に含まれるものとされています(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。
つまり原状回復とは、入居した当時の状態に戻すことではなく、あくまで「借主の責任による部分」だけを元に戻すことを指します。
⚖️ 2020年の民法改正でルールが明確化
2020年4月の民法改正により、原状回復義務の範囲が法律で明確化されました。
改正民法第621条では、通常の使用及び収益によって生じた損耗や経年変化については、原状回復義務の対象から除外されることが定められています。
これにより、従来ガイドラインが示してきた考え方が、法律上の裏付けを持つ形になりました。
ただしガイドライン自体に法的な強制力はなく、最終的には個別の契約内容や物件の使用状況によって判断されるものとされています(出典:国土交通省)。
⚖️ ③ 「通常損耗」と「故意・過失」の境界線と具体例
退去費用トラブルの核心は、この「境界線」がどこにあるかです。
目安として、以下のような整理がよく使われます。
⭕ 貸主負担になりやすいもの
(通常損耗・経年劣化)
- 日照による畳やクロスの変色
- 家具の設置による床のわずかなへこみ
- テレビや冷蔵庫の背面にできる電気ヤケ
- 設備の経年による自然な劣化
❌ 入居者負担になりやすいもの
(故意・過失、ペット起因)
- 爪とぎ・噛み跡による柱やドアの深い傷
- 粗相によるフローリングの染みや床材の張り替えが必要な劣化
- 壁紙や畳への強い臭いの付着
⏳ 経過年数によって負担割合が変わる仕組み
住まいのポータルサイトの解説記事によれば、耐用年数6年とされる壁紙やカーペットの場合、入居時の価値を100%とすると、居住年数3年の時点で入居者の負担割合は50%まで下がる仕組みになっています(出典:住まいのポータルサイト解説記事)。
つまり、同じ傷であっても「何年住んでいたか」によって請求される金額は大きく変わります。
長く住んでいるほど、入居者の負担は軽くなる方向に働くということです。
ただしフローリングや畳のように、経過年数を考慮しない箇所もあるため、一律には判断できない点にも注意が必要です。
④ ペット可物件の退去費用の相場(箇所別)
実際にどれくらいの費用がかかるのか、複数の不動産メディアが公表している相場をまとめると、次のような目安になります。
壁紙(クロス)の張り替え
SUUMOの住まいのお役立ち記事では、壁クロスの張り替えは1面単位で1平方メートルあたり1,000円〜1,200円程度が目安とされています(出典:SUUMO住まいのお役立ち記事)。
ペットによって壁紙の内側の下地ボードまで破損している場合は、別途3万円〜6万円程度の修繕費用がかかることもあり、クロス張替えと合わせて10万円以上の請求になるケースも珍しくないと紹介されています(出典:不動産関連メディア)。
床(フローリング・クッションフロア)
床材については、SUUMOの記事によると、クッションフロアの場合は1平方メートルあたり3,000円程度、木製フローリングの場合は1平方メートルあたり15,000円程度が目安とされています(出典:SUUMO住まいのお役立ち記事)。
木製フローリングは張り替え費用が高額になりやすいため、爪とぎや粗相による傷みには特に注意が必要です。
なお、請求される場合でも、入居月数に応じて一定割合が減価償却相当として差し引かれる考え方が一般的です。
✨ これからペット可物件を探す方は、契約前の特約チェックからお手伝いします
️ ⑤ 入居前・入居中にできる対策
1. 契約前に「ペット特約」の内容を必ず確認する
契約書に押印する前に、ペットに関する特約が具体的にどう書かれているかを確認しましょう。
「敷金○ヶ月分を退去時クリーニング費用として償却」といった記載がある場合、その金額感が妥当かどうか、担当者に確認しておくと安心です。
特約は著しく不公平な内容や法律に反する内容であれば無効となる可能性もありますが、まずは記載内容を正確に把握することが第一歩です。
2. 入居時の写真を残しておく
入居時点でのお部屋の状態(床・壁・建具など)を写真に残しておくことを強くおすすめします。
国土交通省のガイドラインでも、入退去時における損耗等の有無など物件の状況をよく確認しておくことが、トラブルの未然防止に有効な対策として挙げられています(出典:国土交通省)。
退去時に「これは入居前からあった傷ではないか」という水掛け論を避けるための、いちばん確実な証拠になります。
撮影は日付が分かる形で残し、家具を運び込む前のタイミングで行うのが理想的です。
3. 日々のケアでペットによる損耗を減らす
爪切りや定期的なブラッシング、排泄物の適切な処理といった日々のケアを続けることで、床や壁の損耗をかなり抑えることができます。
長毛種の換毛期はこまめな掃除機がけを、粗相対策には消臭効果のあるペットシートの活用をおすすめします。
日常的なケアの積み重ねが、退去時の請求額を左右する大きな要因になります。
4. 気になる傷ができたら早めに管理会社へ相談する
入居中に大きな傷や粗相があった場合、退去時までそのままにせず、早めに管理会社に相談しておくと、対応方法や費用感を事前にすり合わせておくことができます。
退去直前に慌てて対応するより、トラブルになりにくくなります。
⑥ 高額請求が来てしまったときの対処法
すでに退去手続きが進んでいて、想定より高額な請求を受けてしまった場合も、慌てて全額支払う前に、まずは内訳の明細を確認しましょう。
「クリーニング費用」「原状回復費用」がどの部分にいくらかかっているのか、具体的な説明を求める権利があります。
見積もりの内訳をガイドラインと照合する
入居時の写真や契約書の特約内容と照らし合わせて、明らかに通常損耗の範囲まで請求されていると感じる場合は、管理会社・貸主との交渉の余地があります。
経過年数が考慮されているか、修繕範囲が実際の損傷箇所に見合っているかを、一項目ずつ確認していくことが大切です。
相談窓口の活用も選択肢のひとつ
交渉が難航する場合は、自治体の消費生活センターや、地域の宅地建物取引業協会が設けている相談窓口を利用する方法もあります。
当社でも、退去費用の内訳確認や、貸主側との交渉に関するご相談を承っています。
おひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
⑦ よくある質問(Q&A)
Q. ペット可物件なら、多少の傷や汚れは請求されませんか?
A. いいえ、請求される可能性があります。
「ペット可」はペットを飼うこと自体を許可しているだけであり、ペットによる傷や汚れ、臭いへの原状回復義務は基本的に入居者側にあります。
Q. 敷金だけでは足りない場合、追加で請求されますか?
A. はい、追加で請求されることがあります。
原状回復費用が敷金の範囲を超える場合は、差額を追加で請求されることがあります。だからこそ、事前に費用感を把握し、日々のケアで損耗を抑えることが重要です。
Q. 経年劣化とペットによる損傷、どちらか判断が難しい場合はどうすればいいですか?
A. 管理会社や貸主に説明を求めましょう。
入居時の写真と現在の状態を見比べたうえで確認を行います。判断が難しい場合は、国土交通省のガイドラインを根拠に交渉することも可能です。不安な場合は、専門家や当社のような不動産会社に相談するのもひとつの方法です。
⑧ 実際にありがちなトラブル事例
(一般的なケースを基に構成)
ここでは、不動産業界で報告されているケースを参考に、退去費用トラブルでよくあるパターンを3つご紹介します。
特定の個人・物件を指すものではなく、複数のケースを踏まえて一般化した内容です。
事例1:大型犬の爪とぎによるフローリング補修
大型犬を飼っていたご家庭で、フローリング全面に細かい傷が入り、部分補修では対応できず全面張り替えとなったケース。
木製フローリングは1平方メートルあたり15,000円程度が目安とされているため、部屋全体となると10万円を超える請求になることもあります(出典:SUUMO住まいのお役立ち記事)。
日頃から爪切りをこまめに行い、傷がつきやすい動線にはマットやカーペットを敷くといった対策で、被害を最小限に抑えられたと考えられるケースです。
事例2:長期間気づかなかった粗相による畳・床下の腐食
トイレのしつけが不十分なまま長期間放置されたことで、畳や床材の下まで尿が染み込み、表面の張り替えだけでなく床材そのものの交換必要になったケース。
臭いが取れず、専門業者による特殊清掃・消臭作業が必要になることもあり、費用が数十万円規模に膨らむこともあります。
早期に気づいて管理会社へ相談していれば、被害の拡大を防げた可能性が高いパターンです。
事例3:入居時の写真がなく、傷の発生時期で揉めたケース
退去時に指摘された傷について、「入居前から付いていたのでは」と入居者側が主張したものの、入居時の写真記録がなかったために立証できず、結果的に請求額をそのまま受け入れざるを得なかったケース。
国土交通省のガイドラインでも、入退去時の物件状況の確認が重要な対策として位置づけられており、写真の有無がトラブルの結末を大きく左右することが分かります(出典:国土交通省)。
⑨ 退去前チェックリスト
退去が決まったら、立会いの前に以下の点を確認しておくと、当日スムーズに、かつ納得感を持って手続きを進められます。
⑩ 大型犬・多頭飼いの方が特に注意したいポイント
当社は大型犬・多頭飼いのお客様のご相談を数多くお受けしてきましたが、こうしたご家庭では、退去費用が高額になりやすい傾向があるのも事実です。
体重のある犬種は、爪とぎや飛び跳ねによる床への負荷が大きく、複数の動物を飼育している場合は、それだけ傷や臭いが付く範囲も広がりやすいためです。
だからこそ、物件選びの段階で「もともと傷がつきにくい床材か」「ペット対応の建材が使われているか」を確認しておくことは、将来の退去費用を左右する重要なポイントになります。
当社では、こうした視点も踏まえて物件をご紹介するようにしています。
また、埼玉県越谷市をはじめとする当社の対応エリアでは、大型犬・多頭飼いに理解のある貸主・管理会社との関係を長年築いてきました。
「うちは大型犬2頭を飼っているけれど、ペット可物件は見つかるのだろうか」という段階からでも、お気軽にご相談いただければと思います。
⑪ ペットの種類・頭数別に見る損耗の傾向
ひとくちに「ペット可物件」といっても、飼育しているペットの種類や頭数によって、損耗の出方や退去費用の傾向は大きく異なります。
ここでは代表的なパターンをご紹介します。
■ 中型〜大型犬(1頭飼育)
体重があるぶん、床への衝撃や引っかき傷が出やすい傾向があります。特にフローリングは、爪による細かい傷が積み重なると、部分補修では対応できず全面張り替えとなるケースが目立ちます。定期的な爪切りと、動線へのマット敷きが特に効果的な対策です。
■ 猫(室内飼い)
壁紙や柱への爪とぎによる傷、脱走防止のために設置した突っ張り棒や網戸の跡が残るケースが多く見られます。爪とぎ専用グッズを複数箇所に設置し、そちらに誘導することで、壁や柱への被害をかなり抑えられます。
■ 多頭飼い(犬・猫複数頭)
頭数が増えるほど、傷や臭いのつく範囲が物理的に広がりやすくなります。特にトイレの数が頭数に対して不足していると、粗相のリスクが上がるため、頭数に見合ったトイレ環境を整えることが、退去費用を抑える観点でも重要です。
■ 小動物・鳥類
ケージ飼育が中心となるため、床や壁への直接的な損耗は比較的少ない一方、ケージ周辺の毛や羽、飼料の飛び散りによる汚れ、独特の臭いが問題になることがあります。ケージ下に保護シートを敷くなどの対策が有効です。
️ ⑫ 管理会社・貸主との交渉、こう進めましょう
高額な見積もりを受け取った際、感情的に反発するのではなく、事実と根拠に基づいて冷静に確認していくことが、良い結果につながりやすいポイントです。
以下のような順序で進めることをおすすめします。
「口頭での説明だけでなく、項目・数量・単価が分かる見積書をいただけますか」と依頼しましょう。書面で確認することで、後から言った言わないのトラブルを避けられます。
請求項目のひとつひとつについて、「この傷は入居時からあったものではないか」「経過年数は考慮されているか」を、手元の写真や契約書と照らし合わせて確認します。
「この項目は経過年数何年で算定されていますか」「通常損耗ではなく故意・過失と判断した根拠を教えてください」など、具体的に質問することで、根拠のあいまいな請求が定されるケースは少なくありません。
それでも納得できない場合は、自治体の消費生活センターや専門家への相談も検討しましょう。
⑬ 知っておきたい用語集
- ・原状回復
- 借主の故意・過失などによって生じた損耗を復旧すること。入居前の状態に完全に戻すことではない。
- ・通常損耗
- 日常生活の中で自然に発生する傷や汚れ、経年変化のこと。原則として貸主負担。
- ・経年劣化
- 時間の経過によって設備や内装の価値が自然に下がること。
- ・ペット特約
- ペット飼育を許可する代わりに、原状回復の範囲や費用負担について定めた契約書上の特別な条項。
- ・敷金償却
- 退去時のクリーニング費用等として、敷金の一部をあらかじめ差し引く契約上の取り決め。
まとめ|トラブルの多くは「事前の確認」で防げます
ペット可物件の退去費用トラブルは、契約前の特約確認と、入居時の写真記録、そして日々のケアという、少しの準備で防げるケースがほとんどです。
国土交通省のガイドラインや大手不動産ポータルの情報を味方につけることで、根拠を持って交渉することもできます。
当社ではペット可物件を専門に扱ってきた経験から、こうしたトラブルになりやすいポイントを踏まえたご案内を心がけています。
これから物件を探す方も、すでにお住まいで不安がある方も、ぜひお気軽にご相談ください。
退去費用のこと、契約前のご相談だけでも大丈夫です。
「これって請求されて当然なの?」と迷ったときこそ、まずはペッターズ不動産にご連絡ください。
ペット可物件専門だからこそ分かる、トラブルになりやすいポイントを踏まえてご案内します。
