「とりあえず兄弟で半分ずつ共有にしておこう」——相続の場面で、こうした判断をされる方は少なくありません。一見、公平で揉めにくい方法に思えますが、共有名義は次の世代、さらに次の世代へと相続が続くたびに所有者が増え続け、最終的に身動きが取れない不動産になってしまうケースが実際に多く起きています。
私たちは普段、賃貸の物件探しをご紹介する機会が多いのですが、本業は柴崎建設株式会社として20年以上不動産業に携わっており、こうした相続・売買に関するご相談も数多くお受けしています。この記事では、共有名義のリスクと遺産分割協議で実際に起きているトラブル、そして今すぐできる対策をまとめました。
① なぜ「共有名義」が選ばれやすいのか
相続の話し合いの場で、不動産を共有名義にする選択は決して珍しくありません。むしろ、もっとも選ばれやすい方法のひとつです。
不動産を共有名義で相続すると、各相続人が不動産の持分を公平に得られる点が最大のメリットとされています。「実家は長男がそのまま引き継ぐ」というように一人だけが取得すると、他の相続人から不公平感による不満が出てトラブルになることを防げるため、遺産分割協議がなかなか進まない場合に、いったん法定相続分で共有名義にしておくという判断がされることがあります。
出典:株式会社オカムラホーム「不動産を共有名義で相続するメリット・デメリット」(2025年4月20日・2026年1月28日更新)/ OAG税理士法人「不動産を共有名義で相続するとトラブルに!」ここに大きな見落としがあります:「とりあえず共有にしておけば揉めない」という判断は、今の世代の対立を避けただけであり、問題を解決したわけではありません。先送りにされた課題は、次の相続が発生したときに、より複雑な形で表面化することになります。
② 共有名義の本当のリスク——所有者が増え続ける仕組み
共有名義の最大の問題は「相続のたびに、共有者の数がねずみ算式に増えていく」ことです。具体的な数字で見てみましょう。
共有持分が世代を超えて分散していくイメージ
こうして相続が繰り返されるたびに共有者が増え、所有者が10人以上に及ぶケースもあります。
父が持分割合の1/2を持っていて、それを母と子ども2人で相続すると、それぞれ「1/4」「1/8」「1/8」と細かく分割されます。さらに子が亡くなれば孫へと権利が移り、気づけば「誰が共有者なのか分からない」「親族が10人以上関わっている」という状況にもなり得ます。このような状態になると、共有名義不動産を売却・活用するたびに全員の同意が必要となり、1人でも反対すれば話が止まってしまうため、トラブルに発展しやすくなります。
出典:株式会社クランピーリアルエステート「共有名義不動産の相続トラブルの対処法」(2026年5月10日)同社に寄せられた累計20,000件超の問い合わせのうち、約半数にあたる10,000件以上が「共有持分」に関するご相談です。さらにその理由を分析すると、「相続トラブル・親族間の確執」が全体の26%を占めて最も多くなっています。共有名義のトラブルが、決して特殊な事例ではなく非常に多くの家庭で起きていることがわかります。
出典:株式会社クランピーリアルエステート(データ集計日:2018年2月21日〜2025年12月31日)③ 実際に起きている共有名義トラブルの事例
固定資産税の負担をめぐって親族間で揉めたケース
相続により親族で土地と戸建を共有することになったが、遺産分割協議がまとまらず、管理や処分の方針が決まらないまま時間が経過。建物は空き家のまま放置され、活用もできない状態が続いた。特に大きな問題となったのが固定資産税の負担で、本来は共有者全員で分担すべき固定資産税を、依頼者が代表して支払い続けていたが、他の親族からの協力は得られなかった。使う予定も収益もない不動産に対し、費用だけを一方的に負担する状況に強い不公平感を抱くようになり、相談に至った。
出典:株式会社クランピーリアルエステート「共有名義不動産の相続トラブルの対処法」(2026年5月10日)
共有名義によって生じる典型的な5つのトラブル
同社のアンケート調査(2026年3月実施・500人対象)では、共有名義の不動産において以下のようなトラブルが報告されています。①相続登記をしないまま放置してしまい、売却も名義変更もできなくなったケース、②関係性が悪かった相続人が新たな共有者になったケース、③不動産売却に相続人が反対し、遺産分割協議がまとまらないケース、④話し合いがまとまらず、共有物分割請求訴訟に発展してしまったケース。いずれも「共有名義にしたこと」が起点になっています。
出典:株式会社クランピーリアルエステート アンケート調査(2026年3月12日実施・対象500人)
共通して言えること:共有名義の不動産は、売却・リフォーム・活用といった一定の行為をするには、民法上、他の共有者からの一定以上の同意が必要になります。共有者の誰か一人が反対するだけで、すべての計画が止まってしまうのが共有名義の本質的な弱さです。
④ 遺産分割協議のトラブル——遺言書「あり」の場合
遺言書があれば共有を避けられる——ただし「遺留分」に注意
遺言書は、相続財産の承継方法を被相続人が指定できる強力な手段です。たとえば「この不動産は妻に相続させる」と明記されていれば、原則として遺産分割協議をすることなく、共有状態を避けて単独所有にできます。
しかし注意点があります。遺言があっても、相続人の最低限の取り分である「遺留分」を侵害していると、他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受けてトラブルになることがあります。「全財産を長男に」という内容の遺言があっても、他の子どもには遺留分を請求する権利が法律上残っているのです。
出典:株式会社クランピーリアルエステート「共有不動産の相続トラブルは遺言書で回避!」(2026年5月10日)
2023年4月1日から、遺言がある場合には受遺者は遺言執行者や他の法定相続人の協力なしに、単独で名義変更(相続登記)の手続きを行うことが可能になりました。これまでは法定相続人全員の協力がないと手続きができませんでしたが、より簡易的になっています。ただしこの単独申請ができるのは、遺贈を受ける者が相続人に該当する場合に限られ、相続人以外の方への遺贈の場合は引き続き法定相続人全員の協力が必要です。
出典:法務省民事局「民法・不動産登記法の改正」(令和5年4月1日施行)⑤ 遺産分割協議のトラブル——遺言書「なし」の場合
遺言がなければ「全員の合意」が必須に
亡くなった方が有効な遺言を残していない場合、遺産分割協議によって不動産の取得者を決めます。この場合、相続人全員の合意が必要です。相続人が少なく関係も良好であればスムーズに決まる可能性が高いですが、相続人の数が多く面識のない方もいるような場合、連絡や話し合いに労力が必要になります。相続人の間で意見が対立した場合や、手続きに非協力的な方がいる場合、期限内に相続登記を申請できないことがあります。
出典:税理士法人チェスター「相続登記の義務化」/ 日本クレアス相続サポートセンター
遺産額が少なくても起きるトラブル:遺言というと莫大な財産を持つ人だけに必要だというイメージがありますが、遺産額が少なくても相続トラブルは生じます。裁判手続きが利用された相続トラブルのうち、遺産額が1,000万円以下である相続トラブルは全体の約30%を占めています。「うちには大した財産がないから大丈夫」という思い込みは禁物です。
出典:税理士法人チェスター「相続登記の義務化|完全網羅」
| 状況 | 共有を避ける方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 不動産を売却して現金化 | 換価分割 | 1円単位で公平に分配可能。実家など現物は残せない |
| 一人が不動産を取得し代償金を支払う | 代償分割 | 同居していた相続人が住み続けられる。経済的負担あり |
| 土地を物理的に分ける | 現物分割(分筆) | 各相続人が単独所有できるが土地の形状による制約あり |
| 相続人全員の合意で単独所有に | 遺産分割協議 | 合意形成に時間がかかる場合がある |
⑥ 2024年の相続登記義務化で何が変わったか
共有名義トラブルを考えるうえで欠かせないのが、2024年4月1日から始まった「相続登記の義務化」です。これまで放置していた方にも大きな影響があります。
相続(遺言も含みます)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料の対象となります。なお、令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も対象となり、2027年3月31日までの猶予期間が設けられています。
出典:東京法務局「相続登記が義務化されました」/ 日本司法書士会連合会「しほサーチ」共有名義との関係:義務化により「とりあえず放置する」という選択肢は実質的になくなりました。共有名義のまま登記だけ済ませても、将来の活用・売却の難しさが解消されるわけではありません。登記の期限を意識するこのタイミングこそ、共有を避ける分割方法を検討する好機といえます。
⑦ 共有状態を防ぐ・解消するための3つの方法
【相続発生前】生前に遺言書を作成しておく
公正証書遺言・自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用すれば紛失・改ざんのリスクも防げます)を準備することで、遺産分割協議自体が不要になり、共有名義の発生を未然に防げます。遺留分への配慮も含めて専門家に相談しながら作成するのが安心です。
【相続発生後】早期に売却・換価分割を検討する
「実家を残したい」という気持ちがある一方で、誰も住む予定がない・管理が難しい場合は、早めに売却して現金で分割する「換価分割」が、後のトラブルを避ける現実的な選択肢になります。代表者の単独名義で売却し代金を分配する場合は、贈与税の課税リスクを避けるため、遺産分割協議書に換価分割である旨と分配割合を明記することが必要です。
【すでに共有名義になっている場合】共有持分の整理・解消を進める
共有者間での話し合いで解消できない場合、裁判所を介して共有状態を強制的に解消する「共有物分割請求訴訟」という手続きもあります。ただし時間と費用がかかるため、まずは共有者同士の話し合いによる解消(誰かが他の共有者の持分を買い取る、または全体を売却して分配する)を目指すのが現実的です。
⑧ よくある質問(Q&A)
⑨ まとめ
この記事のポイント
- 共有名義は「今の対立を避けるだけ」で、問題を次の世代に持ち越してしまう可能性がある(オカムラホーム)
- 相続が繰り返されるたびに共有者が増え、所有者が10人以上になるケースもある(クランピーリアルエステート 2026年5月)
- 共有持分相談のうち26%が「相続トラブル・親族間の確執」が理由(同社データ)
- 遺言書があれば共有を回避できるが「遺留分」への配慮が必要。遺言がなければ相続人全員の合意が必須
- 遺産額1,000万円以下でも裁判沙汰になるケースが全体の約30%を占める(税理士法人チェスター)
- 2024年4月の相続登記義務化により、放置すれば10万円以下の過料の対象になる(東京法務局)
- 共有を防ぐ・解消する方法:生前の遺言書作成/早期の換価分割/共有持分の整理(必要なら共有物分割請求訴訟)
共有名義の問題は、相続が発生した直後には見えにくく、何年も経ってから「身動きが取れない」という形で表面化することが多くあります。今、目の前の話し合いを丸く収めるための共有名義が、お子さんやお孫さんの世代に大きな負担を残すことになりかねません。
柴崎建設株式会社では、賃貸のご紹介(ペッターズ不動産)だけでなく、不動産の売買・相続に関するご相談も幅広くお受けしています。「実家の不動産をどうすればいいかわからない」という段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。
賃貸のご相談はもちろん
不動産の売買・相続についても
お気軽にご相談ください
柴崎建設株式会社(ペッターズ不動産運営会社)。
不動産業歴20年超の経験を活かし、
共有名義の整理から売却までサポートします。
営業時間:10:00〜19:00 / 定休日:水曜日 / TEL:050-3554-4126

